質問主意書

第173回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇号

核の先制不使用論と消極的安全保障政策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年十月三十日

浜田 昌良   


       参議院議長 江田 五月 殿



   核の先制不使用論と消極的安全保障政策に関する質問主意書

 岡田外務大臣は、雑誌「世界」平成二十一年七月号において、「核保有国、とりわけアメリカが先制不使用を宣言すること、そして核を持たない国に対しての核使用は違法であるという合意の形成を日本として主張していくべきだ」として、核の先制不使用論及び消極的安全保障に踏み込んだ発言を行っている。しかし、鳩山総理は本年九月二十四日の核不拡散・核軍縮に関する安保理首脳会合における演説及び同十月二十六日の所信表明演説においては、核の先制不使用及び消極的安全保障については一言も触れられておらず、鳩山内閣としての核廃絶への具体的方針が明確となっていない。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 鳩山内閣として、核の先制不使用論及び消極的安全保障政策を支持するのか。支持するというのであれば、日米安全保障との関係をどのように整理しているのか。通常兵器による我が国への攻撃は核兵器ではなく、通常兵器だけによる抑止力を期待するという関係で理解しているのか。

二 我が国は一九九四年以降毎年、国連総会に核廃絶決議を提案し、その採択に貢献してきているが、一方、国際司法裁判所の核兵器に対する勧告的意見のフォローアップについての決議(提案国マレーシア)、核兵器使用禁止条約に関する決議(提案国インド)、核軍備縮小撤廃に関する決議(提案国インドネシア)、核兵器条約締結に関する決議(提案国マレーシア)、核の危険の低減に関する決議(提案国インド)等については、棄権をしてきている。我が国が過去三年間において賛成してきていない核廃絶関連決議案について、今後、国連総会で同内容の決議案が提案された場合、鳩山内閣としてこのような投票行動を変更する考えはあるのか、個々の決議案毎にその理由とともに明確に示されたい。

三 本年九月二十四日の核不拡散・核軍縮に関する安保理首脳会合において、中国の胡錦濤国家主席が主張した「核抑止の廃棄」に対して、我が国として支持し得るか。

四 「核抑止によらない安全保障」の実現に向けては、「核兵器は絶対悪」という国際規範の確立が必須と考えるが、鳩山内閣として、核兵器は「絶対悪」と考えるか、「必要悪」と考えるか、見解を明らかにされたい。

五 鳩山内閣として、ヒロシマ・ナガサキ議定書、ヒロシマ・ナガサキ宣言、ヒロシマ・ナガサキプロセスをどのように認識し、評価しているか。

六 世界市民が、対人地雷、クラスター弾といった無差別殺傷兵器の禁止条約を勝ち得たオタワ・プロセス、オスロ・プロセスのように、世界市民が「核兵器は絶対悪」という国際規範の確立にむけて行動する包括的な「ヒロシマ・ナガサキプロセス」に対する鳩山内閣の見解を明らかにされたい。

七 麻生内閣において来年早々に予定していた我が国での核廃絶国際会議は予定どおり開催する意向を持っているのか。そのような意向があるならば、来年五月のNPT再検討会議の前に開催し、世界市民との連帯強化の場とすべきと考えるが、鳩山内閣の認識を明らかにされたい。

  右質問する。