質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一三六号

内閣参質一七〇第一三六号
  平成二十年十二月二十六日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員喜納昌吉君提出航空自衛隊のイラク派遣に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員喜納昌吉君提出航空自衛隊のイラク派遣に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 平成十五年度から平成二十年度までの間に行われたイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(平成十五年法律第百三十七号。以下「イラク特措法」という。)に基づく対応措置(以下単に「対応措置」という。)の実施に係る航空自衛隊の所要経費については、平成二十年度予算から予算項目の組替えを行っているが、比較のため平成十九年度以前についても平成二十年度基準で整理を行ったところ、現段階で整理、集計が終了している平成二十年六月三十日までの実績は、約二百億円である。その内訳は、(組織)防衛本省の(項)防衛本省共通費として約六十八億円、(項)自衛官給与費として約十九億円、(項)武器車両等整備費として約八十三億円、(項)航空機整備費として約二十九億円、(項)人材確保育成費として約二億円である。うち、航空自衛隊がイラク特措法に基づき実施してきた輸送活動に要した燃料費は、約四億円である。
 また、当該燃料の調達方法については、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(平成八年条約第四号)等に基づいて調達を行ってきたところである。

三について

 政府としては、自衛隊が対応措置を実施してきた区域については、これまでに我が国が独自に収集した情報、諸外国等から得た情報等を総合的に判断し、現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域に該当すると考えている。

四及び六について

 御指摘の平成二十年四月十七日の名古屋高等裁判所の判決は、控訴人らから被控訴人である国に対する自衛隊のイラク派遣等の違憲確認請求及び差止請求について不適法なものであるとして却下し、損害賠償請求について棄却した第一審判決に対する控訴を棄却する旨の国側勝訴の判決であり、本件判決のうち、首都バグダッドが戦闘地域に該当し、航空自衛隊のイラクでの空輸活動は憲法に違反する活動を含んでいる旨を述べた部分は、判決の結論を導くのに必要のない傍論にすぎず、政府としてこれに従う、従わないという問題は生じないと考える。
 政府としては、航空自衛隊のイラクでの活動は、憲法の範囲内でイラク特措法に基づき適法に行われてきたと認識している。

五について

 対応措置として実施される業務としての役務の提供について定める実施要項において、航空自衛隊は、武器(弾薬を含む。)の輸送を行わないこととしているところであるが、これは、輸送対象となる人員が通常携行する武器までをも輸送対象から排除する趣旨ではない。

七について

 航空自衛隊が行った対応措置は、国家の速やかな再建を図るためにイラクにおいて行われている国民生活の安定と向上、イラク政府による有効な統治の確立等に向けたイラク国民による自主的な努力を支援し、及び促進しようとする国際社会の取組に我が国が主体的かつ積極的に寄与し、イラクの国家の再建を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的として行ったものであり、これは、我が国にふさわしい貢献であったと考えている。

八について

 御指摘のブッシュ米国大統領の発言は、イラクの大量破壊兵器に関する米国政府自らの情報が結果として誤っていたことについてであったと承知しており、我が国政府についてはそのような事情が無く、また、我が国の米国等によるイラクに対する武力の行使への支持は、飽くまで累次の関連する国際連合安全保障理事会の決議及び国際連合監視検証査察委員会等の査察報告等に基づいて自主的に判断したものであり、その判断は正しかったと考える。