質問主意書

第173回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第六八号

内閣参質一七三第六八号
  平成二十一年十二月八日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員衛藤晟一君外三名提出修復腎移植問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員衛藤晟一君外三名提出修復腎移植問題に関する質問に対する答弁書

一の1について

 お尋ねの献腎移植については、平成七年四月から平成二十年十二月までの十三年九か月間について把握しており、その心停止下及び脳死下での実施数は二千百十八件及び百三十三件であり、心停止下での生存率及び生着率は、それぞれ五年後が八十九・六パーセント及び七十五・一パーセント、十年後が八十四・一パーセント及び五十八・三パーセント、脳死下での生存率及び生着率は、それぞれ五年後が八十九・八パーセント及び七十七・七パーセント、十年後が八十七・二パーセント及び七十五・五パーセントである。
 また、お尋ねの生体腎移植については、「臓器移植ファクトブック二〇〇八」(日本移植学会広報委員会編)によると、昭和六十三年から平成十九年までの二十年間における実施数は一万千六百七十七件である。生存率及び生着率については、把握していない。
 また、お尋ねの「修復腎移植」とは「「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)の制定について」(平成九年十月八日付け健医発第一三二九号厚生省保健医療局長通知。以下「運用指針」という。)第十二の八に規定する病腎移植を指すものと考えるが、そうであるとすれば、過去二十年間の実施数は四十二件である。生存率及び生着率については、正確な数値を把握していない。

一の2及び3について

 お尋ねについては把握していない。

二の1について

 お尋ねの登録数及び平均待機日数は、平成二十一年十一月二日現在、一万千八百十四名及び二千七百五十一・三日である。

二の2について

 お尋ねについては、臓器提供意思表示カード等の件数を把握する仕組みとなっていないことから、お答えすることは困難である。

二の3について

 厚生労働省としては、一人でも多くの移植を必要とする者に対し国内での移植の機会を提供できるよう、臓器移植に関する普及啓発や提供意思の表示方法の周知等について積極的に取り組んでいるところであり、引き続き適正な移植医療の実施に努めてまいりたい。

三、四、六の2(2)及び十一の3について

 厚生労働省としては、病腎移植については、関係学会から、その医学的、倫理的妥当性に対する否定的見解が示されたこと、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会(以下「臓器移植委員会」という。)において運用指針を改正して迅速に対応する必要がある旨の指摘があったこと等を踏まえ、速やかに対応方針を示すこととし、平成十九年七月十二日の運用指針の改正により、現時点では医学的妥当性がないので、臨床研究として行う以外は、これを行ってはならないこととしたものである。その後、宇和島徳洲会病院における調査委員会報告書が公表されるに至ったが、厚生労働省として総合的に判断した結果、当該運用指針を変更する必要はないと考えたものである。
 また、臓器移植委員会においては、第二十五回会合の終了後に各委員に対して運用指針の改正案を示した結果、了承が得られたものであり、十分な審議が行われたものと考えている。
 また、病腎移植に関する臨床研究の推進については、特段行っていない。

五の1について

 御指摘の見解は、宇和島徳洲会病院等の調査委員会での検討を基礎とするものであるところ、当該委員会には日本病理学会から派遣された委員も加わっていたことから、病理学の専門的知見を反映したものとなっていると考えている。また、日本腎臓学会も御指摘の四学会とともに御指摘の見解に名を連ねており、日本病理学会もこれら五学会に協力的な立場として対応しているものと承知している。

五の2について

 御指摘のような要請がされたか否かについては、確認していない。

六の1について

 日本移植学会が御指摘のように市立宇和島病院において行われた病腎移植症例の予後について統計解析を行ったのは、同病院が同学会に対してその旨の依頼をしたからであると承知している。また、その最終報告書は日本移植学会雑誌「移植」第四十三巻第五号に公表されているとおりである。

六の2(1)について

 御指摘のデータについては確認し、検討を行ったところである。

七の1について

 御指摘の「根治的腎摘出術(全摘出)」が御指摘の「標準治療」に当たるか否かについては、政府としてお答えする立場にない。
 また、お尋ねの部分切除数及び部分切除率については、把握していない。

七の2について

 お尋ねについては、三、四、六の2(2)及び十一の3についてで述べたとおりである。
 また、お尋ねの実施数及び実施割合については、把握していない。

七の3について

 お尋ねの情報については、厚生労働科学研究成果データベースのホームページにおいて、「国外における病腎移植の研究に関する調査」(平成十九年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)の成果として公表しているところである。

八の1について

 御指摘の実態については承知しており、また、お尋ねの実績については一の1についてで述べたとおりである。

八の2について

 お尋ねの実態については、御指摘の教授が病腎移植を行ったことについては承知している。また、関係論文については、「国外における病腎移植の研究に関する調査」(平成十九年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)において収集、検討されたところである。

九の1について

 御指摘の調査報告は、国内外の必要な文献の収集、分析等を踏まえ取りまとめられたものであり、「杜撰」であるとは考えていない。なお、御指摘のような証言については承知していない。

九の2について

 お尋ねについては、「国外における病腎移植の研究に関する調査」(平成十九年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)の対象となった事項の調査は終了しており、その成果については厚生労働科学研究成果データベースのホームページにおいて公表している。

十の1について

 社会保険診療報酬支払基金に確認したところ、御指摘のような事実はなかったとのことである。

十の2について

 厚生労働大臣等は、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十五号。以下「療担規則」という。)に違反する疑いのある事実を把握した場合には、その事実の真偽、違法性等について総合的に検討した上で、必要に応じ、関係する保険医療機関等に対し、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第七十三条等又は第七十八条等の規定に基づく指導又は報告等の徴収(以下「指導等」という。)を行うこととなるが、その完結の日から療担規則第九条の規定による帳簿等の保存期限を経過しているものについては、適正な指導等を行うことが困難であることから指導等の対象とはしていない。御指摘の広島県の事例については、当該保存期限を経過していたため、指導等の対象とはならなかったものである。

十の3について

 御指摘のような請求がされているか否かについては把握していないが、仮にそのような請求が行われた事実が明らかとなった場合には、関係する保険医療機関に対して当該病腎移植に係る診療報酬の返還を求めるとともに、必要に応じて当該保険医療機関の指定の取消しの処分等を行うこととなる。

十の4について

 特殊療法等とは、療担規則第十八条において禁止されている特殊な療法又は新しい療法等をいい、具体的な療法がこれに該当するかは、関係学会の見解を踏まえ、安全性、有効性等の観点から医学的な妥当性がないと判断して、厚生労働大臣が決定する。病腎移植についても、関係学会からその医学的、倫理的妥当性に対する否定的な見解が示されたこと等を踏まえ、これに該当すると決定したものである。

十一の1及び2について

 病腎移植については、現時点では医学的妥当性がない治療法であるが、将来臨床研究等を通じて有効性及び安全性が確立し、医学的に妥当となる可能性が残されていることから、御指摘のような取扱いとしているところである。御指摘の通達は、このような趣旨を入念的に記述し、発出したものである。

十二の1について

 臓器移植の成績向上に関する研究については、平成二十二年度厚生労働科学研究費補助金の免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業の移植医療分野において公募を行っているところであり、申請された課題について必要な評価を行った上で、採択課題を決定することとなる。
 また、移植後に使用される免疫抑制剤等については、御指摘のいずれの場合においても、保険給付の対象としている。
 病腎移植に限らず、新たな医療技術については、日本医学会分科会に属する学会等から保険適用についての御提案を受け、中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織の下に設けられた医療技術評価分科会において検討を行った後に、又は、先進医療として承認され、先進医療専門家会議において検討を行った後に、同協議会において当該医療技術の安全性、有効性等について科学的な根拠に基づく評価を行い、その保険適用の可否について検討を行うこととなる。

十二の2について

 我が国の医療保険制度においては、疾病等に対する有効性、安全性等が確立した治療を保険適用の対象としているところ、病腎移植については、現時点では医学的に妥当性がない治療法であることから、もともと保険適用の対象とはしていないところである。

十三の1について

 御指摘の意見公募手続において提出された意見の数及び内容並びに当該意見の内容を考慮した結果及びその理由については、厚生労働省のホームページにおいて、「「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針」の一部改正に関する意見募集の結果について」として公表している。

十三の2及び十四の2について

 病腎移植については、患者からのものを含め、様々な意見があることは承知しているが、現時点では医学的妥当性がない治療法であることから、臨床研究として行う以外はこれを行ってはならないこととしているところであるが、将来臨床研究を通じて有効性及び安全性が確立し、医学的に妥当となる可能性は残されており、当該研究の推移を見守ってまいりたいと考えている。

十四の1について

 御指摘の見解に対しては、特段の対応はしていない。