第175回国会(臨時会)
答弁書第二二号 内閣参質一七五第二二号 平成二十二年八月二十日 内閣総理大臣 菅 直人
参議院議長 西岡 武夫 殿 参議院議員紙智子君提出北見道路事業とオジロワシ保護に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員紙智子君提出北見道路事業とオジロワシ保護に関する質問に対する答弁書 一の1について 一般国道三十九号北見道路(以下「北見道路」という。)の事業主体である国土交通省北海道開発局(以下「北海道開発局」という。)においては、モニタリング調査により、平成十九年三月十五日以降、事業地の周辺におけるオジロワシの抱卵を確認していたが、同年四月三十日及び五月一日の調査においては抱卵を確認できなかったことから、同月八日、北海道野生動物研究所所長の門崎允昭氏(以下「本件専門家」という。)に対して見解を求めたところ、本件専門家より「孵化が失敗した」との見解を得たため、繁殖が失敗したとの結論を得たものである。 一の2について 北海道開発局としては、平成十九年五月八日に本件専門家より「四月二十三日の調査時まで繁殖が順調に推移しており、事業による影響で孵化しなかったとは考えられない」との見解を得ていたことから、同年十一月二十日に開催された平成十九年度オジロワシ・オオワシ保護増殖分科会に提出した北見道路に係る実施報告書においては、同年度のオジロワシの繁殖失敗に関する記載は行わなかったものである。 一の3及び5について 北海道開発局においては、北見道路の整備に当たって実施する工事について、工事の実施前に、本件専門家より「オジロワシの繁殖に影響が無い」との見解を得ていたことから、繁殖期における工事回避の措置はとっていない。 また、平成十九年の繁殖失敗については「四月二十三日の調査時まで繁殖が順調に推移しており、事業による影響で孵化しなかったとは考えられない」との見解を本件専門家より得ており、北海道開発局としては、「オジロワシへの影響の認識や工事実施の判断は適切ではなかった」とは考えていない。 なお、北見道路は、北見市市街地における一般国道三十九号の交通混雑の緩和及び交通事故の低減を目的とした事業であり、着実に整備を進める必要があると考えている。 一の4について 御指摘の記載については、本件専門家の知見により得た見解に基づくものである。 一の6について 御指摘の北見医師会による「北見道路に賛成する意見書」の「取り下げ」については、承知していない。 二の1から3までについて 環境省に設置している野生生物保護対策検討会オジロワシ・オオワシ保護増殖分科会は、個別の事業による環境への影響の評価についてではなく、オジロワシ及びオオワシの全国的な生息状況や生息地の現状の的確な評価、その生息地の保護や保護増殖の在り方等について、生物学的な観点から検討することをその設置目的としており、同分科会において、御指摘の「事業者の対策や事業者が委嘱した専門家の知見が妥当であるか」についての評価及び開発行為に伴う営巣、繁殖の失敗等の情報の収集等を行うことは考えておらず、また、「北海道庁にも工事実施や保護対策の報告をもとめる」ことも考えていない。 二の4について 環境省においては、環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)に基づき、国が行う事業を含む事業について、当該事業の実施に関する事務を所掌する主任の大臣等に対し、事業者が作成した環境影響評価書について環境の保全の見地から意見を述べるなど適切に対応しているところであり、「事業者に対する回避措置や工事中止勧告などを含めた、事業者への監督権限を強めるべき」とは考えていない。 |