質問主意書

第171回国会(常会)

答弁書


答弁書第一七六号

内閣参質一七一第一七六号
  平成二十一年六月二日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員福島みずほ君提出死刑制度に対する自由権規約委員会の最終見解に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出死刑制度に対する自由権規約委員会の最終見解に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「報告書」の作成に当たっては、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号。以下「自由権規約」という。)において認められる権利の実現のために我が国がとった措置及びこれらの権利の享受についてもたらされた進歩に関する最新の情報を反映させるべく加筆作業を行ったことに加え、関係する府省庁が多岐にわたり、作業も膨大であったことから時間を要したものである。次回の政府報告の提出については、政府として、一層の努力を傾注して、早期提出に努めてまいりたい。

二について

 自由権規約委員会の最終見解は法的拘束力を有するものではないが、いずれにせよ、御指摘の勧告については、その内容の当否等を十分に検討の上、政府として適切に対処していきたいと考えている。

三について

 死刑の存廃は、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等種々の観点から慎重に検討すべき問題であるところ、国民世論の多数が極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人、誘拐殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等にかんがみると、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ず、死刑を廃止することは適当でないと考えている。

四について

 法務大臣は、常に法務省の関係部局に関係記録の内容を十分に精査させた上で、刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等につき、慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に、死刑執行命令を発しているところであり、御指摘の平成二十年十月二十八日の執行について、意図的に最終見解の発表日に合わせようとしたものではない。

五について

 お尋ねの最終見解パラグラフ十八の該当部分の趣旨は、「代替収容施設を廃止するか」、これを廃止しない場合には「規約第十四条に規定される全ての保障の完全な遵守を確保すべきである」と解釈されることから、御指摘のように、「or」を「即ち」又は「換言すれば」と訳出することは適当ではないと考える。

六について

 御指摘の勧告に対するフォローアップの情報の提出については、関係府省庁間で協力の上、期限内の提出に努めてまいりたい。

七について

 自由権規約第六条2は、死刑を廃止していない国においては、法律により、最も重大な犯罪についてのみ科することができると規定しており、我が国において法定刑として死刑が定められている罪は、殺人、強盗致死等、一定の重大な犯罪に限られている。
 政府は、経済社会及び国民生活における船舶航行の安全の確保の重要性並びに海洋法に関する国際連合条約(平成八年条約第六号)の趣旨にかんがみ、海賊行為の処罰及び海賊行為への適切かつ効果的な対処のために必要な事項を定め、海上における公共の安全と秩序の維持を図るために、「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案」を立案・提出したが、同法案第四条では、船舶強取等の一定の海賊行為の罪を犯した者が人を死亡させたときは死刑又は無期懲役に処することとしている。これは、このような行為が我が国において法定刑として死刑が定められている罪と同様に重大な犯罪であると考えられるからである。