質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第二九号

天下り問題に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年二月二十二日

山下 栄一   


       参議院議長 江田 五月 殿



   天下り問題に関する再質問主意書

 「天下り問題に関する質問主意書」(第一七四回国会質問第七号。平成二十二年一月二十五日提出)に対する「答弁書」(内閣参質一七四第七号。平成二十二年二月二日付け)は、論点に答えるものとなっていないため、再度以下のように質問する。
 なお、答弁書においては、複数の質問項目を一括し、まとめて回答するのではなく、各質問項目について丁寧に回答するよう求める。

一 天下り問題の本質は、「公務の民主的且つ能率的な運営」(国家公務員法第一条第一項)の実現を妨げる有害な公務員の再就職とはどのようなものか、また、それを防ぐためにどうすべきかである、と考えるが、いかがか。

二 「公務の民主的で能率的な運営」の実現を妨げる有害な公務員の再就職とは、許認可権等の行使により特定の民間企業との間に癒着が生じ、又は、予算権限の行使により独立行政法人等を通じ税金の無駄が発生する原因となる公務員の再就職のことである、と考えるが、いかがか。

三 許認可権等の行使により特定の民間企業との間に癒着が生じ、又は、予算権限の行使により独立行政法人等を通じ税金の無駄が発生する原因となる公務員の再就職は、「府省庁のあっせん」が無くても行われる、と考えるが、いかがか。

四 現政権政党である民主党は、平成十九年に「天下り根絶法案」を衆議院に提出している。同法案は、「府省庁のあっせん」による公務員の再就職だけを禁止するものではない、と考えるが、政府としてどのようにとらえているか示されたい。

五 四の「天下り根絶法案」は、従来、国家公務員法が規定していた公務員の再就職自体を規制する制度(事前規制)の強化を含んでいる、と考えるが、政府としてどのようにとらえているか示されたい。

六 四の「天下り根絶法案」は、許認可権等の行使により特定の民間企業との間に癒着が生じ、又は、予算権限の行使により独立行政法人等を通じ税金の無駄が発生する原因となる公務員の再就職を事前に規制する内容である、と考えるが、政府としてどのようにとらえているか示されたい。

七 現政権は、公務員の再就職自体を規制する制度(事前規制)の必要性について、どのように考えているか。

八 そもそも「天下り」は、明治憲法下の「天皇の官吏」の発想の言葉であり、「主権者である国民全体に奉仕する公務員」に、まったくふさわしくない表現である、と考えるが、いかがか。

九 平成二十一年十一月十日、参議院議院運営委員会の理事会において、松井孝治内閣官房副長官は、天下り問題に関し次のように説明している。
 「「天下り」とは、府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させることをいう。したがって、公務員が、法令に違反することなく、府省庁によるあっせんを受けずに、再就職先の地位や職務内容等に照らし適材適所の再就職をすることは、天下りには該当しない。」
 最近の日本郵政株式会社の社長人事は、政府の強い介入があって行われた。この人事は、「府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させること」に該当しないことになるが、そのような理解で良いか、確認したい。

十 平野博文内閣官房長官は、平成二十一年十一月十日の衆議院議院運営委員会理事会で、国家公務員の天下りをあっせんする「府省庁」について、閣僚、副大臣など政務三役や官僚OBは該当しないとの見解を表明したと報道されているが、これは事実か、確認したい。

十一 十の平野官房長官の発言によれば、閣僚、副大臣など政務三役のあっせんにより、公務員が再就職する場合は、九の「府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させること」に該当しないことになるが、そのような理解で良いか、確認したい。

十二 内閣、内閣総理大臣、各省大臣、副大臣、大臣政務官のあっせんにより、公務員が再就職する場合は、九の「府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させること」に該当しないとすれば、内閣任命、大臣任命等の政治主導による公務員の再就職は九の「天下り」に該当しない、ということになるのか、確認したい。

十三 天下り問題に対する国民一般の意識は、とにかく「公務の民主的で能率的な運営」の実現を妨げる有害な公務員の再就職を根絶してもらいたい、というものであり、それは公務員の再就職が政治主導によるか、官僚主導によるかとは関係がない、と考えるが、いかがか。

十四 先の日本郵政株式会社の社長人事は、国民一般の意識からすれば、いわゆる「渡り」だけでなく、特定企業との癒着や税金の無駄が疑われる、政治主導による退職公務員の再就職である、と考えるが、いかがか。

十五 天下り問題への対策として国民が求めているのは、政治主導による公務員の再就職ではなく、四の「天下り根絶法案」が採用した公務員の再就職自体を規制する制度(事前規制)である、と考えるが、いかがか。

十六 国家公務員法第十八条の五(平成十九年改正で導入)は、内閣総理大臣が職員の再就職援助をすることを規定しているが、再就職問題は行政機関の職員だけではなく、立法機関や司法機関の職員についても同様である。したがって、行政機関の職員に対してだけ再就職援助が行われるのは、法の下の平等に反する、と考えるが、いかがか。

十七 国家公務員法第十八条の五は、懲戒処分を受けた職員が退職する場合に再就職の援助をすることを想定していない、と考えるが、いかがか。

十八 社会保険庁職員の再就職問題では、懲戒処分を受けた職員に対してまで政府が再就職の援助を行っている。しかし、懲戒処分は、法令違反、職務上の義務違反や非行のあった職員に対して行われる処分であり、そのような処分を受けた者に対して再就職の援助をすることは法の正義に反する、と考えるが、いかがか。

十九 日本国憲法第七十三条第一号は、「法律を誠実に執行」することを内閣が行う第一の事務として規定している。懲戒処分を受けた職員に対してまで政府が再就職の援助を行うことは、国家公務員法第十八条の五を誠実に執行していないことになり、日本国憲法第七十三条第一号に違反する、と考えるが、いかがか。

二十 内閣総理大臣は、国家公務員法第十八条の二により、「退職管理等に関する事務」をつかさどり、また、同法第十八条の五により、「職員の離職に際しての離職後の就職の援助」を行うことから、四の「天下り根絶法案」のような公務員の再就職自体を規制する制度(事前規制)が不可欠である。そのためには、許認可権等の行使により特定の民間企業との間に癒着が生じ、又は、予算権限の行使により独立行政法人等を通じ税金の無駄が発生する原因となる公務員の再就職について判断する基準を、国家公務員法制として明確に定めることが必要である、と考えるが、いかがか。

  右質問する。