質問主意書

第173回国会(臨時会)

質問主意書


質問第七五号

八ッ場ダムの建設中止等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年十一月三十日

加藤 修一   


       参議院議長 江田 五月 殿



   八ッ場ダムの建設中止等に関する質問主意書

 ある新聞の署名記事に、「マニフェストは独裁者か」と題して、「八ッ場ダム住民のやり場のない憤怒と苦悩に対し、『もう一度議論しませんか』と民主党衆参四百十七名の議員だれ一人手を挙げないのが不思議。つい先頃まで、幸福とか命とか、声の限り叫んでいたというのに。これでは、あたかもマニフェストという名の独裁者がいて、心や感情まで支配されているかのようだ」とあったが、正にその通りであると思う。
 また、元民主党衆議院議員であった埼玉県の上田清司知事は「建設中止を明記した民主党のマニフェストそのものがルールを無視した話。公約にする前に関係自治体と話すべきだった」と痛烈に批判している。
 政府は民主党のマニフェストに則して政権運営を行っていること、更に、政府与党一体であるとの考えに基づいていると言うのであれば、左記の項目について政府の見解を求めるものである。

一 「八ッ場ダム建設中止」決定に至った不誠実な経緯について

 政府・民主党は、マニフェストに公共事業見直しの代表として八ッ場ダムを直接名指しし、建設の中止を明記したが、八ッ場ダムは、建設現場となる長野原町、吾妻町の地元自治体や住民に加え、治水と利水の恩恵を受ける一都五県(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京)は早期完成を求めている。選挙で公約したからといって、地元の関係市町村や関係都県になんら事前にヒアリングをするでもなく、また、事前の説明もなく、更に、検証も無しに問答無用とばかりに「建設中止」を強行することは果たして民主的な手法と言えるのか、強く疑問を感ずる。政府の見解を明らかにされたい。

二 八ッ場ダム建設の是非に関する検証について

 政府・民主党は、八ッ場ダムの件で、マニフェストに明記する以前に、数回地元の意見を聞いたとしているが、地元住民や関係市町村長、関係都県知事などに、民主党の誰が、どこで、何時、誰と会い、どの程度の時間を使い、どの様な意見を聞いたのか、また、八ッ場ダム建設の是非について誰が、何時、誰と、何をどの様に検証したのか、検証した内容とともにヒアリング及び視察の全日程等について明らかにすべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 関係地方自治体が建設継続を強く求めていることについて

 川辺川ダムの場合と異なり、石原東京都知事をはじめ、関係地方自治体や地元住民が現在も建設継続を強く求めていることについて、政府の見解を明らかにされたい。

四 建設中止の白紙撤回について

 民主党マニフェストによる公共事業見直しの「スケープゴート」として、突然降ってわいた八ッ場ダム建設中止に対し、地元住民の不安とやり場のない怒りの声を多くの方々から聞いている。
 五十七年という歳月の中で複雑に入り組んだ住民感情を乗り越えて、残りの人生をダム湖との新しい生活に希望を託した住民の思いは、「まず、何で八ッ場が公共事業削減の象徴なの?」というのが、率直な思いである。
 先日、地元自治体に政府が提示した生活再建策について、地元自治体は極めて否定的である。
 政府・民主党は、国民の生活を守ると言うなら、まず「建設中止」を白紙撤回し、謙虚に地元住民や関係自治体の声に耳を傾け、時間がかかってもしっかりとした検証をするとともに、建設中止の「ルール」を世に問うべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 ダム見直しについて

 国土交通省は、これまで洪水を防御し、水が豊富な時に水を貯めて水不足の時に補給するダムは、わが国の国土条件下では有効な河川整備手法の一つであるとしてきたが、一方、民主党は、ダムの見直しを唱えている。政権交代とともに、河川整備手法におけるダムの有効性について、国の基本的認識はどのように変わることになるのか、政府の見解を明らかにされたい。

六 脱化石燃料とダムについて

 鳩山総理大臣は、前提条件があるとはいえ国連総会において二〇二〇年までに温暖化効果ガス排出量を一九九〇年比で二五%削減するという国際公約をしている。
 ダムの見直し論として、ダムは環境負荷が大きいため不要とされることが多い。しかしながら、ダムによる水力発電は、化石燃料の消費量が極めて少ないクリーン及び再生可能エネルギーとして重要性を増してきていると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。