質問主意書

第173回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六九号

「黒い雨」地域の地域指定の拡大に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年十一月二十七日

仁比 聡平   


       参議院議長 江田 五月 殿



   「黒い雨」地域の地域指定の拡大に関する質問主意書

 被爆六四年、「人類と核兵器は共存できない」との被爆者の粘り強い声は、世界の世論を動かし、広島・長崎に次ぐ第三の原爆投下を許さないできた。そして今年四月、オバマ大統領が核兵器を使った唯一の国としての「道義的責任」を認め、「核兵器のない世界」のために行動すると宣言し、その具体化に向けた動きが始まっている。
 時期を同じくして、原爆症認定をめぐる集団訴訟の全面的解決に向けた基本方針を示した確認書が八月六日、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)・集団訴訟原告団・弁護団と政府との間で合意された。原告団が求めていた原告全員の救済を政府側が受け入れた内容であり、六年越しの裁判に解決への道筋がつきつつある。
 こうしたなか、いまだに解決への道筋がついていない「黒い雨」問題の解決は焦眉の課題である。「黒い雨」の被害者も高齢化が進み、健康状態についても深刻な不安が広がっていることを政府は直視すべきである。以下、「黒い雨」問題解決について具体的に質問する。

一 第一種健康診断受診者証交付地域に指定されている「宇田降雨図」(一九四五年九月から一二月にかけて宇田道隆博士と広島管区気象台職員が作成した卵形の降雨図)に対し、降雨図の周辺住民から「実態と大きくかけ離れている」と多くの不満の声が上げられている。以下、具体的な住民の声に対する政府の見解を示されたい。

1 宇田降雨図の小雨地域以外でも、「黒い雨」が降り、被曝による健康被害を訴える住民が大勢いる。こうした住民の声に真摯に耳を傾けることが必要だと思われる。
 どのように考え対応するのか、見解を示されたい。
2 宇田降雨図の大雨地域だけ降雨地域に指定して、小雨地域に交付しないのはなぜか。その科学的根拠を示されたい。

二 平成二〇年に広島市が行った調査項目で、「原爆体験・黒い雨体験の有無、その内容に関する質問」があるが、その結果をどう見るか、見解を示されたい。

三 「黒い雨」地域に指定されていない八幡国民学校や高宮中学校でも急性症状や放射線障害と思われるガンなどによる若年死亡率が、まったく原爆の影響のなかった地域と比較して格段に高い。このことを科学的根拠として指定地域を拡大すべきではないか。

  右質問する。