質問主意書

第175回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一五号

内閣参質一七五第一五号
  平成二十二年八月二十日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員山谷えり子君提出内閣総理大臣による靖国神社参拝といわゆる「A級戦犯」に対する菅総理大臣の認識に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山谷えり子君提出内閣総理大臣による靖国神社参拝といわゆる「A級戦犯」に対する菅総理大臣の認識に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 御指摘の法務総裁による通達は、「連合国の軍事裁判により刑に処せられた者の国内法上の取扱いについて」(昭和二十七年五月一日付け法務府法意総発第五二号)を指すものと考えられるが、同通達は、日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号。以下「平和条約」という。)発効前の、我が国における人の資格(任命若しくは就職又は罷免若しくは失職等にかかる条件又は許可、認可、登録若しくはその取消又は業務の停止等にかかる条件を含む。)に関する法令の規定の適用について、軍事裁判により刑に処せられた者は、日本の裁判所においてその刑に相当する刑に処せられた者と同様に取り扱うべきものとしていた従前の解釈を改めたものである。また、御指摘の戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議(昭和二十八年八月三日衆議院本会議)は、政府に対して戦争犯罪による受刑者の全面赦免の実施を促進するための措置を要望したものであり、御指摘の戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)及び恩給法(大正十二年法律第四十八号)の改正は、いわゆる戦犯として拘禁中に死亡した者の遺族に遺族年金等を支給するための措置等を講ずることとしたものであり、さらに、いわゆるA級戦争犯罪人として極東国際軍事裁判所において有罪判決を受けた者のうち、昭和三十三年四月七日付けで、同日までにそれぞれ服役した期間を刑期とする刑に減刑された者が十名いるが、赦免された者はいない。このように、御指摘の通達、決議及び法改正並びに減刑の措置は、いずれも、御指摘のような趣旨でいわゆる戦犯を赦免したものではない。
 したがって、お尋ねの菅内閣総理大臣の答弁が「法の正義と秩序に反する重大な問題」であり、「立法府とサンフランシスコ平和条約の約諾に基づく関係諸国政府の同意を無視する」ものであるとの御指摘は当たらない。