質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第九号

チッソ後藤会長の年頭所感とチッソ分社化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年一月二十六日

川田 龍平   


       参議院議長 江田 五月 殿



   チッソ後藤会長の年頭所感とチッソ分社化に関する質問主意書

 昨年七月に成立した「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法」(以下「特別措置法」という。)は、水俣病被害者であるにもかかわらず、「公害健康被害の補償等に関する法律」の認定を受けることができない人々を対象に原因企業の責任を果たさせるべく、一時金の支給等の救済措置を行おうとするものである。
 その具体的な内容については、特別措置法に基づく「救済措置の方針」において定められることとなっており、昨年十二月には環境省から「救済措置の方針」等についての考え方が案として公表された。
 こうした中、水俣病問題の原因企業の一つであるチッソは、本年一月の社内報において、今年がチッソ分社化の元年であり、水俣病の桎梏から解放される希望の新年である旨の後藤舜吉会長の年頭所感を掲載しているとの新聞報道がなされている。
 特別措置法は、原因企業の分社化を規定してはいるが、被害者救済のための分社化であり、また、「救済措置の方針」が定まらない中で原因企業の最高責任者が自社が起こした問題を「桎梏」と表現することは、加害者責任を果たすべき企業の発言として断じて容認できるものではない。
 一方、年頭所感には特別措置法に基づく分社化、一時金の支給等について、今後の段取りが具体的に記されている。これらは、チッソ・後藤会長の考えによるものなのか、政府としても同様の見解であるのか、被害者の救済措置と分社化との関係から、以下のとおり質問する。

一 後藤会長は、救済措置の具体的中身が決定されれば、直ぐに分社化の手続に入り、本年十月一日には事業会社(以下「新チッソ」という。)の営業を開始するとしている。
 裁判所の事業譲渡許可は、環境大臣の特定事業者の指定、申請された事業再編計画の認可が前提となるが、政府としては、少なくとも年内に新チッソが営業を開始すべく、チッソの申請に合わせて、こうした指定や認可を行うことが必要であると考えているのか。

二 事業再編計画の認可要件については、「個別補償協定の将来にわたる履行及び公的支援に係る借入金債務の返済に、救済措置の開始の時点及び救済措置の対象者の確定の時点において支障が生じないと認められること。」(特別措置法第九条第二項第一号)とされている。
 この対象者については、特別措置法第七条第二項において「救済措置の開始後三年以内を目途に(中略)確定」とされているが、具体的な人数については三年以内に確定するものの、事業再編計画の認可要件としては、申請した際に見込まれるおおよその人数で足りると考えているのか。
 また、おおよその人数で足りる場合、対象者は現時点でどの程度と見込んでいるのか、明らかにされたい。

三 後藤会長は、今回の救済対象者の一時金受給は、チッソが新チッソ上場によって原資を作り得て、はじめて可能としている。
 一時金の支給については、特別措置法上、政府や県が財政支援可能であるが、政府としても、救済の終了及び市況の好転まで暫時凍結とされている新チッソの株式譲渡までできないと考えているのか。

四 後藤会長は、新チッソの純資産が約五百億円となり、連結経常利益については現状の約二百億円が最終利益として計上されることとなるとしている。
 チッソの事業譲渡から新チッソの株式譲渡までの間、チッソは新チッソからの株式配当金を受け、これを補償や救済に充てるものと理解しているが、政府として、この配当金は毎年度どのくらいになると見積もっているのか、明らかにされたい。

五 後藤会長は、三年後を見据えて事業価値の最大化に取り組み、新会社を上場することにより、チッソの再生が果たされるとしている。
 これは、三年後に新チッソの株式譲渡を行うというチッソ側の意思表示と解釈できるが、政府としては、三年後にはすべての被害者が救済され、株式を譲渡することが可能になると考えているのか。

六 今回の後藤会長の年頭所感に対して、小沢環境大臣は被害者感情への懸念を示したと報道されているが、被害者救済のための分社化であることを関係者の間でしっかりと共有するため、事業会社の名称については、後藤会長が「新チッソ」としているように、「チッソ」の名称を残すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。