質問主意書

第174回国会(常会)

答弁書


答弁書第五八号

内閣参質一七四第五八号
  平成二十二年四月二十日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員糸数慶子君提出いわゆる「密約」を記載した文書の廃棄に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員糸数慶子君提出いわゆる「密約」を記載した文書の廃棄に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の平成二十二年四月九日の東京地方裁判所の判決については、関係機関において対応を検討中であることから、お尋ねの政府の見解を述べることは差し控えたい。

二及び三について

 岡田克也外務大臣は、いわゆる「密約」問題に関する有識者委員会報告書(以下「報告書」という。)並びに平成二十二年三月十九日及び四月二日の衆議院外務委員会における参考人(以下「参考人」という。)に対する質疑等で指摘された外交文書の欠落の問題について、その事実関係を調査・確認するため、外交文書の欠落問題に関する調査委員会(以下「調査委員会」という。)を設置した。調査委員会の構成員は、岡田克也外務大臣及び武正公一外務副大臣のほか、調査の専門性と客観性を確保するため、外部委員として、宇賀克也東京大学教授及び波多野澄雄筑波大学教授が加わっている。外務省としては、今後、調査委員会において、報告書及び参考人に対する質疑等を精査した上で、関係者からの聞き取り等を実施し、速やかに調査結果を公表したいと考えている。

四について

 お尋ねの「各省庁の文書類の保管、廃棄等に関する手続」及び「保管及び廃棄の方法」については、各行政機関において、行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令(平成十二年政令第四十一号)第十六条第一項各号に掲げる要件を満たすよう設けられた行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)第二十二条第二項に規定する行政文書の管理に関する定めに基づき定められている。
 なお、平成二十一年七月一日に公布された公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号)第八条第二項においては、行政機関の長は、同条第一項の規定により、保存期間が満了した行政文書ファイル等を廃棄しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければならないこととされているところであり、当該法律は公布の日から二年以内に施行することとしている。

五及び六について

 沖縄返還時の原状回復補償費の肩代わりに関して作成されたとされる「議論の要約」(以下「本件文書」という。)については、平成十七年十二月から平成十八年二月にかけて調査した結果、本件文書が発見されなかったことを踏まえて、開示請求に対して不存在を理由として不開示決定を行った。また、平成二十一年九月十六日の岡田克也外務大臣の大臣命令に基づき設置された調査チーム及びいわゆる「密約」問題に関する有識者委員会の徹底的な調査の結果、外務省が保管する文書からは本件文書は発見されず、また、本件文書が米国政府に保管されるに至った経緯を示す文書も確認されなかったものであり、本件文書が外務省に存在しない理由について確たることを申し上げることは困難である。

七及び八について

 平成二十二年三月十二日に公表した財務大臣談話及び財務省の調査結果で述べたとおり、財務省職員が米国国立公文書館で取得した「柏木・ジューリック文書」には、沖縄返還に伴う日本側の財政・経済的な負担について、民生用・共同使用資産の買取り費用一億七千五百万ドル、基地の移転費用等二億ドル(物品及び役務により提供)、社会保障費用三千万ドル、沖縄における円ドル通貨交換により取得したドルを少なくとも二十五年間、ニューヨーク連邦準備銀行へ無利子で預金すること(以下「無利子預金」という。)等が記載されている。
 「柏木・ジューリック文書」は、その冒頭部分にあるように、基本的にはその後の細部にわたる交渉を行う際に日米双方が従うべき指針について、昭和四十四年秋までに共有された理解を取りまとめたものと考えられる。また、財務大臣談話で述べたとおり、同文書は、琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(昭和四十七年条約第二号。以下「沖縄返還協定」という。)に定める三億二千万ドルにとどまらない負担や別途の使いみちに関する最終的な秘められた約束に至る日米間の交渉の出発点になったものであり、そこから始まった交渉は、おおむね沖縄返還協定へと取りまとめられたが、それとは別に、秘められた約束になっていった部分もあると考えられる。このうち、無利子預金については、おおむね同文書に記載された内容に沿った外貨準備の運用がなされていた事実を確認したこと、こうした外貨準備の運用がこれまで対外的に明らかにされてこなかったこと等を公表した。

九について

 財務省において、平成二十年九月以降、計三回にわたり、昭和四十四年当時から省内に保管されているはずとされる「柏木・ジューリック文書」の探索を実施したが、その保有は確認できなかった。また、同文書に係る廃棄の記録も確認できなかったため、同文書が財務省に存在しない理由について確たることを申し上げることは困難である。