質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第五一号

外国人労働者の緊急総合支援(雇用、住宅、帰国、教育、情報提供)に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年二月十九日

近藤 正道   


       参議院議長 江田 五月 殿



   外国人労働者の緊急総合支援(雇用、住宅、帰国、教育、情報提供)に関する質問主意書

 厳しい雇用情勢下で、派遣・請負・期間工等の非正規労働者が、職と同時に住まいも失うケースが多発している。特に、非正規労働の最底辺に位置する外国人労働者は、その多くが家族とともに日本で就労しているため、被解雇者本人にとどまらない深刻な影響が生じている。日本人非正規労働者に対する支援については、雇用保険制度や雇用促進住宅の活用等、これまで不充分ながらも一定程度の改善が見られている。しかし、外国人労働者はこれらでも救われないのが現実である。
 多くの外国人労働者が、労働法制やセーフティネットに関する情報の周知不足から、雇用保険・健康保険や厚生年金等に未加入であり、何年働いても昇給なし、一時金なし、年休なしという環境で働いてきた。偽装請負や偽装派遣等を強要された上、労働災害や妊娠で解雇される事例も多発している。また、多くが子弟を私塾扱いの外国人学校に通わせているが、授業料負担が困難なことから、被解雇者などを親に持つ外国人児童・生徒の退学、転校が頻発し、外国人学校自体の経営に悪影響を及ぼすなど、子どもの就学機会にも大きな影響が及んでいる。さらに、この経済危機に際して、外国人研修生・技能実習生の中途解約や、外国人労働者を研修生・技能実習生に置きかえる動きも問題になっている。
 ついては外国人労働者に対する緊急総合支援(雇用、住宅、帰国、教育、情報提供)等につき、以下、質問する。

一 1 外国人労働者に対する緊急総合支援のために、外国人の就業、失業、住宅喪失、帰国の状況、外国人子弟の就学状況、外国人学校の経営状況等の、正確な実態把握が必要と考えるが、従来は縦割り行政の中で、これらの実態調査がなされてこなかったと承知している。これらの正確な実態把握が必要ではないか。現時点での政府の見解を問う。
2 在留資格別の外国人労働者、うち被雇用者、失業者の過去五年間の一年ごとの数、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。このような統計が存在しないとすれば、実態を推計できるような統計を指摘されたい。
3 2の失業者のうち、住居喪失者の過去五年間の一年ごとの数、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。このような統計が存在しないとすれば、実態を推計できるような統計を指摘されたい。
4 2の失業者のうち、帰国者の過去五年間の一年ごとの数、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。このような統計が存在しないとすれば、実態を推計できるような統計を指摘されたい。
5 定住外国人の子どものうち、公立学校、ブラジル人学校等の外国人学校就学児童・生徒の、過去五年間の一年ごとの数、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。このような統計が存在しないとすれば、実態を推計できるような統計を指摘されたい。

二 1 外国人労働者の集住地域にある公共職業安定所の通訳の人数、および相談件数の過去五年間の一年ごとの数、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。
2 外国人労働者の集住地域にある労働基準監督署の通訳の人数、および相談件数の過去五年間の一年ごとの数、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。

三 1 国や自治体において、外国人のために多言語での、雇用・医療・生活支援・住居・教育などの総合相談窓口(ワンストップ)を設置すべきと考えるが、政府の見解を問う。
2 外国人労働者に対して労働基準法をはじめとする労働法制と雇用保険制度、生活保護制度などのセーフティネットの情報を、母語により周知徹底すべきと考えるが、政府の見解を問う。
3 労働法制やセーフティネットの情報を外国人の母語により周知徹底することについて、①国、②自治体の施策の現状はどうか。
4 公共職業安定所、労働基準監督署、自治体における通訳の採用にあたっては、解雇された外国人労働者の採用も検討すべきと考えるが、政府の見解を問う。

四 1 外国人労働者の多くが就業する事業所では事業者の法令違反が多く見られる。特に、労働災害や労働条件に関しては入念に監督・指導することが重要と考えるが、政府の見解を問う。
2 これらのうち、外国人労働者が就業する事業所に対する指導の、過去五年間の一年ごとの数、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。

五 1 解雇された外国人労働者が社員寮等の住宅から退去を求められるケースも頻発しているが、政府の見解を問う。
2 このような場合、現状で、政府としてどのような支援策を講じているか。
3 公営住宅、雇用促進住宅、都市再生機構住宅等に入居している解雇された外国人労働者世帯については、家賃減免などの住まいの保障に資する措置を採るべきと考えるが、政府の見解を問う。
4 住宅の空室募集にあたって外国人に対する不利益・差別的な取り扱いをしないよう、いかなる取り組みを行っているか。

六 1 雇用保険に関する情報の周知状況に照らして、被解雇者、特に外国人労働者の雇用保険遡及加入については、柔軟に対応する必要があると考えるが、政府の見解を問う。
2 雇用保険の遡及加入の件数について、過去五年間の一年ごとの数、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。このような統計が存在しないとすれば、実態を推計できるような統計を指摘されたい。
3 外国人労働者の雇用保険の遡及加入の件数につき、過去五年間の一年ごとの数、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。このような統計が存在しないとすれば、実態を推計できるような統計を指摘されたい。
4 会社が倒産した際に雇用保険に遡及加入する場合、会社負担分を公費により一時肩代わりするなど、労働者に不利益とならないよう対応すべきと考えるが、政府の見解を問う。

七 1 外国人学校に通学する児童・生徒に対し、授業料の補填などの公的な補助を行うべきと考えるが、政府の見解を問う。
2 公立学校における外国人児童・生徒の受入体制の整備として、いじめ防止策や母語を解する職員の配置などを実施しているか。政府が把握しているいじめ防止策の例を挙げられたい。また、外国人児童・生徒の母語を解する職員の配置をしているとすれば、過去五年間の一年ごとの数、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。
3 外国人児童・生徒が放課後に通う、地域の補習教室に対し財政支援をしているか。しているとすれば、過去五年間の一年ごとの数、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。

八 外国人労働者が多い岐阜県が、子どもたちが通う外国人学校に学費補助をする計画をまとめたところ、文部科学省がストップをかけた、とする報道があった。
1 これは事実か。
2 事実とすれば、かかる指導の根拠は何か。
3 他にも同様の指導を行ったことがあるか。あるとすれば過去五年間の一年ごとの数、対象自治体名、対象となった自治体の施策、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。

九 1 生活再建支援、職業訓練の一環として、外国人が無料で日本語を学ぶことができる教室等を設置すべきと考えるが、政府の見解を問う。
2 生活再建支援、職業訓練の一環として、外国人が無料で日本語を学ぶことができる教室等を設置しているとすれば、過去五年間の一年ごとの数、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。

十 1 希望する外国人労働者に対し、帰国費用の支援をすべきと考えるが、政府の見解を問う。
2 帰国費用支援の仕組みがあるか。あるとすれば、過去五年間の一年ごとの実績、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの実績を明らかにされたい。
3 2がないとすれば、例えば、雇用保険を活用して帰国費用の支援を実施すべきと考えるが、政府の見解を問う。

十一 1 外国人研修生・技能実習生制度については、技術等の移転を通じた国際貢献を制度趣旨とするところ、例えば受入企業の業績の悪化等、受入企業都合の研修・技能実習の終了は、本来あってはならない事態であると考えるが、政府の見解を問う。
2 外国人研修生・技能実習生ごとの途中帰国者につき、受入事業者の都合を理由とするものの、過去五年間の一年ごとの数、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。
3 このような場合に受入事業者に対し受入の適正化を指導しているか。しているとすれば、①何に基づいての指導か、②指導の過去五年間の一年ごとの数、過去六か月間と前年同月の一か月ごとの数を明らかにされたい。

  右質問する。