質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第四一号

漢方薬を公的医療保険の対象外とする案に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年三月十一日

川口 順子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   漢方薬を公的医療保険の対象外とする案に関する質問主意書

 平成二十一年十一月十一日、行政刷新会議の事業仕分け作業・第二ワーキンググループ(以下「WG」という。)で、厚生労働省保険局担当の「後発品のある先発品などの薬価の見直し」が事業仕分けの対象として議論された。当該事業仕分けの論点の一つとして、湿布薬・うがい薬・漢方薬など市販品類似薬の薬価は保険外とするという案も議論された。
 この漢方薬を公的医療保険の対象外とする案に関し、以下のとおり質問する。

一 WGとりまとめコメントは「市販品類似薬を保険外とする方向性については当WGの結論とするが、どの範囲を保険適用外にするかについては、今後も十分な議論が必要である」としているが、市販品類似薬に漢方薬は含まれているのか否か。また、漢方薬に関しては、多くの国民が診療現場で恩恵を受けており、漢方薬を公的医療保険給付の対象外とすることに反対する署名が一週間で二十七万人分も集まっているにもかかわらず、湿布薬、うがい薬と同じ扱いになっているのは何故か。それぞれについて政府の見解を具体的に示されたい。

二 公的医療保険における漢方薬処方に対する支払総額及びその公的医療保険支払総額に占める割合(パーセント)について、政府は直近の年度のデータを示されたい。

三 文部科学省は平成十三年、「医学教育モデル・コア・カリキュラム」の一項目として「和漢薬を概説できること」を採用し、現在、すべての医学部・医科大学で漢方医学の教育が行われているとのことであるが、同項目が採用されるに至った理由を具体的に示されたい。また、医学教育に漢方医学を取り入れておきながら、医療現場から漢方の存在そのものを消してしまいかねない漢方薬への保険適用除外について議論することの整合性について説明されたい。

四 医師の七割以上が漢方薬を処方し、漢方薬は国民からも安心感をもって受け入れられているとのことである。これだけ国民に受け入れられている漢方薬を保険適用外にするとすれば、専門家による十分な審議が必須と考えられるが、どのような審議の場を設けて、いつまでに結論を出す予定なのかも含めて、政府の見解を具体的に示されたい。

五 わが国の医療は、西洋医学を縦糸とすれば、漢方医学は横糸のようなものであり、両者の協調によって布が織られるように、医療の幅が広がり、世界に類のない医療になっている。漢方薬を保険適用外にするとすれば、医療現場における医師の治療手段の幅を狭め、治療効果の低下を招くことが危惧される。また、漢方薬処方とは異なる治療により、かえって医療費が膨張するおそれもある。このような懸念に対する政府の見解を示されたい。

六 漢方薬を公的医療保険の対象外とすることに関し、政府はこれまでにモデル事業や実証調査などを実施し、検討を行ってきたのか否か、確認したい。もし、それらのモデル事業や実証調査を実施したことがあれば、その内容と結果・評価について、具体的に示されたい。

七 国際的には伝統医学の見直しが行われ、WHOやISOの場で、中国・韓国が国策として伝統医学を推進している中で、わが国の国際戦略はどのようなものであるべきかについての具体案を示されたい。

  右質問する。