質問主意書

第173回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三〇号

困窮状況にある結核医療にかかる診療報酬改定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年十一月十一日

浜田 昌良   


       参議院議長 江田 五月 殿



   困窮状況にある結核医療にかかる診療報酬改定に関する質問主意書

 結核は、過去の病気ではなく、平成二十年の新登録結核患者数は二万四千七百六十人と依然としてわが国最大の感染症である。また、最近の結核患者の様相は変化しており、多剤耐性結核患者、高齢等の理由で糖尿病等の合併症対応が必要な患者、住所不定者やホームレスの問題等、高度かつ複雑な医療を必要とする患者が増加しているにもかかわらず、提供している医療に対する診療報酬上の評価が十分になされているとは言いがたい状況にある。
 つまり、日本結核病学会等の調査によれば、結核医療を行っている多くの病院で入院患者一人一日当たり六千円から一万円に及ぶ支出超過となっており、これは病床一床当たりに換算すると年間約二百万円以上の赤字となることを意味している。このような結核医療の困窮状況から、医師・看護師離れが進み、近年、多くの結核病棟が閉鎖又は休止に追い込まれ、山形、山梨、三重、奈良、山口、佐賀、大分の七県では結核患者が入院できる病院が一ヵ所となっている。八十五歳以上の結核患者がこの二十年間で二倍以上となっている中で家族との面会が困難となることは、認知症が悪化する、家族に看取られずに亡くなるといったことに繋がりかねないと懸念されている。もはや、結核病棟の閉鎖を防ぎ、結核医療提供体制を確保・維持することは急務であり、そのためには、診療報酬の適正化は待ったなしの段階に来ていると考えられる。
 そこで、平成二十二年度の診療報酬改定に関して、以下のとおり質問する。

一 結核病棟の入院基本料は看護配置が同じでも平均在院日数要件が異なるため、現在、一般病棟入院基本料より六十八~百四十三点低い評価となっているが、高度かつ複雑な医療を必要とする患者が増加していることに鑑み、これを一般病棟と同等の評価に引き上げることが必要ではないか。また、二類感染症患者入院診療加算(三百点)の対象患者に多剤耐性患者だけではなく、一般結核患者も含めるべきではないか。

二 結核患者の入退院については、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における結核患者の入退院及び就業制限の取扱いについて(平成十九年九月七日健感発第〇九〇七〇〇一号)」に定める基準に基づくこととされているが、現在、結核患者の平均在院日数は七十日前後である。従って、現在の結核病棟入院基本料の平均在院日数要件(十対一及び七対一は二十五日)については実質上意味のないものとなっているため、当該要件を廃止すべきではないか。

三 現在、結核病棟入院基本料を算定する病棟の一看護単位と、一般病棟入院基本料を算定する病棟の一看護単位を一つにする「ユニット化」が可能とされているが、その普及を進めるために、一般病棟入院基本料を算定する病棟以外との組み合わせも可能にすることが必要ではないか。また、当該病棟の平均在院日数及び看護必要度を算出するに当たり、結核患者を除いて算出できることとすべきではないか。

四 結核の入院医療は、感染源隔離の側面から、外来から病棟にかけ院内感染対策を厳重に行う必要があり、病棟ないし病室の陰圧換気やナースステーションの陽圧換気などは運転に係る電気代に加えて、高価なHEPAフィルターを定期的に交換しなければならず、一般病院よりも多額の感染管理の設備経費が不可避なことから陰圧室での感染症管理加算料として入院患者一人一日当たり三百点の新設が必要ではないか。

五 個々の患者へ毎回直接服薬を確認し、退院後の治療完遂を支援する地域連携は、感染源を減らし、罹患率を下げ、多剤耐性菌を作らせないための重要な技術であり、平成十七年四月の結核予防法改正時に、DOTSにおける医師や保健所の責務に対する法的根拠が設けられたところである。このことから結核治療の主体が外来に移り、入院医療費は削減されるものの、反面、治療中断・治療完遂率低下が懸念されるところとなり、難治化・再蔓延防止のため、院内DOTSやDOTSカンファランスの充実を目指した結核地域連携診療計画が極めて重要となっている。このような背景から、結核地域連携診療計画管理料、退院時指導料及び外来DOTS管理指導料の新設が必要ではないか。

  右質問する。