質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第三六号

戦時中の連合国捕虜使役問題に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年二月九日

藤田 幸久   


       参議院議長 江田 五月 殿



   戦時中の連合国捕虜使役問題に関する再質問主意書

 前回政府答弁書(内閣参質一七一第二二号)を踏まえ、再度質問する。

一 「一について」の答弁について

 前回政府答弁書において、外務省外交史料館が保管する外交記録の中に「戦時捕虜に関する資料及び関係の文書」も含まれるとある。
1 その全目録を示されたい。
2 また、その中の麻生鉱業に関するもの、とりわけ捕虜の取り扱い及び賃金支払いに関するもの、捕虜の母国への帰還に関するものを示されたい。
3 一九四五年八月に河辺虎四郎陸軍中将がマニラで連合軍司令部に提出した文書などがこれらの資料に含まれていたか。含まれていた資料を示されたい。
4 外務省には戦時中「外務省在敵国居留民関係事務室」が開設されていた。
(一) その開設の経緯と業務内容を明らかにされたい。
(二) 連合国からの抗議文などの関係資料はこの事務室が保管していたのか。その全目録を示されたい。
5 一九四五年八月に設置された外務省終戦連絡事務局の連合軍司令部(GHQ)に対する役割は何か。設置日と廃止日はいつか。この事務局の捕虜に関する文書資料等は、一九四六年に設置された外務省外交史料館に保管されているか。

二 「二について」の答弁について

 前回政府答弁書において、「「先の大戦時の戦時捕虜に関する諸問題および政策立案」は多岐にわたるため、事項に応じて政府において担当する部局が対応している」とある。
1 サンフランシスコ講和条約締結後、捕虜に関して連合国側との窓口となったのはどの部局か。
2 東京裁判、戦時賠償、BC級戦犯、シベリア抑留者の担当部局はどこであったか。
3 近年の各国の元捕虜による日本政府や企業に対する提訴についての担当部局はどこか。

三 「三の1について」及び「三の2及び3について」の答弁について

1 前回政府答弁書において、「元捕虜等からの要望等に対し、返書を送付するなど、適切に対応してきている」とある。ならば、なぜ現在まで元捕虜・家族からの抗議や要求が続いているのか。「適切に対応」しながら、元捕虜・家族が納得していない理由は何だと考えるか。
2 前回政府答弁書における「捕虜の労働自体は、当時の国際法においても認められていた」と「多大の損害と苦痛を与えた」とはどう関係付けられるのか。国際法上認められている基準を遵守していれば、「不当な苦難」を強いたり、お詫びする必要はないはずではないか。
3 「痛切な反省と心からのお詫び」とは、「どのような事実・事態に対する反省」で、「お詫び」は何に対する「お詫び」か。日本側の一部に捕虜虐待や奴隷労働があったとする立場なのか。全体として、虐待や奴隷労働に近い実態があったとする立場なのか。
4 「お詫びと反省の気持ち」を繰り返し表明してきたにもかかわらず、なおそれらが被害当事者らから受け入れられていないのは、なぜか。
5 捕虜の労働に関する国際法の規定及び基本要件は何か。
6 最近開示された「朝鮮月報」によれば、将校が使役されているが、これは国際法に違反しているか。

四 「四の1について」及び「四の2について」の答弁について

1 前回政府答弁書において、「在豪州日本国大使館及び在豪州日本国総領事館は、関連の報道等について、外務本省に対ししかるべく報告してきている」とある。では、二〇〇六年に麻生炭鉱の豪州人元捕虜のインタビューが豪州のABC放送や、「The Age」紙、「The Australian」紙などで報道されたが、それらは麻生外務大臣(当時)に報告されたか。
2 前回政府答弁書において、「政府はこれまで、豪州人元捕虜等からの手紙等を受け取った場合、面会に応じたり、返書を送付するなど、丁寧に対応してきている」とある。
(一) 二〇〇六年六月に麻生炭鉱の豪州人元捕虜ジョン・ホール氏の娘マリリン・カルアナさんが麻生外務大臣あてに手紙を出したが、麻生外務大臣はそれを受け取ったか。またどのような返事を出したか。
(二) マリリン・カルアナさんは麻生総理大臣あてに二〇〇九年一月十六日付けの手紙を出したが、麻生総理大臣はそれを受け取ったか。またどのような返事を出したか。
(三) 麻生炭鉱の豪州人元捕虜ジョン・ホール氏は麻生総理大臣あてに二〇〇九年二月四日付けの手紙を出したが、麻生総理大臣はそれを受け取ったか。またどのような返事を出したか。また同じく元捕虜のアーサー・ギガー氏及びジョー・クームス氏も麻生総理大臣あてに同じ時期に手紙を出したが、麻生総理大臣はそれを受け取ったか。またどのような返事を出したか。
(四) 久留米工業大学教授のウイリアム・アンダーウッド氏が二〇〇七年六月二十七日付けの手紙を麻生外務大臣あてに出したが、麻生外務大臣はそれを受け取ったか。また同氏が同封した「麻生鉱業報告書〔一九四六年〕」及び、GHQ司法調査委員会作成の「報告書一七四」を受け取ったか。

五 「五の2及び4について」の答弁について

 前回政府答弁書において、「外務省が保有している資料で記事の内容に関係するものがないか等について、外務省国際報道官室より、外務省のその他の関係部局に確認を行った」とある。一で、外交史料館にあるとされる資料及び文書の確認を行わなかったのか。また、四の1での豪州での報道を把握している在豪大使館等への確認を行わなかったのか。

六 「六の1について」の答弁について

 厚生労働省及び外務省保管の文書に労働の実態を示すものがないか。またそれはどのような内容か。

七 「七の2及び4について」の答弁について

 前回政府答弁書において、「反論の掲載・削除に係る事務は外務報道官が主管している」とある。外務大臣は内容を承知し、公電による指示を決裁していたのではないか。

八 「八の1から4までについて」及び「八の5について」の答弁について

1 捕虜らの勤務実態を記録した文書類は残っていないのか。もし、残っていないならば、労賃を払う意思が当初よりなかったということか。
2 前回政府答弁書において「捕虜の労働自体は、当時の国際法においても認められていた」とあるが、当時の国際法は労賃を払わなくてもよいとは規定していない。前回政府答弁書で戦後労賃を払っていないことを明らかにしているのであるから、国際法違反となる。日本の労賃未払い、つまり国際法違反を認める立場なのか。
3 生存する元捕虜四人のうち連絡が取れる三人全員が「労賃の支払いを受けていない」と述べている。支払ったことを日本政府として証明する責任があるのではないか。もし、それが出来ないなら、支払うべきではないか。

九 「九の1及び2について」の答弁について

 平成二十一年度予算案の中で、米国の元捕虜およびその家族を対象とする事業を外している理由は何か。

十 韓国人残留遺骨に関するアンケートを厚生労働省が以前行ったが、株式会社麻生は回答しているか。またそれは、どのような内容か。
 戦時中、麻生鉱業は朝鮮総督府に「朝鮮人労務者斡旋申請書」を提出していると思われるが、その記録は残っているか。あれば示されたい。
 戦時中に中国人・朝鮮人労務者を使役していた企業に、戦後「華・鮮労務対策委員会」などが窓口になって国家補償金が支払われたことが報告されている。麻生鉱業に対してこの種の支払いが行われたか。行われていれば、その金額と積算根拠を示されたい。

  右質問する。