質問主意書

第173回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一九号

薬物依存症の治療・支援体制の整備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年十一月九日

浜田 昌良   


       参議院議長 江田 五月 殿



   薬物依存症の治療・支援体制の整備に関する質問主意書

 我が国の薬物事犯は、覚せい剤事犯の比率が高いという特色を有している(平成二十年の薬物検挙件数の七十六%の約一万五千件、薬物検挙人員の七十七%の約一万一千人)。一方、覚せい剤事犯は、再犯率が他の薬物事犯に比して極めて高く(平成二十年の検挙人員に占める再犯率は、覚せい剤事犯が五十六%、大麻事犯は十五%、合成麻薬事犯は十%)、その再犯防止策が麻薬対策の鍵になっている。また、薬物事犯の検挙人員の年齢層は二十から三十歳代という青年層が大半であり、その依存症の治療・支援体制の整備が、その更生を図る上で不可欠となっている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 我が国においては、薬物依存を「病気」ではなく「犯罪」としてのみとらえる傾向が強く、医療関係者からは薬物乱用防止対策は世界でもトップレベルと評価される一方、依存症からの治療支援は三流以下と言われている現状を政府としてどう評価し、どう改善していく方針か。

二 我が国の薬物依存症対策予算の主要項目別の過去十年間の推移はどのようになっているか。また、今後どのように拡充する方針か。

三 平成十九年の薬物関連相談延べ人員は精神保健福祉センターで約三千人、保健所及び市区町村で約七千人、合計一万人以上となっているが、一方で、アルコール以外の精神作用物質による障害患者の精神科入院数は約千六百名に留まっている。薬物依存症に悩みつつも、医療機関への入院はしていない人々、いわゆる急性期は脱したもののリハビリを続ける人々への医療を含めた支援体制はどのようになっているのか。予算、人員及び医療保険上の扱いの現状と今後の方針について明らかにされたい。特に、その際、民間の依存症リハビリ施設への支援のあり方についてはどのように考えているか。

四 薬物依存症に対しては、単に医療的治療に留まらず、地域における支援活動が重要と考えられるが、一方で地域の保健所では専門的知識を含め十分な支援が受けられないとの苦情も耳にする。精神保健福祉センター、児童相談所、保護司、学校の養護教員等、省庁の壁を越えた受け皿づくりが重要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 四に記した省庁の壁を越えた受け皿づくりの試みとして、平成二十一年度から地域依存症対策モデル事業がスタートしたが、当初予定した十五か所での実施に比し、現状では六か所での実施に留まっている。潜在的ニーズは高いと考えられることから、全省庁が連携してその事業拡大に取り組むべきではないか。

  右質問する。