質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第五八号

同一価値労働同一報酬に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年二月二十三日

谷岡 郁子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   同一価値労働同一報酬に関する質問主意書

 労働の場における男女差別を撤廃するための取り組みは、労働行政における長きにわたる課題である。しかし、今なお就労における性別に基づく格差は多く残されており、なかでも大きな格差は労働報酬の格差である。
 二〇〇八年三月一一日に発表されたILOの条約勧告適用専門家委員会報告(以下、「委員会報告」という。)では、日本政府に対して男女賃金格差を是正する方策を示すよう求めている。このことは、我が国では依然として性別による賃金格差や待遇の格差があること、そしてその事実に対して諸外国が注目していることを示している。実際、平成一九年度の男女の賃金格差は、男性一般労働者を一〇〇とした場合、女性一般労働者は六八・一、女性短時間労働者では四七・七しかない。また、男性では正規職員・従業者割合が八割を超えているのに対して、女性の正規職員・従業者割合は五割以下であり、多くの女性は低賃金で不安定な非正規労働という不利な立場に置かれている。
 このような性別による報酬や待遇の格差、特に女性の低賃金は、女性の自立を著しく困難にしている。近年、問題化しているいわゆるDVの問題でも、女性が自活できないために離婚等の対処ができないケースがみられる。また、母子家庭の母親は、子育てと必要な収入を得るための就労を両立することが困難な状況に置かれており、たとえ職に就くことができたとしても低賃金であることが多く、貧困状態から疲弊していく例も多い。このことは男女の平等という点で問題であるのみならず、将来の社会を担う子どもたちへの影響という観点からみた場合に、世代を超えた貧困の固定化という危険性をも孕んでいる。このような男女の報酬・待遇に格差が存在することは、我が国の憲法が保障する男女平等や健康で文化的な最低限度の生活を営む権利の侵害にもつながるため、早急な是正策が必要である。
 よって以下質問する。

一 現在の男女間の賃金格差を政府はどのように考えているのか、見解を問う。また、賃金格差是正のため、現在実施している施策内容とその目標、進捗状況を示されたい。

二 委員会報告に対して、政府はどのように対処するつもりなのか、見解を示されたい。

三 委員会報告では、労働基準法第四条が、日本が一九六七年に批准した「同一報酬条約」にある同一価値労働同一報酬の原則を十分に反映していないと指摘している。この指摘に対する政府の見解を問う。また、委員会報告では「委員会は(日本)政府に対し、男女同一価値労働同一報酬の原則を規定するための法改正措置を講ずるように求める。委員会は政府に対し、(同一報酬)条約の原則に影響を及ぼすような労働基準法第四条が規定する賃金差別に関する新たな判例の詳細な情報を提出することを求める」と要求している。この要求は労働基準法第四条の改正、および労働基準法第四条にかかわるすべての訴訟の判例の提出を求めていると理解できる。政府はこのILOの要求に対して、どのような回答を行ったのか、示されたい。

四 委員会報告では「委員会は、男女同一価値労働同一報酬の原則は必然的に、男女が行う仕事や労働を技能、努力、責任、労働環境といった客観的な要素に基づいて、比較することを含むことを強調する」と指摘しているように、性別にかかわらず、技能、努力、責任、労働環境という観察可能な四項目に基づいて報酬を決定するという、いわゆる客観的職務評価に基づく賃金決定が導入されるべきであると指摘している。このような性に中立的な客観的職務評価に基づく賃金決定について、政府の見解を示されたい。

五 政府として、質問四で述べた性に中立的な客観的職務評価に基づく賃金決定に関する調査研究、あるいは諸外国や関係機関等からの情報収集を行っているのか。行っている場合は、その内容についても明らかにされたい。

  右質問する。