質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一三二号

内閣参質一七〇第一三二号
  平成二十年十二月二十六日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員谷岡郁子君提出大学生の奨学金に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員谷岡郁子君提出大学生の奨学金に関する質問に対する答弁書

一について

 独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)が行う学資の貸与は、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じることを目的とすることから、従来より一般に奨学金事業と称している。
 また、同事業においては、奨学金の返還を通じて学生等の自立心や社会への還元意識の涵養等の教育効果が期待され、また、返還金を再度原資とすることにより、限られた財源で、より多くの学生等に奨学の措置を講ずることができることから、学資を貸与することとしている。他方、国費外国人留学生制度等においては、途上国に対する人材育成を通じた国際援助等の観点から、学資を支給することとしているものと承知している。

二について

 平成十九年度中の機構による学資の貸与額は、高等学校については五億六千九百八十五万六千円、大学院を除く大学については六千百十億六千四百六十八万八千円、大学院については九百六十九億八千八百六万五千円である。

三について

 文部科学省としては、奨学金事業の実施主体は、機構であり、各大学等により行われている貸与基準を満たす者の推薦、学生等に奨学金の返還意識を持たせるための指導等は、大学等による学生に対する支援業務の一環であることから、機構から各大学等に対して事務経費は支給されていないものと承知している。

四について

 機構が平成十九年度に実施した「奨学金の返還に関する調査」によると、返還金を延滞している理由は、本人の低所得が二十一・六パーセント、親の債務返済が十九・七パーセント、本人の借入金の返済が十二・六パーセント、延滞額の増加が十一・六パーセント、本人の無職・失業が十・五パーセント、家族の病気療養が六・三パーセント、本人の病気療養が六・二パーセント、本人の在学・留学が一・七パーセント、生活保護受給が一パーセント、災害が○・四パーセント、その他が八・四パーセントとなっている。また、機構においては、奨学金の返還が困難な者に対しては、一定期間返還を猶予する措置を講じているものと承知している。

五及び六について

 文部科学省としては、機構においては、返還金の延滞率の改善が進まない学校名を公表することにより、大学等が在学中の学生等に返還意識を持たせるための指導を強化し、延滞率の改善が図られることが期待されると考えているものと承知している。
 また、奨学金の返還金回収業務は、機構において実施するものである。

七について

 機構の運営に係る経費である、一般管理費や業務経費等(以下「一般管理費等」という。)の平成十九年度の決算額は計二百五十億五千二百万四千三百九十七円である。このうち、貸与事業業務経費は、四十七億九千百二十二万千四百四十一円であるが、人件費等を含む奨学金事業に係る業務経費の総額等については、これを区分して整理していないことから、お答えすることは困難である。

八について

 平成十九年四月一日現在の機構の職員数は、五百名である。一般管理費等に占める人件費の比率は約十九・九パーセントであり、このうち、退職金を含む役員の報酬の比率は約○・四パーセントである。

九について

 機構からの報告によると、役員の氏名、職歴、在籍期間については、次のとおりである。
 北原保雄理事長 元筑波大学長 平成十六年四月から平成二十年十月まで
 板橋一太理事 元特殊法人日本育英会理事 平成十六年四月から平成十六年十一月まで
 藤田貢理事 元特殊法人日本育英会理事 平成十六年四月から平成十八年七月まで
 大浦道徳理事 元特殊法人日本育英会理事 平成十六年四月から平成十八年十二月まで
 沖吉和祐理事 元特殊法人日本育英会理事 平成十六年四月から平成十九年三月まで
 坂本幸一理事 元国立国会図書館専門調査員 平成十七年一月から平成十八年一月まで
 安江國浩監事 元特殊法人日本育英会監事 平成十六年四月から平成十九年三月まで
 中野陽一非常勤監事 公認会計士 平成十六年四月から現在に至るまで
 長谷川裕恭理事 元独立行政法人大学評価・学位授与機構理事 平成十八年二月から平成二十年七月まで
 簑島則和理事 元ニッセイアセットマネジメント株式会社常任監査役 平成十八年七月から現在に至るまで
 大貫賢一理事 元独立行政法人日本学生支援機構参与 平成十九年一月から現在に至るまで
 矢野重典理事 元国立教育政策研究所長 平成十九年四月から現在に至るまで
 佐藤正行監事 元学校法人慶應義塾塾監局参事 平成十九年四月から現在に至るまで
 梶山千里理事長 元国立大学法人九州大学長 平成二十年十一月から現在に至るまで
 尾山眞之助理事 元文化庁文化部長 平成二十年七月から現在に至るまで
 また、機構の役員給与規程及び役員退職手当規程によれば、俸給月額は、理事長が八十九万円から百万円までの範囲内で理事長が定める額、理事が七十七万円から八十八万円までの範囲内で理事長が定める額、監事が六十五万円から七十六万円までの範囲内で理事長が定める額とそれぞれされており、また、役員の退職手当は、在職一月につき、退職の日におけるその者の俸給の月額に百分の十二・五の割合を乗じて得た額を基準とした額とされているものと承知している。

十について

 平成二十年十二月一日現在の機構の管理職のうち各府省からの出向者は七人であり、その氏名及び役職は次のとおりである。
 桒原靖 政策企画部長
 増子則義 政策企画部総合計画課長
 香川徹 財務部長
 畠中祐二 財務部資金管理課主幹
 小見夏生 留学生事業部長併任学生生活部長
 谷川敦 学生生活部特別支援課長
 有松正洋 日本語教育センター長
 また、国家公務員の退職後における再就職の状況については、公務から離れた個人に関する情報であり、一般に政府が把握すべき立場にないことから、お尋ねのすべてにお答えすることは困難であるが、各府省の職員で平成十六年四月一日から平成二十年八月十五日までの間に企画官相当職以上で退職したものの再就職状況については、「公務員制度改革大綱」(平成十三年十二月二十五日閣議決定)に基づき、既に公表しているところであり、このように公表されている範囲において調べた限りでは、平成二十年十二月一日現在機構に職員として再就職している各府省出身者は、梶原憲次参与一人である。