質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第六〇号

学校における児童・生徒への健康教育の充実に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年二月二十三日

谷岡 郁子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   学校における児童・生徒への健康教育の充実に関する質問主意書

 今日、教育現場である学校では、児童・生徒の身体面の健康、および精神面での健康にかかわる課題に対処するためのいわば「健康教育」の拡充が求められている。教育現場が直面している課題には、いじめ、不登校、授業放棄、摂食障害、売春行為を含む性交渉、薬物依存、さらにはアレルギー疾患、虐待や両親の不和といった家庭環境に起因する問題など枚挙にいとまがない。そしてインターネットや携帯電話の普及などによる情報の氾濫はこれらの問題をより複雑化・不可視化し、解決を困難にしている。そして、養護教諭をはじめとした多くの教員が、複数の懸案を抱え、対応に苦慮しているのが実情である。このような児童・生徒が抱える身体・精神面での健康にかかわる課題を解決するためにも健康教育の基盤、特に人的基盤が拡充されなければならない。
 しかし現実には、学校現場では健康教育を十分に実施するだけの教員配置、特に中心的役割を担う養護教諭の配置がなされていない。確かに現在、およそ一校に一人の割合で養護教諭が配置されている。しかし、一校に一人の養護教諭だけでは、既に様々な課題に対処することができない状態になっている。また養護教諭の未配置校も少なくなく、複数の学校を兼務する養護教諭もおり、学校の健康教育や課題への対処に著しい不都合をもたらしている。このような状況を一刻も早く改善することが、教育行政に求められている。
 よって以下質問する。

一 学校における児童・生徒の健康教育、すなわち身体・精神的な健康にかかわる課題に対処して、児童・生徒を健全に育むための教育の重要性について、政府はどのように認識しているのか、基本的立場を示されたい。また児童・生徒の身体的・精神的な健康にかかわる問題、薬物や性交渉など生活指導にかかわる問題、虐待など家庭環境にかかわる問題など多様な問題に対して、養護教諭はどのような役割を担うべきと考えているのかについて、具体的に示されたい。

二 各学校における養護教諭の必要性は非常に高く、学校教育法第三七条、第四九条および第六九条では、小中学校には養護教諭を必ず配置するように定めている。しかし、学校教育法附則第七条には「小学校、中学校及び中等教育学校には、(中略)当分の間、養護教諭を置かないことができる」とあり、実際に養護教諭が配置されていない学校も存在している。そこで、この附則はどのような事情で定められたのか説明されたい。また、「当分の間」という語でどの程度の期間を想定しているのか示されたい。

三 学校教育法第六〇条では、高等学校の養護教諭については「置くことができる」としているが、必置ではない理由について説明を求める。また、高等学校における健康教育をどのように進めていくつもりであり、そのための健康教育の基盤整備、特に人的基盤の整備についてどのように考えているのか、具体的に示されたい。

四 学校教育法第二七条を見ると、高等学校と同様に幼稚園についても養護教諭は必置とはなっていないが、幼稚園児への教育では、心身の健康に対するより慎重な配慮が求められており、養護教諭の必要性は高いと考えられる。幼稚園において、配置を義務化していない理由について説明されたい。

五 二〇〇八年一月一七日の中央教育審議会答申によると、二〇〇六年度の保健室の一日平均利用者数は小学校四一人、中学校三八人、高校三六人であり、また当方の聞き取りによると、多い時で一日に百人を超える利用がある学校もあり、養護教諭が児童・生徒一人一人にきめ細かな対応することは困難な状況にある。答申では「養護教諭がその役割を十分果たせるようにするための環境整備が必要」としているが、その環境整備として、養護教諭の増員と複数配置が必要と考えられる。答申でも複数配置に言及しているが、政府はこの答申をうけ、養護教諭の増員や複数配置に向けた努力を行っているのか、説明されたい。

六 現在、小学校では児童数八五一人以上、中学校では生徒数八〇一人以上の場合に養護教諭が複数配置されている。しかし、この基準に満たない学校でも児童・生徒数の多い大規模校では養護教諭の負担は大きくまた教育困難校では、保健室登校への対応など養護教諭の抱える案件は多い。現在の養護教諭の複数配置は、いかなる理由でこのような基準となっているのか、説明されたい。

七 現在、臨時教員である養護助教諭も養護教諭と同様に学校に勤務し、児童・生徒の抱える様々な課題に対応している。この様々な課題への対応は、当該児童・生徒の修学期間中続くこともあり、またその対応如何によっては当該児童・生徒のその後の将来に大きな影響を及ぼしうるため、正規の教員が責任を持って職務にあたる必要があると考える。そのためには、制度的に養護助教諭を廃止して養護教諭に一本化し、様々な課題に対応した経験を持つ養護助教諭を養護教諭として採用すべきと考えるが、政府の見解を問う。

八 親等による児童・生徒の虐待を早期に察知し、対応するためには学校だけでなく児童相談所や児童養護施設などの関係機関の充実とそれぞれの機関の連携が不可欠である。児童相談所や児童養護施設の充実と連携策についての政府の見解を示されたい。特に児童相談所の職員の確保や対応能力の向上、また民間施設も多い児童養護施設の拡充について政府の対応策を示されたい。

  右質問する。