質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第七〇号

障害者基本法改正における中央障害者施策推進協議会に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年二月二十六日

谷 博之   


       参議院議長 江田 五月 殿



   障害者基本法改正における中央障害者施策推進協議会に関する質問主意書

 障害者基本法は二〇〇四年改正の際、施行後五年目の見直しが附則により規定されており、今年はその年に当たる。この規定を踏まえ、政府は障害者施策推進本部の下に設置した障害者施策推進課長会議において、昨年六月から、同年五月に発効した障害者の権利に関する条約(仮称)(以下、「障害者権利条約」という。)の締結に当たって必要と考えられる改正事項を検討し、同年十二月に同課長会議が取りまとめた「障害者施策の在り方についての検討結果について」(以下、「検討結果」という。)の中で八項目として公表した。
 八項目の中では、中央障害者施策推進協議会(以下、「中障協」という。)に関する改正事項として、「障害者施策に関する調査審議、意見具申及び施策の実施状況の監視等の所掌事務を追加する」(検討結果3.(7))と「関係行政機関に対する資料提出等の協力の要請ができることとする」(検討結果3.(8))の二つが示されている。この内容と、この内容に関係すると思われる障害者権利条約の条文(第三十三条「国内における実施及び監視」)との整合性が不明なため、以下、質問する。

一 障害者権利条約の第三十三条第二項は「締約国は、自国の法律上及び行政上の制度に従い、この条約の実施を促進し、保護し、及び監視するための枠組み(適当な場合には、一又は二以上の独立した仕組みを含む。)を自国内において維持し、強化し、指定し、又は設置する。締約国は、このような仕組みを指定し、又は設置する場合には、人権の保護及び促進のための国内機構の地位及び役割に関する原則を考慮に入れる」(外務省仮訳)とある。
 ここでいう「国内機構の地位に関する原則」とは、一九九三年十二月に国連総会で決議された、いわゆるパリ原則のことであり、その原則2には、「国内機構には、できるだけ広範な任務が与えられるものとし、その任務は、機構の構成及び権限の範囲を定める憲法又は法律に明確に規定されるものとする」と明記(外務省ホームページより。以下同じ。)されている。
 検討結果3.(7)でいうところの中障協の「所掌事務」は、このパリ原則2でいうところの国内機構の「権限」と比べて極めて弱い位置づけではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。もし違う点があるとすれば、それは何か。

二 パリ原則3には、「国内機構は、特に、次の責務を有するものとする」とあり、続いて「政府、議会及び権限を有する他のすべての機関に対し、人権の促進及び擁護に関するすべての事項について、関係当局の要請に応じ、又は、上位機関に照会せずに問題を審理する権限の行使を通じて、助言を与えるという立場から、意見、勧告、提案及び報告を提出すること」、また「国内機構は、法案や提案と同様に、現行の法律や行政規定を審査し、これらの規定を人権の基本原則に確実に適合させるために適当と考える勧告を行うものとする」ことが明記されている。
 検討結果3.(7)における中障協の「意見具申」は、このパリ原則でいうところの国内機構の「勧告」と比べて極めて弱い位置づけではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。もし違う点があるとすれば、それは何か。

三 検討結果3.(7)における「施策の実施状況の監視」との関係で、社会福祉法人日本身体障害者団体連合会は、「障害者権利条約の履行及び施策の実施状況や監視の仕組みを設置する上で、政府から独立した機関とすることが適当」と主張している。ところが検討結果には、中障協に一定の独立性を付与することについて一切触れられていない。政府は中障協に、障害者権利条約及びパリ原則で示されている独立性を持たせるべきと考えていないのか。

四 検討結果3.(7)における「施策の実施状況の監視」との関係で、中障協の独立性がどのように確保されるのかという点について、昨年十二月の民主党障がい者政策作業チームにおける障害者施策推進本部の説明によると、「検討結果3.(8)に記した『関係行政機関に対する資料提出等の協力の要請』によって確保できる」とのことであった。しかし関係行政機関に対する資料提出等の協力の要請は、通常業務として位置づけられるものであり、そのことによってただちに中障協の独立性が確保されるとは理解しがたいと考えるが、いかがか。

五 中障協に独立性を付与するとすれば、法的にどのような形で担保されるべきと考えるか。

六 政府の考える中障協のあるべき独立性と、内閣府設置法第四十九条の規定に基づく「外局」の独立性との違いは何か。

七 障害者権利条約の第三十三条第三項には「市民社会(特に、障害者及び障害者を代表する団体)は、監視の過程に十分に関与し、かつ、参加する」(外務省仮訳)とあるが、障害者基本法第二十五条第二項の改正なしに、現在の中障協の委員任命方法及び委員構成のままで、障害者権利条約第三十三条第三項に適合し、障害者権利条約を批准することが可能であると考えているのか。

八 中障協の委員の過半数を、障害を持つ有識者及び障害者を代表する団体からの推薦者で占めるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

九 障害者権利条約の批准に伴い、中障協の庶務を含めた障害者施策を担当する内閣府の常勤職員を、現在の政策統括官以下十名から増員する予定はあるか。

十 二〇〇九年度予算案で七百万円とした中障協経費の増額分三百万円によって、協議会の開催回数を何回増やす見込みなのか明らかにされたい。

  右質問する。