質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一二三号

内閣参質一七〇第一二三号
  平成二十年十二月十六日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員下田敦子君提出日本原燃(株)六ヶ所再処理工場の安全に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員下田敦子君提出日本原燃(株)六ヶ所再処理工場の安全に関する質問に対する答弁書

一の1について

 日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)からは、日本原燃の再処理事業所再処理施設(以下「六ヶ所再処理施設」という。)の高レベル廃液貯蔵設備(高レベル放射性液体廃棄物(以下「高レベル廃液」という。)を保管するための設備をいう。以下同じ。)に保管されている高レベル廃液の量は、平成二十年十二月十日現在で約二百四十立方メートルと聞いている。
 なお、放射線のエネルギーや半減期等、放射性物質の特性は、その種類により様々であるが、六ヶ所再処理施設の高レベル廃液に含まれる放射性物質とチェルノブイリ事故で放出されたと推定される放射性物質とでは、その種類の構成が異なることから、両者の放射能量を単純に比較することは適当ではないと考えている。

一の2及び3について

 六ヶ所再処理施設の高レベル廃液貯蔵設備に設置された高レベル廃液貯槽は、高レベル廃液の崩壊熱を除去するための冷却設備を二系列有しており、このうち一つの系列が作動していれば、高レベル廃液貯蔵設備の冷却機能が維持できる設計となっている。また、高レベル廃液貯蔵設備においては、高レベル廃液の放射線分解によって発生する水素を希釈しその爆発を防止するための空気を供給する空気圧縮機が、二重に設置されており、このうち一つが作動していれば、高レベル廃液貯蔵設備の空気供給機能が維持できる設計となっている。
 さらに、高レベル廃液貯蔵設備等、六ヶ所再処理施設の安全上重要な施設であって、動力源として電力を必要とするものについては、外部電源系統及び分離独立した二つの非常用所内電源系統に接続されており、外部電源が喪失した時であっても、非常用所内電源系統の一つが作動すれば電力供給が維持できる設計となっている。

一の4について

 六ヶ所再処理施設においては、可燃性又は熱的に不安定な物質を使用又は生成する設備における火災等の発生を防止するため、着火源の排除、異常な温度上昇の防止、可燃性物質の漏洩及び他系統への混入の防止等適切な対策が講じられている。特に、使用済燃料を溶解した溶液から有用物質を分離するために使用されている有機溶媒等の異常な温度上昇を防止するため、引火点などの化学的制限値を有機溶媒ごとに設定の上、機器内の溶液温度が当該制限値を超えないよう、適切な措置が講じられている。

一の5及び6、二の1並びに三の3について

 六ヶ所再処理施設の耐震安全性については、参議院議員福島みずほ君提出六ヶ所再処理工場の本格稼働に関する国の再評価に関する質問に対する答弁書(平成二十年四月二十五日内閣参質一六九第一〇二号)一の1についてで述べたとおり、六ヶ所再処理施設の事業指定に係る安全審査(以下「安全審査」という。)の過程において、平成十八年の改訂前の発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(昭和五十六年七月二十日原子力安全委員会決定)等を踏まえて確認している。

一の7について

 一の2及び3について及び一の4についてで述べたとおり、六ヶ所再処理施設の高レベル廃液貯蔵設備は、安全機能が維持されるよう適切に設計され、また適切な措置が講じられているものと承知している。
 また、御指摘の「核燃料サイクル施設批判」の「航空機墜落あるいは大地震による廃液タンク破壊」と題する部分で述べられている筆者の主張については、その主張の裏付けとなる科学的根拠が示されていないことから、これを六ヶ所再処理施設の安全審査に用いることは困難である。

二の2について

 原子力政策大綱(平成十七年十月十一日原子力委員会決定)においては、原子炉の運転に伴って生じた使用済燃料の取扱いについて、再処理、直接処分等四つのシナリオを定め、シナリオごとに安全性、経済性等十項目の視点から総合的に評価を行った結果、再処理を使用済燃料の取扱いに関する基本的方針としたものである。

三の1及び2について

 御指摘のクリプトン八十五、炭素十四及びトリチウム(以下「クリプトン等」という。)も含め、放射性物質による大気の汚染等を防止するための措置については、環境基本法(平成五年法律第九十一号)第十三条において、原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)その他の関係法律で定めるところによると規定されており、環境基本法第三条から第五条までに定める環境の保全についての基本理念は、原子力基本法等に定める措置を通じて実現されるものと認識している。
 クリプトン等を含む放射性物質を六ヶ所再処理施設から放出すること等による一般公衆における実効線量については、安全審査において、法令の定める限度を超えないことはもとより、合理的に達成できる限り低いものであることを確認し、安全上問題ないと判断している。
 日本原燃の採用したガラス固化技術は、外部専門家により技術の成立性が実証された、核燃料サイクル開発機構(当時)が開発した技術であると承知しており、従業員による設備の操作方法の習熟の問題や設備の不具合等から、日本原燃が当初予定していた計画に比べると試験運転に時間を要してはいるものの、当該運転を通じて問題点の解決が図られるものと認識している。

三の4について

 経済産業省原子力安全・保安院においては、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第六十七条第一項及び使用済燃料の再処理の事業に関する規則(昭和四十六年総理府令第十号)第二十一条第二項の規定に基づき、六ヶ所再処理施設の放射性廃棄物の海洋放出口近隣に立地するむつ小川原港付近の海水、六ヶ所村前面海域で採取された海産物等に含まれる放射性物質の濃度等について、日本原燃から四半期ごとに報告を受け、これを公表しているが、御指摘の「アクティブ試験」が開始された平成十八年三月以降に受領したいずれの報告書においても、トリチウムについての測定結果は、平常の変動幅を超えたものはなく、特段の問題はないものと承知している。