質問主意書

第171回国会(常会)

答弁書


答弁書第四二号

内閣参質一七一第四二号
  平成二十一年二月二十日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員前川清成君提出薬害肝炎救済立法に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員前川清成君提出薬害肝炎救済立法に関する質問に対する答弁書

一について

 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法(平成二十年法律第二号。以下「法」という。)は、その前文にあるように、フィブリノゲン製剤及び血液凝固第Ⅸ因子製剤(以下「フィブリノゲン製剤等」という。)によってC型肝炎ウイルスに感染した方々について、人道的な観点から、早急にフィブリノゲン製剤等の投与の時期を問わず一律に救済するために制定された法律であると理解している。
 また、お尋ねの「司法上も行政上も限界がある」とは、C型肝炎ウイルスの感染被害を受けた方々からフィブリノゲン製剤等の製造等を行った企業及び国に対し、損害賠償請求訴訟が提起されたが、平成十八年六月から平成十九年九月までの間に出された五つの地方裁判所の判決においては、企業及び国が責任を負うべき期間等についての判断が分かれ、当時の法制の下で法的責任の存否を争う訴訟による解決を図ろうとすれば、長期間を要することが見込まれたため、フィブリノゲン製剤等の投与の時期を問わない一律救済の要請に応えることには限界があったことを意味するものであると理解している。

二について

 法に基づく給付金の支給を受けることを目的として提起された訴訟であって、法施行後に提起され、訴状が国に送達されたものは、本年二月十三日現在、百四十四件である。係属裁判所別の訴訟件数と原告数の内訳は、東京地方裁判所が二十九件と四百十二人、さいたま地方裁判所川越支部が一件と一人、前橋地方裁判所が一件と一人、新潟地方裁判所が七件と二十三人、新潟地方裁判所長岡支部が一件と一人、大阪地方裁判所が二十九件と四百五人、大阪地方裁判所堺支部が二件と六人、奈良地方裁判所が一件と一人、和歌山地方裁判所が二件と二人、名古屋地方裁判所が十一件と百三十三人、津地方裁判所伊賀支部が一件と一人、金沢地方裁判所が三件と三人、広島地方裁判所が十一件と十三人、岡山地方裁判所が五件と十一人、鳥取地方裁判所が一件と三人、松江地方裁判所が二件と七人、福岡地方裁判所が九件と二百六十二人、仙台地方裁判所が十件と八十三人、福島地方裁判所が一件と一人、福島地方裁判所郡山支部が一件と二人、山形地方裁判所が三件と三人、秋田地方裁判所が一件と一人、札幌地方裁判所が一件と一人、旭川地方裁判所が一件と四人、高松地方裁判所が二件と三人、高松地方裁判所丸亀支部が一件と二人、高松地方裁判所観音寺支部が一件と一人、徳島地方裁判所が一件と一人、高知地方裁判所が三件と三人、松山地方裁判所が二件と十人である。

三について

 現時点で把握している限りでは、二についてで述べた百四十四件の訴訟のうち、フィブリノゲン製剤について、血管に直接注射する通常の使用方法で使用しておらず、かつ、他の医薬品と混合して糊状等にしたもの(以下「フィブリン糊」という。)を組織の接着のために塗布する等の方法で使用したことをうかがわせる証拠が提出されているもの(以下「本件訴訟」という。)の件数と原告数は、係属裁判所別に、東京地方裁判所が十三件と四十八人、新潟地方裁判所が一件と二人、大阪地方裁判所が十二件と三十一人、大阪地方裁判所堺支部が二件と六人、奈良地方裁判所が一件と一人、名古屋地方裁判所が六件と十九人、金沢地方裁判所が一件と一人、広島地方裁判所が二件と二人、岡山地方裁判所が一件と二人、福岡地方裁判所が八件と三十六人、仙台地方裁判所が二件と二人、山形地方裁判所が一件と一人、秋田地方裁判所が一件と一人、旭川地方裁判所が一件と一人、高松地方裁判所丸亀支部が一件と二人、高知地方裁判所が一件と一人、松山地方裁判所が一件と五人である。

四について

 本件訴訟のうち、最も早く提起されたものは、平成二十年二月十五日に、奈良地方裁判所で提起されたものである。

五及び六について

 本件訴訟の全件について和解を留保しているわけではない。また、留保をしているものについては、平成十八年六月から平成十九年九月までの間に出された五つの地方裁判所の判決にはフィブリン糊の使用に係る事案が無く、また、フィブリン糊の使用によるC型肝炎ウイルスの感染についての科学的な知見が乏しいため、現時点では、フィブリン糊の使用とC型肝炎ウイルスの感染との因果関係が明らかではないからである。

七について

 お尋ねの釈明については、当該訴訟は非公開の手続として行われていることから、その詳細についてお答えすることは差し控えたいが、その概要としては、フィブリノゲン製剤がフィブリン糊として用いられた場合のC型肝炎ウイルスの感染力について裏付けとなる資料の立証を各当事者が求められたものである。国としては、これを受けて、現在、科学的な立証のための調査検討を進めているところであり、平成二十年度末には、裁判所に対してその進行状況を報告したいと考えている。