質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一八七号

公的年金制度における既裁定者の年金水準に関わる「八割ルール」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年五月二十九日

辻 泰弘   


       参議院議長 江田 五月 殿



   公的年金制度における既裁定者の年金水準に関わる「八割ルール」に関する質問主意書

 政府は、公的年金制度の既裁定者に対する基礎年金・厚生年金の給付額を、賃金スライドによることなく、物価スライドによって改定することとした平成十二年の年金制度改正にあたって、そのことにより、将来、発生することが不可避となる新規裁定者と既裁定者の年金水準の乖離幅が二割を上回る場合には、既裁定者の年金についても賃金スライドによる改定を行う方針(「八割ルール」)を国会審議において明らかにしている。
 この方針については、平成十六年の年金制度改正の際に、当時の坂口厚生労働大臣が、「既裁定者の物価スライドに関わる『八割ルール』は今後も堅持する」旨の答弁を行うとともに、文書での明示を求めた厚生労働委員会質疑における私の要求に応えて作成された平成十六年六月一日付けの「既裁定者の年金水準について」(厚生労働省年金局)と題する文書において、「平成十六年の年金制度改正においては、新規裁定者と既裁定者の年金水準の乖離幅を二割にとどめることを前提として財政再計算を行っている」ことを示しつつ、「将来において実際に新規裁定者と既裁定者の年金水準の乖離幅が二割を上回る可能性が出てきた場合には、その時点における社会経済情勢を踏まえ、この乖離幅が二割となるよう、既裁定者の年金について賃金スライドを基本とした改定を行うための必要な措置を講じる方針である」と明言したところである。
 しかしながら、今回の平成二十一年財政検証においては、この「八割ルール」についての言及が全く見られず、「財政の現況及び見通し」の作成において「八割ルール」が適用されたか否か自体も不明であり、平成十六年改正時において将来にわたっての堅持が公約されていた「八割ルール」を今後どうするのかについての政府の見解が全く示されていない。「八割ルール」の採否は、将来、国民が受給する年金額、即ち、国民生活そのものに大きく関わるものであり、政府としての確固たる方針が国民の前に常に明示されていなければならない。
 かかる見地から、以下質問する。

一 平成二十一年財政検証における将来推計にあたっては、既裁定者の年金水準に関わる「八割ルール」を適用したのか否か。

二 一において「八割ルール」を適用していた場合には、その適用が、適用しなかった場合と比べて、平成二十一年財政検証の結果にいかなる影響を及ぼしたのか、具体的に詳述されたい。

三 今後の財政検証の際には、結果の提示・公表にあたって、「八割ルール」の適用についての言及があってしかるべきものと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 「八割ルール」を将来にわたって堅持していくのか否か、政府の基本方針を明示されたい。

五 「八割ルール」は、年金制度の基本に関わる重要方針であり、単に国会答弁や国会提出資料で示せば事足れりとする性格のものではない。速やかに法改正を行い、法律に明記すべきものと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。