質問主意書

第173回国会(臨時会)

質問主意書


質問第七三号

温泉地における新エネルギー、省エネルギー技術の積極的な推進に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年十一月三十日

加藤 修一   


       参議院議長 江田 五月 殿



   温泉地における新エネルギー、省エネルギー技術の積極的な推進に関する質問主意書

 我が国には三〇〇〇カ所を超える温泉が存在しており、古くから病気療養、保養などの目的で利用されてきた。その一方で、最近では高温泉や利用済みの温泉の余熱利用といった形で、温泉は資源として注目されるようになってきている。
 地球温暖化対策におけるCO2などの温室効果ガス二五%削減のためには、技術開発が重要な鍵である。既存技術の普及と同時に、革新的な技術開発の促進により、低炭素社会を目指すことは喫緊の課題である。
 環境省及び国土交通省をはじめとする関係省庁には、温泉地の施設整備のみならず、温泉熱の一層の活用や未利用エネルギーの活用に対する支援策が強く求められていることに鑑み、また、温泉地のCO2削減のための事業を強く推進する観点から、以下の項目について質問する。

一 具体的な未利用エネルギーとCO2削減に向けた試みについて

 余剰エネルギーについて、例えば群馬県草津温泉では高温かつ湯量が豊富であることに着目して、温泉水を利用した熱交換によって給湯、暖房、融雪等が大規模に行われている。最近では、熱エネルギーをハウス栽培や養魚等に利用しつつある。
 また、カリーナサイクル発電は、アンモニアと水の混合物による熱交換によってタービンを回すバイナリーサイクル発電方式の一種であるが、その発電効果は、群馬県草津町の約半数にあたる一八〇〇世帯分に相当する年間約一〇四〇万kWhの電力供給が可能であり、売電すれば約一億~一億五〇〇〇万円の収入を見込むことができるといわれている。さらに、発電後の温泉水は、そのまま旅館などへ給湯できる。今まで電気代をかけて湯温を下げていたが、湯温を下げるだけでなく、逆に電気を作り出すことができ、年間約四〇〇〇トンのCO2を削減できる。その他、高温の温泉水を活用し、温度差による熱電変換発電システム事業も草津町で推進されている。
 以上のようなことを踏まえ、資源循環型社会を目指すにあたって、温泉地の余剰エネルギー及び未利用エネルギーの活用について、政府の見解を示されたい。

二 ヒートポンプなどの活用について

 国際エネルギー機関(IEA)の作成した「エネルギー技術展望(ETP二〇〇八)」において、CO2削減に寄与する主要一七技術の一つに、ヒートポンプ技術があげられている。EUにおいては、「再生可能エネルギー推進に関する指令案」が採択され、ヒートポンプによって得られた熱エネルギーが再生可能エネルギーとして取り扱われている。我が国の再生可能エネルギー導入指標においても、ヒートポンプが対象になった。
 北海道洞爺湖温泉の排温水ヒートポンプ事業は、排温水熱を利用するヒートポンプシステムを集中配湯システムに組み合わせることで、年間のCO2削減効果は約一六〇〇トンになり、重油ボイラーからの転換による経費削減効果は約六〇〇〇万円であり、経営的にも大きな効果をあげている。また最近の優秀なヒートポンプは成績係数(COP:Coefficient Of Performance)が五~六になっており、省エネ効果が大きく見込まれ、経営的により一層の効果が期待できる。単純に試算すると、日本の温泉利用の宿泊施設にヒートポンプを導入した場合、日本のCO2排出量の約〇・二六%(年間約三六〇万トン)の削減に貢献することができる。
 このように、温室効果ガス二五%削減という目標に大きく貢献しうるので、ヒートポンプの普及に対する税制、補助等の支援体制について、政府の見解を示されたい。

三 LED技術による照明革命による省エネルギーと経費節減について

 日本のホテル・旅館は約九万施設ある。全施設の照明器具が、現在の照明からLED照明になると、電気使用量は従前の約二〇%になる。CO2の業務部門排出量(六・七%)のうち、ホテル・旅館からの排出量は日本の総排出量の約一%であり、照明に使われる分が仮に二〇%とすると、照明から出る分は、現状で〇・二%である。一三億七四〇〇万トン×〇・〇〇二=約二七五万トンであるが、このうちLED全導入により約二七五万トン×〇・八=約二二〇万トンのCO2が削減され、日本の総排出量の〇・一六%が削減され、電気料は、導入前の八〇%減ることになる。
 従って、エネルギーを多く使用する白熱電灯の生産中止やそれに向けたガイドラインの策定、さらにより高効率のインバーター方式やLED照明の開発などを通して照明革命を起こし、飛躍的に推進すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 ESCO事業やグリーンリース方式の活用について

 以上のように、余剰エネルギーの効果的な導入がますます重要になってくる。成功事例、先進事例の共有が求められている。余剰エネルギーや未利用エネルギーの活用、ヒートポンプ、LED、インバーター方式の機器などの全面的な導入は、一部補助金制度もあるが、ESCO事業やグリーンリース方式が望ましく、不況を乗り越える力にもなる。またリース業者には、政策的に利子補給や債務保証などの支援措置が考えられる。以上のような政策を積極的に推進すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 温泉地における観光戦略について

 二〇〇三年から始まったビジット・ジャパン・キャンペーンでは、二〇一〇年に訪日外国人旅行者数一〇〇〇万人を目指し、関係省庁が取り組んでいるところであるが、この目標達成の見通しはどうか。
 また、観光立国の推進にあたっては温泉観光地の整備、普及、情報発信なども不可欠であると考える。「国土交通省成長戦略会議」に、観光分科会が発足したが、温泉観光地の一層の活性化や発展のために、温暖化対策も含めて十分対応することを強く求めたいが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。