質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四二号

外国人及び外国資本による不動産購入と我が国の安全保障に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十月十八日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   外国人及び外国資本による不動産購入と我が国の安全保障に関する質問主意書

 県土面積の約六十七%が森林である群馬県では、この森林資源を生かして、県産材の優先的な活用を図るためにセンターを創設したり、「山の日」を決めたりするなど、県財政の厳しい中、積極的な取り組みを進めているところである。
 また、私は、自然資源力の一つである「森の力」に着目し、度々森林組合の管轄森林を視察し、植樹祭等に積極的に参加してきた。さらに、平成二十年には群馬県沼田市で「森林資源活用フォーラム」を開催し、「利根沼田森林元気づくり提言」を採択したところであり、群馬県内の林業関係者や業界団体が懸命に努力していることはよく認識しているところである。
 これら林業関係者等との意見交換の中で度々指摘され、懸念されていることの一つとして、長年にわたる木材価格の低迷に伴う林業経営の悪化により、林家による山林の維持に困難をきたし、水源林などの山林の資産価値の低下に目を付けた外国資本に、林地購入を打診されたなどの話がある。そのような話は枚挙にいとまがない。この点は関しては過去に私が提出した質問主意書において再三指摘するとともに、政府にその対応を強く求めてきたところである。
 我が国の山林が密かに外国資本に買収されているという事態を無視・放置することは、我が国の領土を守る上で極めて重大な問題である。それと同時に、林家が山林の資産価値が極端に低くなっている中で、懸命にそれを維持してきたにもかかわらず、先祖伝来より所有してきた山林を二束三文で売却せざるを得ない現実は身を切られるよりつらいとの声も聞く。
 政府は、このような林業・林家の深刻な現実を謙虚に受け止め、今まで以上に森林行政の抜本的改革を積極的に推し進める必要がある。林家が数十年、数百年の長期間にわたり山林を維持・保全してきたことに、どのように報いるのか。森林公社の債務問題を解消するとともに、世界の生物多様性のホットスポットといわれている日本列島にあって、生物多様性の視点からも大きな価値を持つ森林資源の新しい価値に注目し、真正面から取り組んでいかなければならないと訴えるものである。
 そこで新しい仕組、例えば、PES(生態系サービスへの支払い)の導入などを検討し、山林の資産価値の低下や土地法制の不備により、外国資本に対して無防備で隙だらけな現状を直ちに変えなければならないと考えている。以上のことを改めて主張するとともに、その改善を強く求める。
 以上を踏まえて、質問主意書の本旨に入る。
 私は、本年二月十九日に「外国人土地法等の規制強化と国民共有の財産である国土資源(土・緑・水)等の保全及び我が国の安全保障に関する質問主意書」(第一七四回国会質問第二四号)を提出したが、質問の内容とそれに対する政府の答弁(内閣参質一七四第二四号)は、概ね以下のとおりであった。
 (1)ファンドを含む外国人(法人)が仲介者やダミー会社を多用して真の投資者を明らかにしない形で、我が国の森林、特に山奥の水源林や経営不振の酒造会社、水メーカーを購入しているとの噂が絶えないと聞くに及び、外国人(法人)等による不動産取得の実態の把握について質問したところ、「外国人等による不動産の取得の実態について調査等を行い、詳細を把握することは困難である」との答弁であった。
 (2)土地制度について、欧米においては土地の最終処分権や優先的領有権を政府が持っているのに対し、我が国においては土地の私的所有権が公権に対抗しうるほど強いという特徴があると指摘した上で、安全保障の観点からのルールの策定や法制化について質問した。併せて、我が国における外国人(法人)による土地取得は、売買についての規制は全くないに等しく、外国人(法人)による土地取得の実態も掌握されておらず、安全保障などの観点からの公的な介入は極めて困難な状況にあり、諸外国に比べて法的な整備も未整備のままであることから、「外国人土地法」の改正について質問したところ、「御指摘の「「重要なインフラ」を守るための包括的なルール」や「「重要なインフラ」に対する公共秩序、公衆衛生、安全保障の観点からの公的な介入等を可能とする制度」が具体的にどのような制度を指すのか必ずしも明らかではないが、外国人土地法(大正十四年法律第四十二号)については、外国人等による自衛隊施設の周辺の土地の買収が部隊等の適切な運営に支障を及ぼしているとは認識していないこと等から、現在のところ、同法の改正を行う必要があるとは考えていない」との答弁であった。
 (3)国土利用計画法での届出書は不動産登記の際の必要書類となっていないため、無届けでも登記が可能であるなど、国として売買の正確な実態が掴みきれないという法の欠陥が露呈している。そこで、「国土利用計画法」や「不動産登記法」等の抜本的改正による「事前承認」制度の導入や「登記要件」の強化など、土地の所有、占有、運営管理、転売等に関する関連法の見直し、整備を検討すべきであると質問したところ、「現在のところ、土地の売買等に関し、新たな事前承認制度の導入等の措置を講ずる特段の必要性があるとは考えていない」との答弁であった。
 以上のように、我が国の安全保障の観点からも、極めて危機感がなく、危機管理のあり方として、大きな問題があることを露呈している政府の答弁であったことは残念の極みである。
 そこで、以下質問する。

一 外国資本の不動産売買規制に関して前原外相は法整備に前向きであるとの報道について

 本年十月四日付け産経新聞は、「前原誠司外相は三日のフジテレビ「新報道二〇〇一」に出演し、中国などの外国資本による不動産購入が日本各地で相次いでいることについて「何らかの検討が必要だ」と述べ、売買を規制する法整備に前向きな考えを示した」と報道しているが、どのように法整備を進めようとするのか。また、既にある「外国人土地法」との関係をどのように考えているのか。この既存法を改正すべきであると考えるが、見解を示されたい。

二 法整備に向けた検討会などの設置について

 本年十月十五日の参議院予算委員会において菅総理は、外国人や外国資本による土地取得の制限について、外国人土地法をどう生かすことができるかを含め政府として是非を検討する考えを示した。また、柳田法相からも検討する旨の答弁があった。
 法整備に向けて、政府内に検討会など具体的な組織を早急に整備すべきであると考えるが、省庁横断的な検討会となるのか、いつ頃までに検討会を立ち上げるのか、関係省庁はどこなのか、いつ頃を目途に結論を出すのか、それぞれ見解を示されたい。

三 外国人による対馬や沖縄などの島嶼部や水源林などの不動産の取得について

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をきっかけに、対馬や沖縄などの島嶼部等の不動産が外国人に取得または売買されつつあり、安全保障上の懸念が広がっていると報道されている。
 そこで、安全保障上の観点から、我が国の防衛大綱の見直しを行うとともに、我が国における外国人や外国資本による、特に島嶼部の安全保障にかかわる不動産及び水源地や水源林などの不動産の取得の現状について把握すべきであり、また、それに対応できる法整備に早急に着手すべきであると考えるが、見解如何。

四 欧米先進国における外国人の土地購入に対する法整備について

 欧米先進国においては、外国人の土地購入等について、先に示したように安全保障等の問題から慎重に対応しているようであるが、欧米先進国のこの種の関係法体系について、政府は先ず精査し、その結果を公表すべきである。このことについての見解を示されたい。
 また、欧米先進国が具体的な対応、即ち、法体系の整備などをしていることに対して、政府はいかなる見解を持っているか示されたい。

五 外国人の土地購入に関するチェック体制について

 いずれにしても、外国人が土地などの不動産を購入した場合には、必然的に政府や関係自治体がその事実を把握できるような仕組みを整備すべきである。このことについての見解を示されたい。

六 「戦略的互恵関係」に関する見解について

 前原外相は日中関係について、「戦略的互恵関係」という言葉を使っているが、日中間において、お互いの国にとって互恵にあることは、具体的にいかなることを考えているのか。日本、中国にとって各々利益になること及びWin-Winになることの内容をどう考えているのか。見解を示されたい。

  右質問する。