質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第七一号

地方社会保険医療協議会の在り方に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年五月十三日

岡田 広   


       参議院議長 江田 五月 殿



   地方社会保険医療協議会の在り方に関する質問主意書

 厚生労働大臣が、保険医療機関及び保険薬局の指定及び指定の取消し並びに保険医及び保険薬剤師の登録の取消し(以下「保険医療機関の指定取消し等」という。)を行おうとするときは、社会保険医療協議会法第一条第二項に基づき設置されている地方社会保険医療協議会(以下「地方協議会」という。)に諮問することとされており(健康保険法第八十二条第二項)、社会保険医療協議会法第二条第二項は、地方協議会の所掌事務として、「保険医療機関及び保険薬局の指定及び指定の取消し並びに保険医及び保険薬剤師の登録の取消しについて、厚生労働大臣の諮問に応じて審議し、及び文書をもつて答申する」と定めている。
 こうした仕組みから、厚生労働大臣による保険医療機関の指定取消し等の不利益処分において、その公正さの担保という点で、地方協議会の果たす役割は大きいものと認識している。
 しかしながら、これらの厚生労働大臣による不利益処分については、法制度としては、行政手続法に基づく厚生労働大臣による聴聞が行われるものの、諮問を受けた地方協議会がその審議において保険医療機関等の当事者からの意見を聴取する手続は定められていないと承知している。不利益処分を被る保険医療機関等の当事者にとっては、適正な手続に基づく行政処分という観点からは、改めて地方協議会において意見を述べる機会が確保される必要があるのであって、現行法制度の下では、地方協議会は、保険医療機関の指定取消し等という不利益処分の公正を担保するという役割を十分に発揮できるものとはなっていないのではないかと思われる。保険医療機関の指定取消し等は、当該保険医療機関等にとって保険診療を行うことができないだけでなく、当該保険医療機関等において医療等を受ける患者等にも多大な影響が及ぶことになるのであって、一層の適正手続の確保が求められるものと考えられる。
 こうした状況を踏まえた場合、保険医療機関の指定取消し等という行政処分については、その判断に重要な役割を果たし、かつ、公正な処分を担保するための地方協議会における審議において、不利益処分を被る保険医療機関等の当事者による意見を述べる機会が法的に確保される必要があるものと考えるところである。保険医療機関の指定取消し等は取消し事由に該当する場合に取り消すことができるという裁量行為であり、また、「相当の注意及び監督を尽くしたとき」といった取消し事由に当たらない場合(健康保険法第八十条第一号及び第五号)であることの挙証責任が保険医療機関等にあると解されていることからも、不利益処分を被る保険医療機関等の当事者には、十二分に意見を述べる機会が確保されてしかるべきであろう。
 そこで、保険医療機関の指定取消し等という厚生労働大臣による不利益な行政処分について、適正手続を確保し、その公正を担保する観点から、政府の現状認識と改革の姿勢を明らかにすべく、以下質問する。

一 保険医療機関の指定取消し等に関する地方協議会の審議において、保険医療機関等の当事者から意見を聴く機会は、量的及び質的に、どの程度確保されているのか、その実態を明らかにされたい。

二 厚生労働大臣による聴聞の後になされた諮問に対し、地方協議会が、取消し不相当との答申を行った実績はどれほどあるのか、その実態を明らかにされたい。

三 法制度として、地方協議会に、その審議において、不利益処分を被る当事者たる保険医療機関等からの意見聴取を義務づける必要があると考えるが、いかがか。

四 地方協議会の委員構成について、保険医療機関等による意見を十分に咀嚼し公正な判断をすることができるなど、不利益処分における適正手続としての実態が十分に確保されるよう、公益を代表する委員として、法律をもって、法曹関係者を一名以上入れることを義務づけることが妥当と考えるが、どうか。

五 保険医療機関の指定取消し等の行政処分に当たって、厚生労働大臣の裁量権の逸脱や取消し事由に当たらない場合の保険医療機関等による挙証に対する恣意的な心証形成が行われる危険性があるように思われる。この防止策として、地方協議会への諮問及び答申という仕組みが作られていると理解しているところであるが、厚生労働大臣から地方協議会への諮問は具体的にどのような手続で、どのような資料を添付して行われるのか、その実態を明らかにされたい。

六 地方協議会が行政庁側の一方的な認識に基づく審議を行うような実態があるとすれば、地方協議会の審議における当事者の意見を聴く機会の確保を含め、早急に改善すべきである。総務省はこの点の調査を行うべきと考えるが、いかがか。

七 厚生労働省としても、保険医療機関の指定取消し等について、地方協議会への諮問の方法、地方協議会の構成や所掌事務について改めて検証し、必要な見直しに着手すべきと考えるが、どうか。

  右質問する。