質問主意書

第173回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第四七号

内閣参質一七三第四七号
  平成二十一年十二月一日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員加藤修一君提出化学物質に対する管理の強化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加藤修一君提出化学物質に対する管理の強化に関する質問に対する答弁書

一について

 いわゆる化学物質過敏症については、その病態や発症機序について未解明な部分が多く、医学的に確立された定義や診断基準は存在せず、現段階では確立された疾病の概念になっていないと認識しているが、今後とも、関連する知見の集積に努めてまいりたい。
 また、一般に、政府としては、化学物質の適正な管理について、必要な措置を講じてきたところであり、今後とも、人の生命・健康と環境を守る観点に立った総合的な化学物質対策を進めるため、予防的な取組方法の考え方を踏まえながら、化学物質の製造から廃棄までの全体を通じた包括的な管理に取り組んでまいりたい。
 なお、いわゆる化学物質過敏症については、環境省において、その原因や発症機序の解明のため、平成十年度から平成十四年度までの間、シックハウス症候群の原因物質の一つと考えられるホルムアルデヒドの曝露との関連について研究を行ったが、当該研究においては、建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令(昭和四十五年政令第三百四号)第二条第一号に規定する空気環境の調整に関する基準の二分の一以下というごく微量のホルムアルデヒドの曝露と、被験者の症状誘発との間に、関連を見いだすことはできなかった。また、平成十八年度及び平成十九年度に厚生労働科学研究費補助金により実施された研究事業である「シックハウス症候群の実態解明及び具体的対応方策に関する研究」においては、研究班がシックハウス症候群の概念を明確化するため、いわゆる化学物質過敏症に関する文献検索を行った。

二及び三について

 政府としては、化学物質に関する環境保健についての調査・研究等について、国内のみならず、諸外国との知見の共有や連携が重要であると認識しており、研究成果の発信、国内外の研究機関等の連携等、国際的な協力活動を行っている。
 例えば、国内外の研究機関が共同して、化学物質の安全性に関する試験法の開発を行うとともに、当該試験法を経済協力開発機構において国際標準化しているところである。
 また、平成二十一年四月の主要国首脳会議参加国環境大臣会合における合意を受け、環境省として、「子どもの健康と環境に関する全国調査」を、国内の研究機関等の協力の下に、米国政府とも緊密な連携を図りつつ進めていくこととしており、さらに、この調査を、各国の研究機関が連携して行っている小児がん等に係る国際的な取組に参加させる方向で検討している。
 政府としては、今後とも、我が国における化学物質に関する環境保健についての調査・研究等について、国内の研究機関等の協力の下に、諸外国との知見の共有や連携に努めてまいりたい。

四について

 政府としては、研究機関等との連携や調査研究の推進等を通じて、化学物質に関する環境保健の専門家の育成を図っているところである。また、大学においては、環境の保全に係る化学物質の管理、化学物質による健康への影響等に関する教育が行われている例があると承知している。
 また、化学物質に関する科学者・専門家と国民との対話については、様々な主体により実施されていると承知しているが、環境省においては、化学物質に関する情報を中立的な立場で分かりやすく伝える人材の育成及び国民との対話の場への派遣といった取組を推進している。
 政府としては、今後とも、化学物質に関する環境保健の専門家育成等に関する取組を推進してまいりたい。

五について

 政府としては、住宅の室内化学物質濃度の低減に資する技術開発に対して助成を行うなど、化学物質による健康被害の防止に向けて取り組んでいるところである。

六について

 化学物質の生産や管理等については、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十七号)や特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成十一年法律第八十六号)など、化学物質による悪影響を防止すること等を目的とする様々な法制度に基づき、化学物質の用途や特性に応じた異なる管理手法を通じて、関係府省の密接な連携の下、適切な対応を行っているところであり、また、必要な見直しも行ってきたところである。
 政府としては、今後とも、人の生命・健康と環境を守る観点に立った総合的な化学物質対策を進めるため、予防的な取組方法の考え方を踏まえながら、化学物質の製造から廃棄までの全体を通じた包括的な管理に取り組んでまいりたい。