質問主意書

第174回国会(常会)

答弁書


答弁書第九一号

内閣参質一七四第九一号
  平成二十二年六月十八日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員糸数慶子君提出原爆症認定却下処分の取消を求める訴訟に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員糸数慶子君提出原爆症認定却下処分の取消を求める訴訟に関する再質問に対する答弁書

一の1について

 平成十二年七月十八日最高裁判所第三小法廷判決(以下「最高裁判決」という。)においては、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号)第十一条に規定する認定(以下「原爆症認定」という。)の要件である放射線起因性については高度の蓋然性が必要であるという国の主張が認められたものと認識しており、御指摘の事案において、放射線起因性に係る高度の蓋然性の有無についての事実認定に係る国の主張が認められなかったことをもって、国の主張する高度の蓋然性の考え方が最高裁判決を曲解し、蔑ろにしているとは言えないものと考える。

一の2について

 最高裁判決においては、原爆症認定の要件である放射線起因性について「高度の蓋然性」の証明の必要性については示したものの、御指摘のような判断の前提となる点については示していないものと考える。

一の3について

 御指摘の大阪高等裁判所における訴訟においては、国は御指摘のような主張は行っておらず、「審査の方針においては、「原爆放射線起因性の判断に当たっては、申請疾病における原因確率及びしきい値(生体反応を引き起こす限界線量)を目安として、当該申請疾病の原爆放射線起因性に係る高度の蓋然性の有無を判断する」こととしている」と主張しており、「国が「高度の蓋然性」について民事訴訟法上の解釈と最高裁の判断をまったく曲解していることを意味している」との御指摘は当たらないものと考える。

二について

 御指摘の「原爆症認定に関する審査の方針」においては、原因確率及びしきい値は、申請に係る疾病等の原爆放射線起因性に係る「高度の蓋然性」の有無の判断の一つの目安として定められたものであり、当該高度の蓋然性の判断に当たっては、その他の要素も考慮することとされたところであるが、最高裁判決においては、DS八六及びしきい値を判断の目安として使用することを否定しているわけではなく、御指摘は当たらないものと考える。

三について

 厚生労働省としては、先の答弁書(平成二十二年五月二十一日内閣参質一七四第六八号)一の7の(2)についてでお答えしたとおり、今後とも高度な専門的知見を有する専門家を最大限活用することにより、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の趣旨に沿った適切な審査を行ってまいりたい。