質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第六一号

初犯の薬物事犯者による再乱用防止対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年四月二十二日

浜田 昌良   


       参議院議長 江田 五月 殿



   初犯の薬物事犯者による再乱用防止対策に関する質問主意書

 平成二十一年の薬物事犯の検挙人員(暫定値)は一万四千九百九十二人であり、このうち覚せい剤事犯の検挙人員が七十八%(一万千六百八十八人)、大麻事犯の検挙人員が十九・六%(二千九百三十一人)を占めている。特に覚せい剤事犯は、再犯率が約六割と高く、再乱用防止のための対策が重要である。
 従来、政府の薬物乱用防止対策は、取締りの徹底に重点が置かれてきたが、近年ではこれとともに、薬物依存症の治療・支援の充実が再乱用防止に資するとされており、政府が平成二十年八月に策定した「第三次薬物乱用防止五か年戦略」(以下「第三次五か年戦略」という。)においても、治療・社会復帰の支援等による再乱用防止の推進が目標の一つとして掲げられている。
 薬物の再乱用防止のためには、一度薬物を使用した者が依存症に陥ることのないよう早期の段階における対処が不可欠と考えるが、本年三月二十六日に総務省行政評価局が公表した「薬物の乱用防止対策に関する行政評価・監視-需要根絶に向けた対策を中心として-」(以下「行政評価・監視」という。)は、初犯の薬物事犯者に対する再乱用防止対策が「必ずしも十分とは言えない状況」であると指摘している。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 行政評価・監視の結果によると、薬物事犯者のうち、実刑判決が確定し刑事施設に収容されている者や保護観察を付した執行猶予判決を受けた者に対する再乱用防止のための指導等は行われているものの、初犯の薬物事犯者は保護観察が付されない執行猶予判決を受ける場合が大半であり、再乱用防止の指導等を受ける機会がないまま社会復帰をしている現状にあるとされている。このように、初犯の薬物事犯者に対する再乱用防止のための取組が進んでいないことに対する政府の認識を明らかにされたい。また、これまでに実施した取組があればその評価を含めて示されたい。

二 警察庁は平成十九年度及び二十年度において、薬物事犯で検挙され、即決裁判手続により執行猶予判決を受けることが見込まれる成人男性(希望者)について、保護観察の付されない執行猶予判決確定後に特定非営利活動法人アパリが実施する薬物依存回復プログラムに参加させる「薬物再乱用防止モデル事業」を実施したところである。
 行政評価・監視の結果によると、同モデル事業は「実績が低調であったため、モデル事業の終了後は、本格的な取組の実施には至っていない」とされている。政府は同モデル事業が期待された実績をあげることができなかった理由について、どのように分析しているか。政府の見解如何。

三 栃木県では、初犯者等で執行猶予付き判決が見込まれる者に対して薬物依存回復プログラムを実施する「栃木県薬物再乱用防止教育事業」を平成二十一年度より実施している。同事業は、厚生労働省の地域依存症対策推進モデル事業に採択されており、平成二十三年度までの三か年実施される予定である。栃木県のこうした取組について、政府はどのように評価しているか。また、こうした地域の取組を他の都道府県においても普及させることが必要と考えるが、この点についての政府の見解を明らかにされたい。

四 警察庁のモデル事業及び栃木県の薬物再乱用防止教育事業は、それぞれ薬物依存からの回復を支援する特定非営利活動法人に委託して行われている。第三次五か年戦略には、民間団体と連携した薬物再乱用防止の推進が盛り込まれているところ、政府は民間団体による初犯の薬物事犯者への早期支援の重要性に鑑み、薬物乱用問題に知見を有する医師、薬剤師、保健師などの人材を民間団体が活用できるようにするなど、民間団体の活動を支援する取組を検討する必要があるのではないかと考えるが、政府の見解如何。

五 行政評価・監視では、初犯の薬物事犯者に対する再乱用防止対策を推進する観点から、未決拘禁の段階からの取組について検討することを勧告している。同勧告を踏まえた、今後の政府の取組方針を明らかにされたい。また、政府は第三次五か年戦略に基づく対策を一層強化・充実させるため、本年六月を目途に「薬物乱用防止戦略加速化プラン(仮称)」を策定する方針とのことである。そこで、政府一体となった取組として、初犯の薬物事犯者に対する再乱用防止対策を同プランに盛り込む必要があるのではないかと考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。