質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二五号

小中学校などにおける猛暑対策の取組に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十月十三日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   小中学校などにおける猛暑対策の取組に関する質問主意書

 二〇一〇年の北半球の夏は、極めて異常高温な夏であった。また同時に、南半球の冬は大寒波となり多数の死亡者が発生した。
 ロシアでは、森林火災の延焼面積が、北海道の二倍の面積に相当し、モスクワでは濃いスモッグ(ヘイズ)の影響で市民の健康が危ぶまれた。ロシアに続き、アマゾン、アフリカ、アジアでも異常気象により森林火災が連続して発生するなど、地球規模で極めて深刻な事態にあることを指摘する。とりわけ深刻なことは、泥炭層、炭化成分の多い土壌での燃焼で、その結果、膨大な二酸化炭素が発生した。
 中国大陸においては、三峡ダムが世紀の大放流をしなければならないほどの豪雨の連続で大水害が発生し、同様の大洪水は、バングラデシュにおいても発生した。
 そして、日本列島においても記録的な猛暑であった。各地で猛暑日の記録更新が相次ぎ、日本の最高気温の記録に頻繁に名前がでてくる館林市のある群馬県では、県下の高崎市、太田市、安中市、沼田市などの一二市を始め、その他町村においても厳しい暑さの連続であった。
 館林市は、四〇日を超える猛暑日になったと言われ、日本列島の猛暑による熱中症の大量発生は、各種統計を確認すると、大災害とも言うべきものである。
 これら猛暑都市を安全・安心な都市にする上で、対処療法的な対応では市民の健康、生命を守ることは困難な状況にある。従って、(1)熱中症への対応はもとより、(2)ヒートアイランド現象への機敏、かつ的確な対応、また、より根本的には(3)気候変動への対応が重要である。これらの三者の一体的、計画的なパッケージ政策が必要である。
 以上の基本的視点を、改めて重視・認識すべきことと同時に、関係府省庁及び関係府省庁連絡検討会が一層強力な暑熱対策を推進すること強く求めるものである。
 以上を踏まえて、質問主意書の本旨に入る。
 近年、地球温暖化の影響と思われる異常気象が全地球的規模で頻発し、我が国においても、全国的な異常高温による猛暑被害が深刻である。
 このような猛暑が小中学校等における教育環境にも悪影響を及ぼしている中、未来の人材を盤石に育成することが日本の将来を大きく開き、不動なものにするという視点から、同環境の改善が急務であると言える。
 保育所、幼稚園、小中学校、養護学校などの教育環境を大幅に改善するためには、それらのクールスクール化(涼しい教室など)、エコスクール化等といった事業の展開を加速化する必要がある。
 そこで、以下質問する。

一 猛暑対策として教育施設等へのエアコンの設置の加速化と助成制度の拡充について

 全国的な猛暑による児童・生徒の健康や学習への影響が憂慮されるが、次代を担う子供たちの教育環境を改善するため、スクールニューディールの視点からも各教育施設等へのエアコンの設置を早急に進めるとともに、その設置及び運用に対する助成制度の拡充を図るべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 教育施設のエコスクール化の加速化と助成制度の充実について

 太陽光発電や太陽熱及び地中熱ヒートポンプなどの省エネ機器を保育所、幼稚園、小中学校、養護学校等に積極的に導入し、エコスクール化を加速化するとともに、それらの省エネ機器を各教育施設等の冷暖房(エアコン)に使用するための助成制度の充実を図るべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 校庭地下への雨水貯留浸透利用施設の設置によるクールスクール化の推進について

 猛暑対策やゲリラ豪雨対策として、校庭の地下等に雨水利用システムや雨水貯留浸透利用施設の整備を進め、屋上緑化、芝生、緑のカーテンや打ち水に再生水を使用することにより、多くのクールスポットを持つ自然共生型の学校であるクールスクール(涼しい教室)等を推進すべきである。そこで、各教育施設等を前記のように改善するため、雨水利用システムや雨水貯留浸透利用施設の設置及び運用に対する助成制度の導入を図るべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
 また、以上の一~三に関しては、バラバラではなく一体的に行うことが経済効率性を上げることになると考えられる。特に暑熱対策については、猛暑地域を優先的に且つモデル教育施設として考えるべきである。併せて見解を示されたい。

四 学校環境衛生基準の見直しと新基準の策定について

 猛暑対策やゲリラ豪雨などの異常気象に対応したクールスクール化、エコスクール化を加速的に進めるため、夏季の教室内温度を二十八℃以下に止めるなどの基準は、気密性の高まっている現代建築において適正かどうか議論の余地がある。また、暑熱指数(WBGT)を考慮した基準を考えて、学校環境衛生基準の見直しと新基準の策定が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

五 「クールスクール化・エコスクール化モデル事業」の創設によるエネルギー収支等の検証について

 埼玉県熊谷市、群馬県館林市、岐阜県多治見市等の猛暑都市において、社会実験として、小中学校などの全教室へのエアコンの設置、校庭地下への雨水貯留浸透利用施設の設置、地中熱などのヒートポンプや太陽光発電等の再生可能エネルギーを利用した機器の設置による「クールスクール化・エコスクール化モデル事業」を実施し、エネルギー収支等の検証を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

六 スクールニューディールの一層の推進について

 小中学校等における耐震化、エアコンの設置によるクールスクール化、太陽光利用によるエコスクール化、雨水利用システムの導入、雨水貯留浸透利用施設の導入、屋上緑化、芝生化、木造化、緑のカーテンなどクールスポットの配置等のエコ改修等が必要である。
 政府は、以上のような学校改修等による地域経済の活性化の観点も踏まえ、いわゆるスクールニューディールに一層予算措置を行うべきである。政府の見解を問う。

  右質問する。