質問主意書

第175回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二三号

現役出向と天下りに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年八月六日

桜内 文城   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   現役出向と天下りに関する質問主意書

 本年六月に閣議決定された国家公務員の退職管理基本方針においては、省庁の局長、部長級の幹部職員についても現役での民間企業への出向を拡大する方針が掲げられている。
 そこで、以下質問する。

一 国と民間企業との間の人事交流に関する法律(以下「官民人材交流法」という。)においては、省庁の職員を民間企業へ出向させる場合、省庁の長は、あらかじめ、出向させる職員の「同意を得なければならない」とされている。これは、職員は民間企業への出向を法令上、拒むことができると解釈できるが、政府としてもその解釈で良いか。

二 職員が民間企業への出向を拒んだ場合、代わりに省庁内に当該職員のためのポストを用意する必要がある。このポストを省庁内に用意しなかった場合、省庁の長は官民人材交流法違反に問われることになると思料されるが、これについての政府の見解如何。

三 国家公務員制度改革推進本部事務局の審議官を務めた古賀茂明氏は、所属する経済産業省から大手民間企業への出向を打診され、断ったところ、望月晴文経済産業事務次官から「君は辞めるしかないな」と告げられ、省内に残ってもポストが用意されていない旨、説明されたと報じられている。官民人材交流法の規定に照らせば、望月次官の発言は同法違反の疑いがあると思料されるが、これについての政府の見解如何。

四 望月次官に三のような官民人材交流法違反の疑いのある趣旨を含む発言があったかどうかについて、政府または経済産業省として調査を行ったのか、行う予定があるのか、明らかにされたい。

五 公務員の「天下り」の定義については、みんなの党の山内康一、柿澤未途両衆議院議員の質問主意書に対する内閣の答弁書において、「府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させること。府省庁によるあっせんを受けずに適材適所の再就職をすることは天下りに該当しない」としている。これを見る限り、政府は「天下り」について「省庁によるあっせんの有無」を判断基準としているようである。しかるに退職管理基本方針における省庁幹部職員の現役出向は、「省庁によるあっせん」なくして成り立ち得ないものである。これは政府の「天下り」の定義に事実上、該当するものではないかと考えるが、政府の見解如何。

六 現役出向については「退職後の再就職あっせんではなく、公務員の身分のまま企業への人材派遣を行うものである」から「天下り」にあたらない、という見解を、直嶋正行経済産業大臣が七月二十日の記者会見において明らかにしている。しかし、出向の対象となる幹部職員の年齢から考えても、幹部職員の現役出向の多くのケースが、事実上、所属省庁の主要ポストに戻ることのない「片道コース」になるのではないかと考えられる。形式的な定義にあてはまらないことをもって、現役出向を「天下り」にあたらないとする見解には無理があるのではないか。政府の見解如何。

七 六の直嶋大臣の記者会見においても、原口一博総務大臣の六月二十二日の記者会見においても、退職管理基本方針に基づく省庁の幹部職員の現役出向は「退職金の二重取りがない」ことをもって「天下り」に該当しないという趣旨の発言が見られるが、このような「天下り」の定義は、今までの政府の見解としては示されてこなかったものである。政府は、このような「天下り」の定義の変更を行ったのか。

八 省庁の幹部職員を民間企業に現役出向させる場合、出向期間、勤務条件、待遇等は、所属省庁と民間企業との間でどのようなプロセスを経て決まるのか、具体的かつ詳細に示されたい。その際に出向期間、勤務条件、待遇等の決定にあたり基準や指針のようなものは設けられているのか、明らかにされたい。

  右質問する。