質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第六七号

米兵等の私有車両の登録に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年五月十二日

井上 哲士   


       参議院議長 江田 五月 殿



   米兵等の私有車両の登録に関する質問主意書

 政府は在日米軍の軍人、軍属およびその家族(以下「米兵等」という。)の私有車両(以下「Yナンバー車」という。)について、自動車の保管場所の確保等に関する法律(以下「車庫法」という。)の規定に反して車庫証明書が添付されずに登録が認められてきたことに関し、一九九八年の運輸省(当時)管理局長通達において、「車庫証明の提出がない場合は登録しない」との方針を全国に通達した。しかし、その後も違法登録が改善されないなかで、日米両政府は二〇〇四年、「基地外」に車庫を持つ場合は車庫証明書の添付を義務付け、「基地内」に車庫を持つ場合についても車庫法を適用することをめざして集中的に議論をおこなうことで合意した。
 ところが、現状において何も改善されていないことをうかがわせる事実が判明した。国土交通省に要求し本年四月九日に提出を受けた資料「Yナンバー車の登録件数について(平成二一年四月~平成二二年三月)」によると、二〇〇九年度に全国で登録されたYナンバー車二万七六三九台中、車庫証明書が添付されなかったものが二万四五九六台にものぼっている。この資料はYナンバー車の違法登録がいまも繰り返されている実態を示している。
 とりわけ、沖縄市や北谷町など車庫証明書の添付を免除していない自治体において基地外に多くの米兵等が居住している沖縄県では、Yナンバー車の登録総数一万四四七六台のうち、「基地外」に車庫を持つとして車庫証明書が添付されて登録されたのは四〇台(約〇・二七%)に過ぎない。同県において、実に九九%以上が「基地内」に車庫を持つ車両として登録されている事実は、米兵等の基地外居住の実態とあまりにかけ離れている。
 そこで以下質問する。

一 日米地位協定第十条第三項の規定及び「軍人・軍属等の私有車両の登録」に関する日米合同委員会合意事項を踏まえれば、日本の当局は本来Yナンバー車の登録の際には国内法令に従い、申請があっても車庫証明書が添付されないかぎり登録を一切認めてはならないはずであるが、これに反して車両登録を認めている現状は法令違反ではないか。なぜ、法令に反する登録を認めているのか。

二 米側は多数の車両登録において車庫証明書が添付されていないにもかかわらず、前述の日米地位協定の規定及び日米合同委員会合意事項を守っているとの考えを示しているか。そうであるなら、その理由をどのように述べているのか。この際明らかにされたい。

三 前述の運輸省(当時)管理局長通達から既に一二年が経過しようとしている。同通達に反する登録の実態が長期間続いていることについて、政府はどのように考えているか。また、同通達の内容は現在もなお有効であるか、政府の見解を明らかにされたい。

四 外務省及び防衛省が発表した二〇〇九年三月三一日時点の「米軍人等の施設・区域内外居住者の人数について」にもとづき計算すれば、沖縄県では米兵等の居住者総数に占める基地外居住者数の割合は約二六%になるにもかかわらず、前述のように「基地外」に車庫を持つとして登録されたYナンバー車はわずか〇・二七%に過ぎない。このことを踏まえれば、二〇〇四年の合意は守られず、基地外居住者が所有する大量のYナンバー車が「基地内」に車庫を持つ車両として登録されているのではないか。
 また、二〇〇八年五月一三日の参議院外交防衛委員会において、当時の外務大臣は「合意が守られているか(中略)疑問があるわけでありますから、今、回答待ちでありますが(中略)早く詰めるように努力をしてまいりたい」との考えを示していた。その後、米側からどのような回答を得たのか。政府の見解とともに明らかにされたい。

五 二〇〇四年の合意で日米両政府がめざすとしていた、「基地内」に車庫を持つ場合についての早期の車庫法適用にむけて、米側とはどのような協議を何回おこなったか。特に、日米合同委員会とその分科会ではそれぞれ何回協議をおこなったか。外務省の従前の国会答弁は、「随時協議をおこなってきている」とするのみで、具体的な協議事実は判然としない。この際、協議の実績について、回数、協議者のレベル、結果などの詳細を明らかにされたい。

六 車庫法の解釈、適用に関し、米軍基地から二キロメートル以内にある基地外の住居に居住しYナンバー車で基地との間を往復しようとする米兵等が当該車両を登録する際、住居の側ではなく「基地内」に車庫を持つとして登録することは法令上認められるか。政府の見解を示されたい。

七 車庫証明書の発給を受けようとする者は、各都道府県がそれぞれ定める一定の手数料を支払わなければならないと承知しているが、前述の二〇〇九年度におこなわれたYナンバー車の登録に関し、「基地内」に車庫を持つとして車庫証明書が添付されず登録された結果、支払われなかった手数料の総額は全国及び沖縄県において、それぞれいくらであったか。金額を明らかにされたい。

八 日米地位協定には日本国内において米兵等に対する租税や手数料などを免除する規定もあるが、Yナンバー車の車庫証明書に要する手数料は免除されないと理解してよいか。

  右質問する。