質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第五二号

労働組合等の政治活動に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年四月二日

荒井 広幸   


       参議院議長 江田 五月 殿



   労働組合等の政治活動に関する再質問主意書

 北海道教職員組合の構成員による政治資金規正法違反をはじめ、労働組合と政治活動に対する国民の関心が高まっている。不透明な政治資金の流れを明らかにすることは、政治に対する国民の不信を払拭するために不可欠である。こうした問題意識から、過日、内閣に対して、「労働組合等の政治活動に関する質問主意書」(質問第四〇号。以下「前回質問主意書」という。)を提出した。
 しかるに、「労働組合等の政治活動に関する質問に対する答弁書」(内閣参質一七四第四〇号。以下「前回答弁書」という。)の内容は、極めて誠意を欠くものであり、労働組合の活動及び不透明な政治資金の実態を解明しようとする国民の要求を無視するものと言わざるを得ない。
 労働組合と政治活動、政治資金を巡る問題は、国会の議論の中でも多く取り上げられ、報道を通して広く国民が注視するところである。特に、各府省の大臣、副大臣及び大臣政務官(以下「政務三役」という。)は、内閣の意思決定という重責を担う立場にある以上、政治活動及び政治資金について十分な説明責任を果たさなければならないと考える。
 政務三役の活動はすべて公人としての活動であり、前回答弁書において、「政治家個人としての活動に関するもの」であることを理由に、政府としての見解が示されていないことは極めて遺憾である。
 政務三役は、政治家であると同時に政府の構成員である。こうした政務三役の活動等は、政府としての活動等と表裏一体の関係にある以上、政府は政務三役の活動等について説明する責任と義務を有していると考える。
 かかる観点から、前回答弁書の内容を踏まえて、以下再質問する。

一 前回答弁書の「一について」において、民間の労働組合又は公務員の職員団体(以下単に「労働組合」という。)が締結するユニオン・ショップ及びチェック・オフの強制性、あるいは、両制度が組合活動に与える影響に対する認識について、「一概にお答えすることは困難である」と答弁している。これは、具体的な労働組合については、答弁することができる旨の答弁であると理解する。
 そこで、北海道教職員組合におけるユニオン・ショップ及びチェック・オフの強制性、また、両制度が組合活動に与える影響について、政府の認識を示されたい。

二 前回答弁書の「二及び三について」において、労働組合の「運営に対する政府の関与は最小限にとどめるべき」と答弁している。
 しからば、ここでいう「最小限」とはどの範囲を示すのか、具体的に明らかにされたい。また、「最小限」の範囲であれば、労働組合の運営に対して政府が関与することができると理解してよいのか、政府の見解を求める。

三 前回答弁書の「二及び三について」において、労働組合の会計処理については、「各労働組合の規約等にのっとって行われるべきものである」、「各職員団体の規約等にのっとって行われるべきものである」と答弁している。
 そこで、ここでいう「規約等」の「等」は何を指しているのか、明らかにされたい。
 また、政府が実態調査を行わない理由として、「規約等にのっとって行われるべきものであることから」と答弁しているが、政府として、現状の労働組合の会計処理は「規約等にのっとって行われ」ているので実態調査は不要であると認識しているのか、見解を示されたい。
 併せて、北海道教職員組合における会計処理は、同組合の規約等にのっとって行われていると認識しているのか、政府の見解を示されたい。

四 前回答弁書の「五及び六について」において、労働組合が設立している政治団体に関する質問に対して、「「労働組合が設立している」の意味するところが必ずしも明らかではない」との答弁が行われている。本質問主意書では、労働組合の執行委員長、副執行委員長及び書記などの役職員が、代表者又は会計責任者を兼ねている政治団体を「労働組合が設立している政治団体」と定義付ける。
 この定義に基づき、労働組合が設立している政治団体の数を示した上で、それぞれの名称を列挙されたい。また、労働組合が設立している政治団体について、当該労働組合と当該政治団体との関係を明示されたい。

五 政治主導をうたう民主党等の鳩山内閣は、今までの内閣以上に政治家と政党の倫理性が問われることを十分に覚悟しているはずである。
 しかるに、前回答弁書の「七から九までについて」において、鳩山内閣の政務三役の活動について、「政治家個人としての活動に関するもの」に関しては、政府として答える立場にないとの答弁が行われている。
 しからば、政務三役の活動において、政府の構成員としての活動と「政治家個人としての活動」を判断する基準は何であるのか、明らかにされたい。
 また、政務三役が行う個々の活動について、政府の構成員としての活動と「政治家個人としての活動」とに峻別することができると考えているのか、政府の見解を示されたい。

六 前回答弁書の「十から十二までについて」において、「組織内議員」について確立された用法があるとは承知していない旨の答弁が行われている。
 しかし、平成二十一年十一月六日の参議院予算委員会において、直嶋正行経済産業大臣は、「どういう人を組織内議員と呼ぶかはそれぞれ労働組合によって違います。」と述べた上で、「連合の場合は、連合の出身の議員及び連合の各加盟の組合が組織内議員として推薦をした方を組織内議員というふうに呼んでおります。」と答弁している。これは、「連合」の「組織内議員」についての定義と理解してよいのか、政府の見解を示されたい。

七 鳩山内閣の一員である直嶋経済産業大臣が国会の場で答弁しているにもかかわらず、政府が国会議員の提出した質問主意書に対して回答できないというのは、閉鎖的・非民主的な民主党の体質を如実に表すものであると考える。このように民主党等による内閣及び民主党は閉鎖的・非民主的な体質であるとの私の指摘に対する政府の所見を示されたい。

八 前記六の直嶋経済産業大臣の答弁にいう「組織内議員」の定義を前提とした上で、鳩山内閣の政務三役の中で、「組織内議員」に該当する者の氏名を明らかにされたい。
 また、これまで当該「組織内議員」が労働組合から報酬又は政治献金を受けているか否かを明らかにされたい。仮に、報酬又は政治献金を受けていれば、両者を区分した上で、年度ごとにその金額を示されたい。
 併せて、現在、「組織内議員」の秘書又は秘書官として勤務している者が、その職に就くまで労働組合の組合員であった場合には、当該労働組合の名称と当該労働組合における役職名を明らかにされたい。

九 前回答弁書の「十三について」において、鳩山内閣の政務三役が所属する政策勉強会については、「政治家個人としての活動に関するものであり、政府としてお答えする立場にない」と答弁している。この答弁は、政務三役が政策勉強会に所属していることを前提として行われた答弁であると理解している。
 しからば、こうした政策勉強会において、政務三役が「政治家個人として」活動しているのか、あるいは、政府の構成員として所管する分野の知識等を深めるために活動しているのか、何をもって判断しているのか、その基準を明らかにされたい。
 併せて、政務三役がこれらの政策勉強会に参加したときの肩書きとして、いかなる名称を用いているのか、あるいは、用いたのかを明らかにされたい。

十 前回答弁書において、「お答えすることは困難である」との答弁が散見される。この意味するところは、答弁することが「困難」であるだけであって、一定の前提を置く、あるいは、質問の対象を限定した上での質問であれば答弁することもできるとの意味であると理解してよいのか。
 また、「お答えすることは困難である」という答弁における「困難」の意味について、政府の見解を示されたい。

十一 前記一から十までを前提とした上で、本項目から以下二十三までにおいて、前回質問主意書と同内容の質問を改めて行う。なお、政府としての誠実なる対応を望むものである。
 労使間で締結されるユニオン・ショップ及びチェック・オフが組合員になろうとする者及び組合員である者に対して強制性があることについて、また、両制度が組合活動に与える影響について、政府はいかに認識しているか示されたい。

十二 労働組合の会計処理の実態について、政府としての把握の状況を示されたい。

十三 労働組合の会計処理に関する実態調査を行う必要性について、政府の見解を示されたい。

十四 労働組合の会計について、一層の透明化のため会計基準等のルール整備を図る必要があると考えるが、政府の見解を問う。

十五 労働組合が設立している政治団体の数を示した上で、それぞれの名称を列挙されたい。

十六 労働組合が設立している政治団体について、当該労働組合と当該政治団体との関係を明示されたい。

十七 鳩山内閣の政務三役が受けている労働組合からの政治献金について、過去五年間に政治献金を行った団体名及び各団体からの政治献金の額を、政務三役ごとに明らかにされたい。

十八 過去五年以内に行われた衆議院議員総選挙及び参議院議員通常選挙において、連合・産業別労組(県及び支部単位を含む)等を含む労働組合から推薦等を受けた鳩山内閣の政務三役の氏名及び当該推薦等を行った労働組合の組合名を対応させて公表されたい。

十九 十八につき、労働組合の専従職員が、各候補者の選挙対策本部のスタッフとして活動した実績を示されたい。

二十 いわゆる「組織内議員」及び「組織内候補者」並びに「準組織内議員」及び「準組織内候補者」の意味について、政府の見解を示されたい。

二十一 鳩山内閣の政務三役の中で、いわゆる「組織内議員」又は「準組織内議員」に該当する者の氏名を明らかにされたい。

二十二 二十一で示した「組織内議員」が労働組合から報酬を受けているか否か、また、報酬を受けていればその金額を示されたい。

二十三 労働組合がつくる政策勉強会(例えば私鉄総連なら「私鉄交通政策議員懇談会」)には、どのようなものがあり、その目的や会費はどうなっているのか。また、鳩山内閣の政務三役が所属する政策勉強会があれば、その名称を明らかにされたい。

二十四 前記二十三までを踏まえ、更に質問する。
 労働組合法第五条第二項第七号の規定により、労働組合の会計報告は少なくとも毎年一回組合員に対して公表することとなっている。しかし、北海道教職員組合を巡る政治資金規正法違反の問題は、労働組合の会計報告が組合員に対する公表しか義務付けられていないことが一要因であると考える。労働組合の会計報告については、組合員に対してのみならず、広く一般に公開することにより、その透明性が確保されるとともに、当該労働組合に対する信頼性も向上すると考える。そこで、労働組合の会計経理の透明性を向上させるために、その会計報告の一般への公開を義務付けるよう労働組合法を改正すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。また、労働組合の会計報告を一般に公開する方が透明性向上に寄与するとの考え方に対する政府の所見を示されたい。

二十五 鳩山由紀夫内閣総理大臣、菅直人副総理及び平野博文内閣官房長官は、労働組合又は前記四において示した労働組合が設立している政治団体からの政治資金規正法に基づく政治献金又は秘書の派遣等の人的支援等を受けているのか、その有無について明らかにされたい。
 仮に、政治献金又は人的支援等を受けているのであれば、その規模や内容等について明らかにされたい。

  右質問する。