質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一三九号

国土交通省の公用車運行業務に対する労働者派遣法違反による是正指導に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年四月十七日

大久保 勉   


       参議院議長 江田 五月 殿



   国土交通省の公用車運行業務に対する労働者派遣法違反による是正指導に関する質問主意書

 国土交通省の公用車運行業務に関して、本年二月二十三日に広島労働局が広島国道事務所に対し、また三月三十日には福岡労働局が遠賀川河川事務所及び同事務所管内の三出張所に対し、労働者派遣法に違反している疑いで是正指導を行った(以下、「広島・福岡案件」という)。広島国道事務所、遠賀川河川事務所及び同事務所管内の三出張所は、公用車の運行に関して民間会社と請負契約を結んでいたが、国土交通省職員が民間会社に対して、業務執行に関する指示などを直接行っていたという、いわゆる偽装請負の疑いがあったためである。
 広島・福岡案件について、派遣法の適正な運用という観点のみからは、評価できよう。しかし、問題の本質的な解決に資するかという観点からは、大いに疑問が残るところである。是正指導を受けた国土交通省は、適切な請負にしていく旨を表明しているが、突発的な出来事に対して機動的な対応が求められる公用車運行業務の現実に即した策であるとは考えにくい。そもそも、公用車運行業務が請負契約、ひいては外部との契約になじむかという根本的な検討が必要であり、それなしでは是正指導も画餅に帰す可能性が高い。
 また、国土交通省の公用車運行業務に関しては、極めて高い落札率など、独占禁止法違反の談合が行われた疑いで、昨年に公正取引委員会の調査を受けている。その後、契約形態の見直し等に伴い、今年度では一見して談合が疑われる状態は解消された。しかし、前年度の契約終了に伴い、多数の車両管理員が事実上解雇されるという、看過できない状況も発生している。そのなかに、広島・福岡案件において労働者派遣法違反の状態を告発した車両管理員が含まれることは、いっそう重要である。契約終了を奇貨として、申告した車両管理員を解雇することで、報復の意図を隠ぺいしかねないからである。
 労働者派遣法違反の状況は、もとより許容できない。また、広島・福岡案件で言えば、労働者派遣法違反の状態が解消されることにより、国土交通省及び国土交通省と契約していた会社がある程度の不利益を被ることはやむをえないであろう。しかし、そのことで会社の意思決定に携わってこなかった車両管理員に不利益が及んだり、国土交通省の本来業務に支障が発生したりすることは、避けなければならないと考える。とりわけ、違法状態の是正に向けて当局へ申告を行った車両管理員が、直接、間接を問わずそのことを理由にして、もしくは名目は別の理由であるが申告を行ったことが真の理由の一つであると疑わせる状況で、解雇を含む不利益を被ることは、違法状態の解消を目的とした申告を結果として萎縮させる効果があることから、本事案を超えて労働者派遣法全体の観点からも許容されるものではない。すなわち、労働者派遣法違反の是正指導においては、是正指導そのものと並び、事後における処置も重要であると考える。
 右記の理由により、以下の質問をする。

一 政府が、労働者派遣法違反を取り締まる立場にあることは論をまたない。その政府の一員である国土交通省が、労働者派遣法違反で是正指導を受けたことは、民間会社に対する是正指導よりもその責任は重いと考えるが、政府の見解を示されたい。あわせて、広島・福岡案件に関して、国土交通省においてどのような処分が行われたかについても明らかにされたい。

二 平成十八年九月四日に厚生労働省労働基準局長及び同省職業安定局長から各都道府県労働局長宛に出された「偽装請負の解消に向けた当面の取組について」(基発第〇九〇四〇〇一号及び職発第〇九〇四〇〇一号)では、「偽装請負の効果的、効率的な是正、解消を図るため、一の偽装請負を把握した場合の指導においては、当該偽装請負に係る請負事業主、発注者等に対し、全事業所を対象として自ら点検を行うよう求めるものとする」とある。この通知の内容は現在でも有効か、明らかにされたい。

三 前項で有効であると回答する場合、広島・福岡案件が発生したのであるから、国土交通省本省及び全地方部局に対して自ら点検を行うよう求めるのが適当と考えるが、それを求めたかどうか明らかにされたい。なお、求めたと回答する場合は、求めた文書等の標題、発信期日及び回答期限を明らかにしたうえで、どのような点検を求めたかについて、その内容も明らかにされたい。さらに、国土交通省自らの点検に対して、経過報告の要求や最終報告の審査等、厚生労働省の今後の対応についても、あわせて明らかにされたい。

四 「一の偽装請負を把握した場合の偽装請負に係る請負事業主、発注者等」に対し、全事業所を対象として、各都道府県労働局が一斉に立入検査及び是正指導を行うことは可能か、明らかにされたい。なお、現在のところ可能でない場合、法令もしくは各都道府県労働局長宛通知等で可能にすることを検討しているか、明らかにされたい。

五 過去三年間において、いわゆる偽装請負に対する立入検査及び是正指導は何件行われたか、明らかにされたい。また、そのうち労働者からの申告によるものは何件か、あわせて明らかにされたい。

六 前項における労働者からの申告による立入検査もしくは是正指導が行われた場合の、申告した労働者の労働条件の変化等の追跡調査は行っているか、明らかにされたい。なお、行っているとすれば、その調査の概要もあわせて明らかにされたい。なお、広島・福岡案件に関して追跡調査を行っているとすれば、その調査の結果について詳細を明らかにされたい。

七 広島・福岡案件に関する対策として、請負契約を厳守して偽装請負の状態にならないよう努める旨を国土交通省は表明している。しかし、このような対策では、国道における陥没状態を発見したにも関わらず停車して検分することが出来なくなる等、不具合を放置せざるを得ない状況も想起される。違法状態の解消は当然ながら重要ではあるが、国土交通省の本来業務に支障が出る可能性が予測されるわけであるから、車両管理員を国家公務員として雇用する等、請負契約の遵守という形式上の対策とは別の方法をとるべきとの意見もあるが、政府の見解を示されたい。なお、昭和五十八年の閣議決定等を理由として右記の意見を採用することが出来ないと回答する場合は、その回答は請負契約の遵守によって国土交通省の本来業務に支障が出る可能性を全く想定していないことと同義であるとの反論が寄せられようが、この反論に対する政府の見解もあわせて示されたい。

  右質問する。