質問主意書

第175回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第八号

内閣参質一七五第八号
  平成二十二年八月十日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員浜田昌良君提出菅内閣による「天下り規制骨抜き」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田昌良君提出菅内閣による「天下り規制骨抜き」に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「職員の民間への人事交流」の趣旨が必ずしも明らかではないが、指定職俸給表の適用を受ける職員で、平成二十二年一月一日から八月二日までの間において、国と民間企業との間の人事交流に関する法律(平成十一年法律第二百二十四号。以下「官民人事交流法」という。)に基づいて民間企業に交流派遣されたものはいない。平成二十年及び平成二十一年においては、平成二十一年に内閣府から三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社に一名が交流派遣されている。

二について

 平成二十二年一月一日から八月二日までの間並びに平成二十年及び平成二十一年の同期において、国家公務員退職手当法施行令(昭和二十八年政令第二百十五号)第九条の四に掲げる法人(以下「役員出向法人」という。)に役員として出向した者(以下「役員出向者」という。)並びに国立大学法人及び大学共同利用機関法人に職員(教員に限る。)として出向した者(以下「教員出向者」という。)について、その人数を府省等別に示すと、次のとおりである。
 内閣府本府 役員出向者 平成二十一年 一人、教員出向者 平成二十年 一人、平成二十一年 二人、平成二十二年 三人
 国家公安委員会 役員出向者 平成二十年 一人、平成二十一年 二人、教員出向者 平成二十年 一人
 金融庁 教員出向者 平成二十二年 一人
 総務省 役員出向者 平成二十年 二人、平成二十一年 三人、平成二十二年 十五人、教員出向者 平成二十年 一人、平成二十一年 六人、平成二十二年 三人
 法務省 役員出向者 平成二十年 一人
 外務省 役員出向者 平成二十年 一人、平成二十一年 三人、平成二十二年 二人、教員出向者 平成二十年 二人、平成二十一年 一人
 財務省 役員出向者 平成二十年 一人、平成二十一年 六人、平成二十二年 二人、教員出向者 平成二十年 一人
 文部科学省 役員出向者 平成二十年 三十五人、平成二十一年 三十六人、平成二十二年 三十四人、教員出向者 平成二十年 五人、平成二十一年 十二人、平成二十二年 五人
 厚生労働省 役員出向者 平成二十年 六人、平成二十一年 四人、平成二十二年 六人、教員出向者 平成二十年 二人、平成二十一年 二人、平成二十二年 一人
 農林水産省 役員出向者 平成二十年 八人、平成二十一年 十二人、平成二十二年 四人、教員出向者 平成二十年 一人
 経済産業省 役員出向者 平成二十年 五人、平成二十一年 六人、平成二十二年 六人、教員出向者 平成二十年 一人、平成二十一年 一人、平成二十二年 二人
 国土交通省 役員出向者 平成二十年 六人、平成二十一年 九人、教員出向者 平成二十年 三人、平成二十一年 五人、平成二十二年 三人
 環境省 役員出向者 平成二十年 一人、平成二十二年 二人

三について

 国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)の規定に基づき計算される、役員出向法人に役員として出向した経歴を有する者の在職期間は、当該者が出向をせず、引き続き国家公務員であったと仮定した場合の在職期間と変わらず、当該出向の有無による退職手当額の増大はない。

四について

 現内閣においては、天下りあっせんの根絶を図ることとしており、「退職管理基本方針」(平成二十二年六月二十二日閣議決定)において、国家公務員の再就職に関し、天下りのあっせんの根絶を図るため、任命権者は、公務の能率的な運営を確保しつつ、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号。以下「国公法」という。)に規定された再就職等規制を厳格に遵守するとともに情報公開を進める等により、公務に対する国民の信頼確保を図ることとし、このための一連の措置を定めているところである。
 また、「退職管理基本方針」に基づく官民人事交流や独立行政法人等への役員出向の拡大については、「官を開く」との基本認識の下、中高年期の職員が公務部門で培ってきた専門的な知識・経験を民間等の他分野で活用するとともに、他分野での勤務を経験することにより公務員のコスト意識・現場感覚を高めることを目的として、大臣の任命権の下で実施するものであり、いずれも、職員の国への復帰を前提としている。
 さらに、御指摘の「人事管理運営方針」における「民間との間の人事交流については、(中略)企業・府省間の交流希望情報の交換等を行う」との記述は、国と民間企業との間の人事交流のすそ野を広げるため、総務省及び人事院のホームページへの掲載等により、国と民間企業双方の交流希望情報をより広く周知すること等を意図しているものである。官民人事交流の実施に当たっては、官民人事交流法において、従来より、①所管関係等にある民間企業については、派遣先企業での業務内容等に制限を設ける、②人事院が交流計画の認定や交流の実施状況の国会等への報告を行う、等官民癒着との疑念を招かないよう必要な措置を講じているところである。
 以上のことから、「天下り規制骨抜き」との御指摘は当たらない。

五について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「退職間際の幹部公務員の「現役出向」」のケースを含め、今回、「官を開く」との基本認識の下に拡大を図った民間との間の人事交流は、そもそも職員の国への復帰を前提としており、また、府省等が職員を営利企業等に再就職させる目的で情報提供等の行為を行うことは国公法第百六条の二第一項の規定により既に禁止されているとともに、職員が再就職の約束をした場合における国公法第百六条の二十三第一項の届出を契機に再就職の経緯を確認することも可能である。したがって、御指摘の「事前規制」を措置しなくとも、民間との間の人事交流の適切な運用を図ることはできるものと考えている。