質問主意書

第174回国会(常会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質一七四第二号
  平成二十二年一月二十六日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員浜田昌良君提出国連気候変動枠組条約第十五回締約国会議の結果に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田昌良君提出国連気候変動枠組条約第十五回締約国会議の結果に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 国連気候変動枠組条約第十五回締約国会議(以下「COP15」という。)においては、主要な問題について参加国の間で大きな立場の相違があり、すべての問題について完全な解決が得られたわけではないが、鳩山内閣総理大臣を含めた首脳級の協議によって「コペンハーゲン合意」が取りまとめられ、COP15全体会合において米国、中国を含むほぼすべての国の賛同を得て、同合意に留意するとの決定が採択されたことは有意義であると考えている。また、同合意には、世界全体の気温の上昇を摂氏二度より下にとどめるべきとの科学的見解の認識、先進国の削減目標及び途上国の削減行動の提出、その実施の測定、報告及び検証、途上国支援等が明記されており、内容面でも有意義なものであると考えている。昨年九月の国連気候変動首脳会合で鳩山内閣総理大臣より我が国が率先して野心的な中期目標を表明したこと、並びにCOP15で小沢環境大臣が「鳩山イニシアティブ」の具体策を発表したこと及び鳩山内閣総理大臣が政治合意を作ることを強く主張したことも、交渉の進展に弾みをつけ、同合意に留意するとの決定がCOP15全体会合で採択されるに至った大きな要因の一つであると考えている。

三について

 現地時間で昨年十二月十九日未明から行われたCOP15全体会合においては、宮川外務省国際協力局審議官は、地球を救うため最善を尽くすべきであり、「コペンハーゲン合意」の採択を強く望むと述べ、各国に採択を呼びかけた。また、同合意を踏まえて、新しい一つの包括的な法的文書を完成させるべきとの我が国の立場を踏まえ、小沢環境大臣は、今後の作業として、法的文書の作成に向けた協議を行うべきであるとするツバル及びバルバドスの主張を支持しつつ、我が国もそういった提案をしてきており、今後、これらを踏まえ協議すべき旨を主張した。
 COP15においては、小沢環境大臣、福山外務副大臣、増子経済産業副大臣及び大谷環境大臣政務官が、閣僚級の会合が開催される中盤以降に順次現地に入り、様々な協議に積極的に出席するとともに、鳩山内閣総理大臣が、終盤の首脳級の協議に出席し、十数時間に及ぶ「コペンハーゲン合意」の作成交渉に帰国の時間を変更してまで臨む等、政治のリーダーシップの下、積極的な外交活動を展開した。

四及び六について

 我が国は、世界全体での温室効果ガス削減に貢献すること、二千十三年以降の気候変動対策に係る新たな枠組みへのスムーズな移行に貢献すること、新たな国際枠組みへの途上国の野心的な参加を促すこと等を目的に、排出削減等の気候変動対策に取り組む途上国及び気候変動の悪影響に対してぜい弱な途上国を広く対象として、二千十二年末までの約三年間で、官民合わせて約一兆七千五百億円(うち公的資金一兆三千億円)規模の支援を実施することを、すべての主要国による公平かつ実効性のある国際枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提として、COP15において表明した。また、COP15では、ほぼすべての国の賛同を得て「コペンハーゲン合意」に留意するとの決定がなされた。こうした状況を踏まえ、今後の具体的な支援については、国際交渉の進展状況を注視しつつ実施していく。
 「コペンハーゲン合意」において、途上国の削減行動の提出や、その実施の測定、報告及び検証を図っていくことが明記され、短期及び中長期の途上国支援の在り方についても、大きな方向性を示すことができたが、我が国が発表した「鳩山イニシアティブ」もこうした動きを促進したものであり、国際的に高い評価を得ている。

五について

 我が国が、従前の「クールアース・パートナーシップ」を再編し、国際交渉の進展状況を注視しつつ、二千十二年末までの約三年間で実施すると発表した、官民合わせて約一兆七千五百億円規模の支援(うち公的資金一兆三千億円)の具体的な内容は、無償資金協力、技術協力及び円借款の積極的な活用による支援約七千三百億円、世界銀行に設立した気候投資基金(以下「CIF」という。)に対する我が国の拠出約千二百億円、さらに株式会社日本政策金融公庫国際協力銀行(以下「JBIC」という。)等を活用した民間部門との密接な連携を通じた支援約九千億円である。
 これは、従前の「クールアース・パートナーシップ」の未実施分に、平成二十一年度予算において計上したCIFへの新規の拠出や法改正を行いJBICの積極活用を図ること等により、新規資金として公的資金約五千億円、民間資金約二千億円、合計約七千億円を上積みした支援を実施しようとするものである。
 また、JBICによる保証や独立行政法人日本貿易保険による貿易保険は民間資金、JBICのその他の支援や独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構からの資金は公的資金として位置付けられている。

七について

 昨年取りまとめられた「鳩山イニシアティブ」にあるとおり、我が国としては、二千十三年以降の途上国支援に関し、適切なクレジット制度の構築を国際交渉において求めていく考えである。
 具体的には、まず、気候変動対策としての効果(環境十全性)に配慮しつつ、現行の柔軟性メカニズムの改善を行う必要があると考えている。加えて、日本が世界に誇るクリーンな技術や製品、インフラ、生産設備などの提供を行った企業の貢献が適切に評価されるよう、また、途上国における森林減少及び劣化への対策なども気候変動対策として適切に評価されるよう検討することを含め、新たなメカニズムの構築を提案していく。
 同時に、炭素クレジットに関する国内の制度設計を進めつつ、二国間、多国間を含む様々な枠組みを通じて、クレジットを生み出す新たなプロジェクトを開拓し、民間投資を促進していくことも、積極的に検討する考えである。

八及び十について

 「コペンハーゲン合意」において、先進国は、二千二十年に向けた経済全体の数量化された排出目標を本年一月三十一日までに、国連気候変動枠組条約事務局(以下「事務局」という。)に提出することとされている。我が国は、これまで既に表明しているとおり、すべての主要国による公平かつ実効性のある国際枠組みの構築及び意欲的な目標の合意を前提として、地球温暖化を止めるために科学の要請する水準に基づくものとして、千九百九十年比で言えば二千二十年までに二十五パーセントの温室効果ガスの排出削減を目指すこととしており、事務局に提出する目標についても、これを踏まえたものとすることとしている。表現振りについては、政府部内でしかるべく検討を行う考えである。また、我が国の中期目標に係る国民や産業界の意見については、引き続き、十分に聴取していく考えである。

九について

 御指摘の「一九九〇年比二十五%削減を目指す際の国内排出削減量、いわゆる「真水」と森林吸収や排出量取引といった「オフセット」との内訳」については、国際交渉の状況も踏まえながら検討してまいりたい。

十一について

 地球温暖化問題に関する閣僚委員会副大臣級検討チームの下に設置したタスクフォース(以下「タスクフォース」という。)においては、前内閣下のコスト試算について複数の研究機関の幅のある試算結果を基に国民に家計負担を示すに当たり、数字の選び方や示し方に不適切な点があったことが指摘されているほか、モデル分析を行った結果、千九百九十年比二十五パーセント削減を達成する場合には同年比四パーセント増加する場合と比べて経済にマイナスの影響が出ると試算されるものの、他国も高い中期目標を掲げ世界的に地球温暖化対策が進展する場合、炭素税の税収を単に家計に還付するのではなく地球温暖化対策への財政支出や国債の償還に充てる場合又は海外との排出量取引を活用する場合には、国民負担等の経済影響を緩和できる可能性が示される等、一定の成果が得られたものと認識している。
 一方で、従来の分析手法には限界があるとの指摘もあり、これまでのタスクフォースでは、新たな産業や市場の創出、イノベーションの促進等のプラスの効果の評価の仕方も必ずしも十分に検討できていないことから、これらの点について、地球温暖化問題に関する閣僚委員会等の場において、引き続き検討を重ねていく必要があると認識している。