質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一三四号

国民健康保険料(税)の賦課徴収に当たって予定収納率を考慮した賦課総額の設定を求めている国民健康保険課長通知に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年四月十六日

辻 泰弘   


       参議院議長 江田 五月 殿



   国民健康保険料(税)の賦課徴収に当たって予定収納率を考慮した賦課総額の設定を求めている国民健康保険課長通知に関する質問主意書

 厚生労働省は毎年度、各都道府県民生主管部(局)長あてに、国民健康保険に関する予算編成についての通知文(平成二十一年度予算編成については、「平成二十一年度国民健康保険の保険者等の予算編成に当たっての留意事項について」(平成二十年十二月二十五日付け保国発第一二二五〇〇一号厚生労働省保険局国民健康保険課長通知)(以下「本通知」という。))を発出し、国民健康保険料(税)の賦課総額について、見込まれる費用から収入を控除した額を、予定収納率で除して得た額であるとし、実行可能な予定収納率を設定するよう要請している。
 これに関しては、最高裁平成十八年三月一日大法廷判決において、国民健康保険税については租税法律(条例)主義を定めた憲法八十四条が適用され、国民健康保険料については憲法八十四条の趣旨が適用されることが示されている。また、仙台高裁秋田支部昭和五十七年七月二十三日判決(以下「秋田市国保税訴訟判決」という。)は、国民健康保険税について定めた条例に関し、「地方公共団体による地方税の賦課徴収については、住民の代表たる議会の制定した条例に基づかずに租税を賦課徴収することはできないという租税(地方税)条例主義が要請されるというべきであって、この意味で、憲法八十四条にいう「法律」には地方税についての条例を含むものと解すべき」であるとし、「租税法律(条例)主義は、行政権の恣意的課税を排するという目的からして、当然に、課税要件のすべてと租税の賦課徴収手続は、法律(条例)によって規定されなければならないという課税要件法定(条例)主義」を内包するが、例外的に、「恣意的課税を許さないという租税法律(条例)主義の基本精神を没却するものではないと認められる場合には、課税要件に関して不確定概念を用いることが許容される余地があるというべきである」と示した上で、予定収納率を考慮して賦課総額を定めることについては、「過去の収納実績を考慮するといっても、それをどのように考慮するかは、その飛躍的向上を目ざして高く見込むか、確実なところで過去の最低値を見込むかというような政策的判断が介在する」ものであるとしている。
 このような経緯を踏まえ、以下質問する。

一 過去五年間における、都道府県ごとの市町村国保の保険料(税)の賦課総額を示されたい。

二 過去五年間における、都道府県ごとの市町村国保の保険料(税)の収納率を示されたい。

三 過去五年間における、市町村が設定した予定収納率の都道府県ごとの平均値を示されたい。

四 過去五年間において政府が講じた、市町村国保の保険料(税)の収納率向上に向けた具体策を示されたい。

五 政府は市町村国保の保険料(税)の予定収納率の現状をどのように評価しているのか。また、今後のあるべき姿についてどのように考えているのか、政府の見解を示されたい。

六 保険料(税)の未収分については、ルールに則して保険料(税)を納めている真面目な被保険者に未収分を転嫁することとなる予定収納率を考慮した賦課総額の設定により充当するのではなく、別途予算措置等を行うことにより充当すべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

七 保険料(税)の未収が発生することを当然の前提として、予定収納率を考慮した賦課総額を定める対応は、保険料(税)を納めている被保険者に未収分を転嫁し充当することとなるため、市町村の収納対策に対する意欲を阻害するものとなっているのではないかとの指摘があるが、これに対する政府の見解を示されたい。

八 本通知は、保険料(税)の未収分について、秋田市国保税訴訟判決において「恣意的課税を許さないという租税法律(条例)主義の基本精神を没却するものではないと認められる場合」の課税要件に関する「不確定概念」として「許容される余地がある」とされた「許容される余地」に当たるものと考えているのか、政府の見解を示されたい。

九 本通知により、予定収納率を考慮して賦課総額を定めるよう要請することは、秋田市国保税訴訟判決が「地方公共団体による地方税の賦課徴収については、住民の代表たる議会の制定した条例に基づかずに租税を賦課徴収することはできないという租税(地方税)条例主義が要請される」と示す憲法八十四条の趣旨に反し違憲のおそれがあるのではないかと考えるが、これに対する政府の見解を示されたい。

十 今後、予定収納率を考慮して賦課総額を定めるよう要請することについて見直す考えはないか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。