質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一七一号

建設業退職金共済制度に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年五月二十一日

加賀谷 健   


       参議院議長 江田 五月 殿



   建設業退職金共済制度に関する質問主意書

 建設業退職金共済制度は建設現場で働く日雇い労働者の雇用と生活を守るため、中小企業退職金共済法に基づき国によって作られた退職金制度と理解している。しかし、独立行政法人勤労者退職金共済機構建設業退職金共済事業本部(以下「建退共」という。)は膨大な剰余金を留保する一方、建設会社による共済証紙購入費の目的外使用や、四十一万人にも及ぶ退職金未払いの可能性など、その運用の問題点がたびたび指摘されている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 建退共のホームページに掲載されている資産運用残高及び利回り状況(建退共・給付経理)によると、資産額は機構設立の平成十五年以降、概ね横ばいで平成十九年度末は八千七百二十三億九千三百万円となっている。この額は、建退共として適正と考えるか。適正とすればその根拠を併せて示されたい。

二 平成二十年度末の資産総額見込み額はいくらか。また見込み額が提示されない場合、前年度末と比べ増額、減額どちらになるか示されたい。

三 建退共給付経理における利益剰余金については、平成十九年十一月十五日の衆議院総務委員会でも剰余金の額の大きさが問題として指摘されている。政府の答弁では、平成十八年度末は八百二十一億円で、厚生労働省ホームページによると平成十九年度末は七百六億円となっている。平成二十年度末の決算は本年六月末までに厚生労働省に提出されると承知しているが、その見込み額を示されたい。また見込み額が提示できない場合、平成十九年度末と比較し、増額となるのか、減額となるのか見通しを示されたい。

四 利益剰余金のあるべき姿に関しては、労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会等で検討されていると聞いているが、前述の衆議院総務委員会での質疑以降、これまでどのような検討がされ、どのような結論が出たのか、部会の開催日ごとに示されたい。また、結論が出ていないとすればいつ頃結論を出すのか。

五 建退共のホームページによると「共済契約者である事業主が共済手帳の交付の手続きを取っていないということであれば、事業主(共済契約者)を指導します」としている。直近五年間の指導件数を年または年度ごとに示されたい。

六 平成十年七月六日付けの読売新聞大阪版は「ゼネコン、証紙代流用の疑い 建設労働者の退職金共済券配布確認十一% 大阪」の見出しで、大阪府や大阪市の調査で共済証紙購入費相当額として工事請負費に計上された三億六千万円のうち、実際に労働者に証紙が渡ったのは一一%の三千九百万円だけだったとし、「労働省は『問題が大きい』として所管の特殊法人を通じ、全国規模の実態調査をする」と報じている。政府は当時、この報道を受けて実際に全国規模の調査を実施したのか。調査していればその概要を、調査していなければその理由を示されたい。また、このようなゼネコンによる着服の現状はどのようになっているのか。根絶されているというのであれば、何を根拠にそのようなことが言えるのか。

七 建退共と業務委託先とはオンライン化されており、リアルタイムで共済契約者管理データを把握できるシステムが確立されていると聞いている。このシステムの初期投資額と年ごとのランニングコスト、システムの納入メーカーを明らかにされたい。

八 平成十九年十月二十四日の衆議院厚生労働委員会で、建設現場労働者の退職金が四十一万人分未払いとなっている可能性があることが明らかになり、舛添厚生労働大臣は「実態調査を今、一生懸命やらせていますけれども、今のような事情があって大変難しい。ただ、今後とも努力はするというふうに申し上げておきたいと思います」と調査への取り組みを約束している。その後、未払い分の正確な実態は把握できたのか。できたとすれば、その結果を明らかにされたい。また、調査が終了していないとすればなぜ時間がかかっているか、今日までどのような調査を行い、いつまでに実態を把握し明らかにできるのか示されたい。さらに、前述の共済契約者管理データシステムをこの調査に活用すれば速やかに実態が把握できるのではないかと思慮するが、なぜそうならないのか。

九 掛金の納付の月数が二十四カ月以上で、かつ、過去三年間以上手帳の更新実績がない被共済者の最新の人数を示されたい。

十 厚生労働省独立行政法人評価委員会が平成二十年八月二十七日付けで発表した「独立行政法人勤労者退職金共済機構の中期目標期間の業務実績の最終評価結果」によると、前述システムを活用し共済手帳の更新を二年間行っていない共済契約者に対し要請文書を送付し、さらに「履行の意思有り」と回答した共済契約者のうち二年後においても履行の改善がみられない共済契約者に対し再度要請文を送付しているとされている。再要請件数は十八年度三千五十二件、十九年度千四百五十六件とされているが、再要請をした共済契約者のその後の履行状況はどのようになっているのか。また、それでも履行されていない共済契約者に対し、どのような取り組みをしているのか。さらに、要請文を送付したうち、「履行の意思なし」等と回答した件数は平成十六年度以降平成十九年度まで各々何件か。その共済契約者に対してはどのような働きかけをし、どのような成果があったのかそれぞれ明らかにされたい。

十一 平成十四年十一月五日付けで厚生労働大臣から総務大臣あてに出された「特殊法人に関する行政評価・監視の結果(勧告)に基づく改善措置状況について(回答)」によると、共済証紙による掛金納付方式の見直し策としてICカードや磁気カードを活用した口座引き落とし方式など検証を行っている、としている。しかし、前述「独立行政法人勤労者退職金共済機構の中期目標期間の業務実績の最終評価結果」では「新方式の導入は時期尚早」とし、「制度の適正な履行に全力を挙げて取り組む」としている。新方式のモニター実験には総額でいくらかかったのか。この経費は結局全くの無駄になったということか。また、なぜ「時期尚早」だったのか、「制度の適正な履行に全力を挙げて取り組む」ため、具体的にどのような対応をしているのか。

十二 共済手帳への共済証紙の未貼付について、掛金収納額(累計)と共済手帳への共済証紙貼付の確認額(累計)との差額は、平成十八年度末で千二百八十二億円と承知しているが、最新の額はいくらか。

  右質問する。