質問主意書

第173回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九八号

戸別所得補償制度のコメについてのモデル事業の実施等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年十二月三日

山田 俊男   


       参議院議長 江田 五月 殿



   戸別所得補償制度のコメについてのモデル事業の実施等に関する質問主意書

 農家の皆さんは、すでに秋まきの麦の播種を終え、来春の種もみの準備を行っていることもあって、平成二十二年度の戸別所得補償制度のコメについてのモデル事業の実施等について、早急な具体策の明示を求めている。
 これについては、衆参の予算委員会、農林水産委員会等で質疑されたが、時間が制約され政府の考えが十分に示されたとは言えない。そこで、必ずしも明らかにされていない次の項目について取り組みの現状や考え方を示されたい。

一 新しい食料・農業・農村基本計画の策定について

 赤松農林水産大臣は、予算委員会の答弁において、新しい食料・農業・農村基本計画の策定を急ぐとしているが、全ての販売農家を対象とする米戸別所得補償制度モデル事業は、わが国農業の将来を展望してのものなのかどうか疑問がある。
 わが国の気候風土と農地所有の特性を踏まえた日本型ともいうべき経営形態を同基本計画において示した上で、それらの経営体をつくりあげるための戸別所得補償制度にするべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

二 水田利活用自給力向上事業について

 産地確立交付金等、水田への転作作物の助成については、これまで各種加算措置や転作実施の積み上げのなかで、地域が交付金等の範囲内で判断できる柔軟性を持たせてきたが、今回は、水田利活用自給力向上事業として、麦や大豆についても一律の金額にされ、単価も引下げになった。また、地域振興作物についても単価が大きく引き下げられて、地域の取り組みがいかされない事態になっている。
 これまでの取り組みの経緯も踏まえ、麦・大豆や地域振興作物への支援単価を引き上げるなど、予算措置を充実するとともに、地域の自主性がいかされるよう対策を講ずるべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

三 生産数量目標の配分について

 都道府県ごとの生産数量目標の配分が示されたが、市町村ごと、農業者ごとへの生産数量目標の配分について、これまでは地域での取り組みの実績等を勘案して配分されてきた経緯がある。モデル事業では、水田利活用自給力向上の助成金と生産調整の取り組みを連動させないことから、これまでの生産数量目標配分の取り組みとは異なる新しい動きが生じ、混乱を増幅させかねない。
 例えば、これまで生産調整に取り組んでこなかった農業者への配分をどうするのか。また、これまではまじめに生産調整に取り組んできた農業者への加重な配分を見直し、水田面積当たり一律の生産数量目標配分にすべきだとする動き等も予想されるが、これではこれまでの地域の自主的な取り組みを阻害しかねない。
 以上について、政府の見解を示されたい。

四 過剰米対策について

 豊作や生産調整に取り組まない農家による生産数量目標を超える過剰米の現出が引き続き予想されるが、放置すれば米価の低落は間違いないし、農家の不安はもちろんのこと国による米価補てんが膨らみ財源上も問題が生じかねない。豊作分に対処すべく講じている集荷円滑化事業は今後どう扱う考えでいるのか。また、政府による買い入れはどう考えているのか。
 そして、その翌年の生産数量目標の設定や配分をどうするつもりか。まじめに生産調整に取り組む農業者や地域への配分強化にならないのか。
 過剰米の扱いいかんが、コメの安定生産流通の全てを壊すことになることを肝に銘じて対策を検討すべきである。
 以上について、政府の見解を示されたい。

五 集落営農の取り組みについて

 農地の零細分散所有というわが国の水田農業の現状を踏まえたとき、集落営農による農地の利用の集積は大きな意義を持っていることを十分承知していると思う。集落営農への所得補償分の支払いや転作作物に関する助成金は、集落営農組合が指定した口座へ一括して支払われるものと考えているが、そうした理解でよいか。政府の見解を示されたい。

六 水田・畑作経営所得安定対策の扱いについて

 これまでの水田・畑作経営所得安定対策について、平成二十二年度は継続し、麦や大豆等にかかわる「ゲタ」部分の支払いの実施、平成二十一年産米の「ナラシ」部分の対策も講じられると理解しているが、平成二十二年産米の「ナラシ」及びそれ以降の経営所得安定対策の扱いをどう考えているのか。当然、生産者の拠出も廃止となり、そのあり方も見直されることになると理解しているが、政府の見解を示されたい。

七 国家戦略室や財務省からの見直し要請について

 モデル事業の実施内容について、国家戦略室や財務省から農水省に対して見直し要請が来ていると報じられているが、要請内容と農水省の対応の基本的な考え方について示されたい。

八 酪農、畜産、漁業、林業、野菜・果樹対策について

 鳩山総理も代表質問に対して、コメ以外の酪農・畜産・野菜・果樹等に対しても戸別所得補償を行うと答弁しているが、これらの作物や漁業・林業への対策について現在どんな検討を行っているのか、検討にあたっての基本的な考え方と検討状況を示されたい。

九 農協・森林組合・漁協の位置づけについて

 わが国の農林漁業政策の実施にあたっては、これまで農林漁業者の協同組織である農協・森林組合・漁協が大きな役割を果たしてきている。今後の政策の柱となる戸別所得補償制度や直接支払い政策の実施にあたっても同様と考える。
 これらの農林漁業者の協同組織の位置づけについて、政府の見解を示されたい。

  右質問する。