質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇三号

合衆国軍隊構成員等の犯罪に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年六月十日

糸数 慶子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   合衆国軍隊構成員等の犯罪に関する質問主意書

 情報公開法によって法務省が公開した二〇〇一(平成十三)年分から二〇〇八(平成二十)年分までの検察統計資料「合衆国軍隊構成員等犯罪事件人員調」(以下、「法務省検察統計」という。)によると、日本に駐留するアメリカ合衆国軍隊の軍人、軍属等の引き起こす犯罪のほとんどが不起訴となっている。民間団体等のまとめによると、二〇〇一年分では起訴された人員が五十三人に対し、不起訴は三百十七人で、不起訴率は八五・六〇%、二〇〇八年分では起訴三十九人、不起訴三百七十二人で、不起訴率は九〇・五〇%となり、不起訴率の平均は八三・一〇%に上っている。法務省検察統計を罪名別にみると、その大半は「自動車等による業務上(重)過失致死傷」(刑法犯)と「道路交通法違反」(特別法犯)によって占められている。両罪名については、米軍人、軍属等の引き起こす軽微な交通違反(反則金納付による違反免除、通常反則キップ又は青キップと呼ぶ。)による件数を挙げているのではなく、酒気帯び運転等の重度の交通違反(通常交通キップ又は赤キップと呼ぶ。)を犯し、刑事処分に科せられるべきだとして検察庁に送致された件数であり、人身事故等においては懲役や禁固刑及び罰金刑の刑事処分、免許取り消し等の行政処分、被害者への損害賠償を行う民事処分の責任を問われることからして検察側の不起訴には納得できない。そのうえ、反則金の納付や罰金の納付状況も明らかにされていない。法務省検察統計を基に、以下質問する。

一 法務省検察統計の罪名「自動車等による業務上(重)過失致死傷」と「道路交通法違反」において、その受理件数の大半を不起訴として処理しているが、不起訴とした理由を明らかにしたうえで、政府の見解を示されたい。

二 右記の両罪名における主な事故原因を明らかにされたい。具体的には、酒気帯び運転等、無免許運転、酒気帯び運転同乗罪、速度超過等を指す。

三 右記の両罪名において現行犯逮捕の有無を明らかにされたい。現行犯逮捕のケースでは、その犯罪件数と発生日時、犯罪要件等を明らかにされたい。

四 右記の両罪名による起訴においては、ほとんどを「略式命令請求」として処理しているが、その理由を明らかにしたうえで、政府の見解を示されたい。

五 「略式命令請求」として処理した場合、一般的には被疑者が交通裁判所において罰金を支払うことと理解される。法務省検察統計に示された「略式命令請求」として処理され、納付された罰金の総額等を明らかにすることは、罰金が国庫に帰属することとなる観点から極めて重要と考える。よって、法務省検察統計に示された「略式命令請求」の件数に則した罰金額の総額と、納付された件数及び納付総額をそれぞれの年(二〇〇一年から二〇〇八年)分ごとに示し、併せて納付率も明らかにされたい。

六 罰金が支払われない場合の措置について明らかにされたい。

七 反則キップ(青キップ)と交通キップ(赤キップ)には刑事処分の他、行政処分も科せられるが、米軍人、軍属等には行政処分が及ぶのか、及ばないのであれば、その法的根拠を明らかにされたい。

八 両罪名における不起訴の内訳をみると「起訴猶予」と「第一次裁判権なし」によって占められている。特に「道路交通法違反」における二〇〇八年分では「第一次裁判権なし」六十五件のうち、六十五件とも公務と認められての「裁判権なし」による不起訴である。この公務は日米地位協定の第十七条3(a)(ⅱ)に関する日米地位協定合意議事録を根拠としての「公務証明書」の発行による不起訴と思料される。検察庁に提出された「公務証明書」の件数をそれぞれの年(二〇〇一年から二〇〇八年)分ごとに明らかにされたい。

九 両罪名における送致の区分けのうち、「他検察庁に」として処理された件数もかなりの数に上っているが、「他検察庁に」とは、どのような内容を指すのか、具体的に明らかにされたい。

十 米軍人、軍属が道路交通法違反の犯罪に対し、真摯に対処しているかどうかを知るうえで反則キップ(青キップ)の件数等を明らかにすることは重要だと考える。よって、沖縄県内における反則キップ(青キップ)と交通キップ(赤キップ)の件数をそれぞれの年(二〇〇一年から二〇〇八年)分ごとに明らかにし、年分の反則キップによる反則金の総額と交通キップによる罰金額の総額を算出したうえで、さらにそれぞれの納められた件数と総額を示し、納付率を明らかにされたい。

十一 両罪名においては当事者間の損害賠償(民事)も提起されると思料するが、日米地位協定に基づき日本政府が賠償(見舞金を含む。)に応じた件数を明らかにされたい。具体的には犯罪の発生日時、場所、事故内容(死傷者の有無)、罪名、賠償額を明らかにされたい。

  右質問する。