質問主意書

第173回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第七六号

内閣参質一七三第七六号
  平成二十一年十二月八日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員加藤修一君提出八ッ場ダムの治水・利水効果等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加藤修一君提出八ッ場ダムの治水・利水効果等に関する質問に対する答弁書

一について

 政府としては、局地的な大雨や総雨量千ミリメートルを超える大雨による水害が各地で発生していることも踏まえ、河川の整備とあわせて、防災情報の共有、洪水予測の高度化等の治水対策を推進している。
 国土交通省において、昭和二十二年九月の洪水時と同程度の降雨量で、同洪水時を含む過去に生起した三十一の洪水時の降雨パターンを基に、一級河川利根川水系利根川(以下「利根川」という。)の基準地点である八斗島地点における流出計算を行った結果によれば、八ッ場ダムは、そのうち二十九の洪水時の降雨パターンについて同地点における洪水のピーク流量に対する洪水調節効果を有しており、その洪水調節量は、最大で毎秒約千五百立方メートル、当該二十九の洪水時の降雨パターンの平均で毎秒約六百四十立方メートルである。

二について

 お尋ねの利根川水系上流のダムについては、利根川の八斗島地点上流において、国土交通省又は独立行政法人水資源機構(以下「機構」という。)が管理するダムで、その目的に洪水調節を含むものの数は、平成二十一年四月現在で六であるが、御指摘の「カスリーン台風当時」には、これらのダムは存在していなかった。
 また、御指摘の「利根川水系八ダム計画」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、河川法の一部を改正する法律(平成九年法律第六十九号)による改正前の河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第十六条第一項に基づく「利根川水系工事実施基本計画」においては、基本高水のピーク流量の一部を八斗島地点よりも上流域で洪水調節することとし、八ッ場ダムをその役割の一部を担う施設として位置づけている。
 また、洪水時においては、地下鉄等の交通、電力等の途絶等による経済的損失が発生し得ると認識しているが、現時点においては、そのような経済的損失のすべてを考慮して洪水時の被害想定額を算定することは困難である。
 氾濫原及び遊水池についてのお尋ねについては、民主党の諮問を受けて「公共事業を国民の手に取り戻す委員会」が平成十二年十一月に提出した「「緑のダム構想」~「川と共生する二十一世紀のライフスタイル」の創造~」に係るものであると思われるが、同構想に係るお尋ねについては、政府としてお答えする立場にない。

三について

 平成二十一年度第一次補正予算に係る森林整備事業については、事業実施に向けた準備状況からみて、年度内の執行が困難と見込まれる箇所の執行を停止したところである。
 平成二十二年度予算に係る森林整備事業については、対前年度比十五・三パーセント減の千三百七十億円の概算要求を行ったところであるが、予算の重点化を図りつつ、林内路網の整備や施業の集約化による間伐を促進することとしている。

四について

 行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成十三年法律第八十六号)第三条第一項及び第十条において、行政機関の長はその所掌に係る政策について政策評価を行い、評価書及びその要旨の公表等を行うこととされており、ダム事業に関する費用対効果分析の結果の公表についても、各行政機関において対応しているものである。

五について

 八ッ場ダムに係る利水事業については、十一の利水事業者が、それぞれ自らの事業の妥当性の評価を行っているものと承知しており、政府として八ッ場ダムの利水事業全体に係る費用対効果分析は行っていない。

六について

 お尋ねの「ダム設置の状況と渇水の発生状況との関係」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、利根川本川に係る取水制限を実施した渇水は平成元年から平成十年までの間に五回、平成十一年から平成二十年までの間に一回発生している。また、利根川水系において国土交通省又は機構が整備したダム等の水資源に係る施設としては、昭和六十三年までに九つのダム及び利根川河口堰等が、平成元年から平成十年までの間に奈良俣ダム及び渡良瀬貯水池等が、平成十一年から平成二十年までの間に北千葉導水路等が完成している。
 八ッ場ダムについては、本体工事を中止する考えを表明しているところであり、今後、治水、利水等の観点から検証を行うこととしている。

七について

 八ッ場ダムについては、今後、治水、利水等の観点から検証を行うこととしており、仮定の御質問に対してお答えすることは差し控えたい。

八について

 御指摘の「渇水に対応すべき利水の確保」については、地球温暖化に伴う気候変化が水資源に与える影響に関する科学的知見を蓄積するとともに、地域の実情を踏まえ、節水の推進等の需要側に係る対策、水資源開発に係る施設の効率的な運用の推進等の供給側に係る対策等を通じ、水資源の確保を図ることが重要と考えている。