質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第六二号

中城湾港泡瀬地区埋立事業第一区域への土砂投入工事の着工に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年二月二十三日

亀井 亜紀子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   中城湾港泡瀬地区埋立事業第一区域への土砂投入工事の着工に関する質問主意書

 沖縄県・沖縄市とともに内閣府が進めている中城湾港泡瀬地区埋立事業については、一昨年十二月、沖縄市長が事業の見直しを表明し、さらに昨年十一月、那覇地裁が「本件事業には経済的合理性が認められない」として、県と市に対し公金支出の差し止めを命ずる判決をくだしたところである。しかるに内閣府沖縄総合事務局は、去る一月十五日から第一区域への浚渫土砂の投入工事を開始した。世界的にも希少な種を含む干潟の生物やサンゴを、文字通り「生き埋め」にするこの工事の強行には、現段階では正当な理由を見出すことはできず、国民各層から批判の声も強い。佐藤勉沖縄担当大臣が、一月十六日の定例記者会見において「泡瀬地区の工事につきましては、現在沖縄市が進めている土地利用計画見直しの検討状況を踏まえつつ、台風来襲等に備えた護岸の補強など、安全上必要な工事を中心に進めていると伺っておりますし、そういうことで、必要な支援はしていくという考え方ということでございます。」と言明したことを踏まえ、以下にその発言内容の真意と政府の見解を問う。

一 現在沖縄市は土地利用計画の見直し作業を行っているが、その検討結果次第では、埋立面積や埋立地の形状、さらには用途や設計概要の変更の可能性がある。その際には、港湾計画の変更(港湾法第三条の三)やそれに伴う港湾環境影響評価(環境影響評価法第四十八条)、公有水面埋立法に基づく県知事の許可(公有水面埋立法第十三条ノ二)などの法的手続きが必要となるのであるから、埋立て工事の着工は見直し計画の策定を待つべきではないのか、見解を示されたい。内閣府は、これらの手続きを経ないままに埋立て工事に着手したことになるが、見直しが大幅なものになる際には、今次の着工はこれら法律に反したことになるのではないか。また見直し前の原計画によって取得した公有水面埋立免許に基づいて着工したとするのであれば、沖縄市の進めている土地利用計画の見直しを、これら法的手続きを不要とするような軽微なものにとどめるよう誘導する結果ともなり、見直し計画の経済的合理性の確保をさらに困難にさせるものと考えるが、見解を示されたい。

二 公金支出の差し止めを命じた那覇地裁判決を、県・市と一体となって事業を進めてきた国も、重大に受け止めるべきである。国としては、いかなる対応によって司法判断の尊重姿勢を示すつもりか。上級審においては公金の支出が認められる見込みであるという確実な根拠があれば示されたい。それが示されないのであれば、判決確定までは工事を中断して、司法判断を尊重する姿勢を示すべきではないのか、見解を示されたい。

三 那覇地裁判決が上級審でもそのまま確定する場合は、その間に使われる工事費用が無駄に終わる結果となるのは明らかなのだから、この観点からも判決確定まで工事は見送るべきではないのか。このまま工事を続行し、結果としてそれが無駄な工事に終わった場合は、予算執行職員等の責任に関する法律に照らして、今般の工事の支出を実行した職員の処分を行うのか。その場合、佐藤大臣はどのような政治責任をとるつもりか。

四 今回着工された工事の目的について、佐藤大臣は会見において「安全上必要な工事を中心に進めている」と述べているが、「安全上必要な工事」とは、埋立て工事とは異なる緊急避難措置という意味か。またこの発言は、「安全上必要な工事」が終了して以降は、第一区域への土砂投入埋立て工事は見送る意向を含意したものと理解してよいか。

五 「安全上必要な工事」にはいくらの経費がかかり、いつまでに完工するのか。また平成二十一年度予算案に盛り込まれている事業費と工事内容はいかなるものか、明らかにされたい。

六 「安全上必要な工事」が必要とされる具体的な理由として、内閣府は護岸内側の砂が台風による越波で流されることを挙げるが、護岸設計時になぜ予想しなかったのか。またこれまでにそうした被害が実際にあったのであれば、被害の発生日時、砂の流出が生じた場所と量、及びそれが護岸の安全上いかなる程度の危険を及ぼしたかを資料によって具体的に示されたい。

七 仮に砂が流出し護岸の補強が必要であったとしても、敷設済みの砂のさらに内側に土砂を投入する今回の工法以外に、護岸を嵩上げしたり、砂をシートで覆うなど他の方法によっても護岸の補強は可能であり、土砂の投入は回避できるのではないか。直ちに工法を変更して、干潟への土砂投入をやめる考えはないか。

八 第一区域への土砂投入は、土地利用計画の見直し結果や司法判断次第では、将来保全される可能性のある区域内の生物に対して、致命的な影響をもたらすことは明らかである。サンゴなどの生息環境をこれ以上劣化させないために、護岸を早急に開削して海水交換の促進を図るべきではないか。また土砂投入工事後、区域内のサンゴその他生物への影響にはどのようなものがあったか。調査を実施していないのであれば、中城湾港泡瀬地区環境監視委員会やその他専門家に、立ち入り調査を要請するつもりはないか。

九 泡瀬干潟の埋立ては、昨年の通常国会において全会一致で可決成立したばかりの生物多様性基本法の趣旨や、水鳥の生息地として国際的に重要な湿地の保全を目的とするラムサール条約の精神を踏みにじる行為と言わなければならないが、この点についての政府の見解を問う。

  右質問する。