質問主意書

第174回国会(常会)

答弁書


答弁書第二九号

内閣参質一七四第二九号
  平成二十二年三月二日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員山下栄一君提出天下り問題に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山下栄一君提出天下り問題に関する再質問に対する答弁書

一及び二について

 お尋ねの「「公務の民主的で能率的な運営」の実現を妨げる有害な公務員の再就職」の意味するところが必ずしも明らかでないが、「天下り」については、例えば、特定の民間企業、団体等との癒着や行政の無駄などの原因となっているのではないかといった点に関し、国民からの厳しい批判があるものと認識している。現内閣においては、こうした公務員の天下りに対する国民の厳しい批判にこたえるとともに、行政の無駄をなくすため、天下りのあっせんの根絶を図ることとしているところである。
 なお、御指摘の国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第一条第一項においては、「この法律は、(中略)国民に対し、公務の民主的且つ能率的な運営を保障することを目的とする。」と規定されており、同法における公務員の再就職等に関する規制も、このような目的を踏まえて規定されているものと認識している。

三について

 府省庁によるあっせんの有無にかかわらず、特定の民間企業、団体等との癒着や行政の無駄などの原因となるような職員の再就職については、国民の厳しい批判があるものと承知している。

四から六までについて

 お尋ねの法案には、職員による再就職のあっせんの禁止以外の規制も含まれているものと認識している。

七、十五及び二十について

 公務員の再就職等に関する規制については、公務の公正性に対する国民の信頼の確保と公務員の有する職業選択の自由等とのバランスを考慮し、合理的な範囲とする必要があると考えている。一及び二についてで述べたような国民からの厳しい批判にこたえるためには、現行の国家公務員法において導入されている再就職あっせんの禁止等の規制の実効性を高めることが肝要であると考えている。
 なお、国家公務員出身者が役員又は職員等に在籍する公益法人については、「政府関連公益法人の徹底的な見直しについて」(平成二十一年十二月二十五日閣議決定)に基づき、徹底的な見直しを行っていくこととしており、また、独立行政法人については、「独立行政法人等の役員人事に関する当面の対応方針について」(平成二十一年九月二十九日閣議決定)に基づき、公務員OBが役員に就任しているポストについて後任者を任命しようとする場合及び新たに公務員OBを当該役員に任命しようとする場合には、公募により後任者の選考を行うこととしたほか、「独立行政法人の抜本的な見直しについて」(平成二十一年十二月二十五日閣議決定)に基づき、国民的視点から抜本的な見直しを行っていくこととしている。

八について

 お尋ねについては、先の答弁書(平成二十二年二月二日内閣参質一七四第七号)一から三までについてで述べたとおりであり、「天下り」という言葉は、御指摘のような発想に基づき用いているものではない。

九から十一までについて

 御指摘の理事会はいずれも非公開で開催されたものであり、同理事会における発言の内容について内閣としてお答えすることは差し控えたいが、お尋ねの「日本郵政株式会社の社長人事」については、株主である政府が、齋藤次郎氏を同社取締役として適任であると考え、株主総会の決議により選任した上で、同社取締役会が同氏を代表執行役社長に選定したものであり、府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させることに該当しない。
 また、御指摘の府省庁によるあっせんについては、国家公務員法第百六条の二の規定の適用を受ける職員等によるあっせんをいい、各府省の大臣、副大臣又は大臣政務官(以下「政務三役」という。)によるあっせんは含まれないが、平成二十一年九月二十九日の閣議における鳩山内閣総理大臣の発言により、組織の改廃等により離職せざるを得ない場合の官民人材交流センターによるあっせんを除き、天下りのあっせんを全面禁止することを現内閣の方針としたことから、政務三役によるあっせんも、当然認められない。

十二及び十三について

 内閣、各大臣等が、適材適所という考え方から国家公務員出身者を法令に基づき登用することは、「天下り」に該当しないものと考えている。また、このような登用は、あっせんによる再就職とは異なるものであって、問題はないものと考えている。

十四について

 先の答弁書五についてでお答えしたとおりである。

十六について

 一般職の国家公務員、国会職員及び裁判所職員に対する再就職支援の在り方については、再就職に関する規制を含めた人事制度全体の中での整合性も考慮し、それぞれ国家公務員法、国会職員法(昭和二十二年法律第八十五号)及び裁判所職員臨時措置法(昭和二十六年法律第二百九十九号)により定められるべきものであると考えており、「行政機関の職員に対してだけ再就職援助が行われるのは、法の下の平等に反する」との御指摘は当たらないものと考えている。
 なお、官民人材交流センターによる一般職の国家公務員の再就職のあっせんは、平成二十一年九月二十九日の閣議における鳩山内閣総理大臣の発言により、組織の改廃等により離職せざるを得ない場合を除き、今後は一切行わないこととしたところである。

十七について

 国家公務員法第十八条の五の規定は、一般職に属するすべての職員を対象とするものである。

十八及び十九について

 社会保険庁の職員であった者については、「日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画」(平成二十年七月二十九日閣議決定)において、日本年金機構に採用されない職員については、退職勧奨、厚生労働省への配置転換、官民人材交流センターの活用など、分限免職回避に向けてできる限りの努力を行うこととされている。御指摘の「法の正義」の意味するところが必ずしも明らかでないが、社会保険庁の職員であった者に対する官民人材交流センターによる再就職のあっせんは、同計画を受け、懲戒処分の有無にかかわらず分限免職回避に向けた努力の一環として、国家公務員法第十八条の五及び第十八条の六の規定に基づき行っているものであり、「日本国憲法第七十三条第一号に違反する」との御指摘は当たらないものと考えている。