質問主意書

第173回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一〇号

内閣参質一七三第一〇号
  平成二十一年十一月十日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員浜田昌良君提出核の先制不使用論と消極的安全保障政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田昌良君提出核の先制不使用論と消極的安全保障政策に関する質問に対する答弁書

一及び三について

 核兵器のない世界に向けた大きな流れがある中で、核兵器の先制不使用宣言を追求していくことは道義的に正しい方向であると考えるが、核兵器の先制不使用宣言は、すべての核兵器国が検証可能な形で同時に行わなければ有意義ではなく、これを達成するには、まだ時間を要するものと考えている。また、消極的安全保証について、非核兵器国に対して核を使用しないという考え方は基本的に支持し得るものと考えている。その際、当然のことながら、長期的課題である核兵器のない世界の実現を目指すに当たり、我が国の安全保障及び国際的な安全保障を損なうことはあってはならないと考えている。
 国際社会には、核戦力を含む大規模な軍事力が存在し、また、核兵器を始めとする大量破壊兵器等の拡散といった危険が増大するなど、引き続き不透明・不確実な要素が存在する中で、我が国としては、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)を堅持し、その抑止力の下で自国の安全を確保する必要があると考えており、米国が保有する核戦力と通常戦力の総和としての軍事力が、我が国に対する核兵器によるものを含む攻撃を抑止するものと考えている。

二について

 御指摘の決議案に関する今後の国際連合総会における我が国の投票態度については、核保有国及び非核保有国の双方の理解を得つつ現実的な核軍縮措置を漸進的かつ着実に実施していくことを重視する我が国の立場を踏まえ、決定することとなる。

四について

 国際司法裁判所が千九百九十六年七月八日に発表した勧告的意見は、核兵器による威嚇又はその使用は、武力紛争時に適用される国際法の規則、特に人道法の原則と規則に一般的には反するが、国家の存続自体が問題となるような自衛の究極的状況における核兵器による威嚇又はその使用が合法か違法かについて最終的な結論を出すことはできない等と述べているところであり、政府としては、国際連合の主要な司法機関である国際司法裁判所が同意見の中で示した見解について、厳粛に受け止めるべきものと考えている。
 政府としては、かねてから明らかにしてきたとおり、核兵器の使用は、その絶大な破壊力、殺傷力のゆえに、国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないと考えており、人類に多大な惨禍をもたらし得る核兵器が将来二度と使用されるようなことがあってはならず、平和で安全な核兵器のない世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮努力を重ねていくことが重要であると考えている。

五及び六について

 我が国は、平和で安全な核兵器のない世界の一日も早い実現を目指しており、ヒロシマ・ナガサキ議定書、ヒロシマ・ナガサキ宣言及びヒロシマ・ナガサキプロセスとは、核兵器廃絶という目標を共有しているものと考える。政府としては、核兵器廃絶に向けた機運を高めることに貢献する市民社会の取組を評価している。

七について

 平成二十一年四月に中曽根前外務大臣が開催の意向を表明した「二千十年核軍縮会議」の開催時期及び態様については、今後適切に判断したいと考えている。