質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一一五号

独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が会計検査で指摘された過払い額を減額して返還させたことに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年四月三日

足立 信也   


       参議院議長 江田 五月 殿



   独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が会計検査で指摘された過払い額を減額して返還させたことに関する質問主意書

 平成十八年度及び平成十九年度の会計検査において、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構(以下「機構」という。)が各都道府県にある雇用協会等(以下「協会」という。)に委託した事業で不正が見つかり、二億二千八十七万三千九百五十六円の委託費の過払いが指摘された。しかし、機構は会計検査院が指摘した額のうち、五千八百五十九万五千六百六十六円を「返還の必要なし」と自ら判断し、残りの一億六千二百二十七万八千二百九十円のみを返還させた。
 返還を免除したものは、いわゆる「預け」という手法で行われた不正行為に係わるものが大半である。業者に架空請求を行わせて代金を支払い、納品されたかのように偽装して経理処理を行い、後日、業者から別途、契約とは異なる物品などを受けとるというものである。返還を免除した理由を機構は「結果として、委託した事業に使用される物品を購入していたから」としている。
 「預け」行為によって購入していた物品が本当に委託事業に必要なものであったかどうかは別途詳細な調査が必要と考えているが、当主意書では触れない。もし仮に購入した物品が委託事業に使用するものであったとしても、会計検査院の指摘に反してまで、「預け」行為が不正・不当な行為にあたらず返還の必要がないと判断したことが妥当であったかという点について、以下、質問する。
 なお、このたび不正行為が指摘された委託事業は、機構が「運営交付金」を使って裁量をもって行うものではなく、労働保険特別会計の資金によって行われる雇用安定事業及び各事業主から徴収する障害者雇用納付金により行われる事業であることを踏まえ、政府においては誠実に答弁されたい。

一 本来、何らかの事情で当該年度の予算を次年度に使いたいのであれば、不用額として計上したうえで次年度の委託額への上乗せを要求するか、経理処理上可能であれば繰越手続きをすべきである。そのような適正な手続きを踏まずに、経理書類を偽造し委託元である機構に対し虚偽の報告を行うという重大な背信行為を行った協会は、明確に委託契約に違反しており、同契約第十三条に基づき委託費の返還を求めるのが公的な法人として妥当な判断ではないか。「返還の必要なし」という機構の判断は社会常識と著しく乖離していると思われるが、機構の主務大臣である厚生労働大臣はどのように考えているのか、回答願いたい。

二 特別会計に関する法律第九十七条には「労働保険特別会計は厚生労働大臣が管理する」旨定められている。そして雇用保険法第二条には「雇用保険は、政府が管掌する」と定められ、同法第六十二条には「政府は雇用安定事業の一部を機構に行わせるものとする」旨定められている。また、障害者雇用促進法第四十九条には「厚生労働大臣は障害者雇用納付金による業務を行う」旨定められ、同条第二項において「厚生労働大臣は同業務を機構に行わせるものとする」旨定められている。つまり、このたびの不正は、本来は国が行うべきことを法律に基づき機構に行わせている事業においておきたものであり、国の予算を直接執行しているのであれば財政法の適用を受け、同法第十二条に定められた「会計年度独立の原則」に反することとなる。このたびの返還免除は、国から事業を任せられている立場の機構が自ら法に違反した状態を許し、是正の必要性さえ否定している形となる。この観点からみても返還免除は不適切であり返還を求めるべきと考えるが、労働保険特別会計の管理及び障害者雇用納付金による業務の実施の義務を負う厚生労働大臣の考えに加え、財政法を所管する財務大臣及び雇用安定事業の実施義務をもつ政府の長としての内閣総理大臣の考えを示されたい。

  右質問する。