質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一号

歴史教科書と国連人権委員会による従軍慰安婦についての勧告に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年一月五日

谷岡 郁子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   歴史教科書と国連人権委員会による従軍慰安婦についての勧告に関する質問主意書

 前国会、「歴史教科書とその検定に関する質問主意書」(第一七〇回国会質問第一一六号)を提出し、その質問三において、二〇〇八年一〇月に公表された国連人権委員会による自由権規約に関する対日審査報告書の二二項を受けての、今後の歴史教育のあり方や教科書検定のあり方についての見解と対応を問うた。これに対し、その答弁書(内閣参質一七〇第一一六号)において政府は「我が国の教科用図書検定制度は、(中略)文部科学大臣が教科用図書として適切かどうかを決定するものとなっており、教科用図書検定基準等に沿ったものとなっている限り、教科用図書で具体的にどのような事象を取り上げ、それをどのように記述するかは、当該図書の著作者等の判断にゆだねられている」と回答している。対日審査報告書に記された勧告にしたがって改善策を考えるならば、当然、歴史教育や教科書検定の今後のあり方についての検討がなされるものと考えていたが、先の答弁書ではそのような対応が見られず、また国際的な対応としてもきわめて不十分であると思われる。
 よって改めて以下質問する。

一 右回答にある「当該図書の著作者等の判断にゆだねられている」という見解では、勧告に対する対応としてはあまりに不十分である。勧告への対応として、教科書検定や歴史教育のあり方をどのように改善したかを示し、国際社会を納得させる方策が必要と思われるが、右回答からは具体的な対応が全く読みとれない。政府は具体的な方策や、国際社会を納得させるだけの対応を準備しているのかを問う。

二 一昨年の教科用図書検定において、歴史教科書における沖縄戦をめぐって多くの批判がなされ、教科書会社各社に修正依頼を行うなどの混乱が見られたが、これは検定意見というかたちで、沖縄戦において日本軍が住民に自決を強制したとする記述を削除するよう著作者や出版社に迫ったことに端を発している。このように一方で記述に対して変更を迫り、他方で「著作者等の判断にゆだねられている」とすることは明らかに矛盾しており、当然、国際社会もこの点について納得のいく説明を求めてくるものと考えられる。国際社会からこの点についての指摘があった場合、政府はいかなる説明を行うつもりなのか、具体的に答えられたい。

三 右回答にある平成五年八月四日の内閣官房長官談話では「われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する」としている。先の答弁書では、この談話が慰安婦問題についての政府の基本的立場であるとしているが、であるならば、文部科学大臣が内閣官房長官談話を踏まえた教科書づくりを著作者等に求めることは、何ら問題がないと考える。また、強制ではないかたちで要請を行うことは、言論の自由と歴史問題の双方を解決するための民主主義国家の対応として、国際社会からの理解を得るための具体的な行動として考え得る対応のひとつではないかと考えられる。政府として、内閣官房長官談話の内容を現実のものとし、また勧告に対応するために、どのような具体的対応をとるのかを説明されたい。

  右質問する。