質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一〇五号

内閣参質一七〇第一〇五号
  平成二十年十二月五日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員藤谷光信君提出麻薬・覚醒剤等乱用撲滅と依存離脱プログラム等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤谷光信君提出麻薬・覚醒剤等乱用撲滅と依存離脱プログラム等に関する質問に対する答弁書

一について

 不正薬物の密輸阻止に向けた水際対策を徹底するため、関係省庁の十分な連携の下、情報収集活動を強化するとともに、密輸取締り体制の強化及び充実を図るなど、本年八月に薬物乱用対策推進本部が決定した第三次薬物乱用防止五か年戦略に基づき、引き続き薬物乱用防止のための取組を推進してまいりたい。

二について

 一般論として、刑事裁判における量刑は、裁判所において、個別の事案の犯罪の軽重や情状等の諸般の事情を考慮して決定されているものであるところ、検察当局においては、薬物密売事犯についても、厳正な科刑の実現に努めているものと承知している。

三について

 刑事裁判における量刑は、二についてでお答えしたとおり、裁判所において決定されるものであるところ、検察当局においては、薬物使用事犯についても、厳正な科刑の実現に努めているものと承知している。
 また、刑事施設においては、薬物問題に取り組む民間自助グループ等の協力も得つつ、薬物事犯者を収容していない施設を除くすべての施設で薬物依存離脱指導を実施している。この指導については、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成十七年法律第五十号)第百三条及び第七十四条第二項第九号の規定により、麻薬、覚せい剤その他の薬物に対する依存がある受刑者にその受講が義務付けられている。
 さらに、保護観察所においては、本年六月に施行された更生保護法(平成十九年法律第八十八号)の規定等に基づき、刑の執行を猶予され、その間保護観察に付されている者のうち、保護観察に付される理由となった犯罪事実に覚せい剤の自己使用の罪が含まれ、規制薬物の使用を反復する犯罪的傾向が強いものに対して、特別遵守事項として簡易薬物検出検査を含む「覚せい剤事犯者処遇プログラム」の受講を義務付けている。

四について

 大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)においては、同法第二十四条第一項の規定により、大麻を、みだりに、栽培等した者は、七年以下の懲役に処することとされるとともに、これに対応した未遂罪及び予備罪が設けられており、また、同法第二十四条の二の規定により、大麻を、みだりに、所持し、譲り受けるなどした者は、五年以下の懲役に処することとされ、さらに、同法第二十四条の六の規定により、情を知って、大麻の違法な栽培等に要する大麻草の種子を提供した者は三年以下の懲役に処することとされるなど、所要の規定が整備されているところである。

五について

 刑事施設の教育専門官・調査専門官の配置については、改善指導を実施するための増員の必要性等を考慮し、平成十八年度から平成二十年度までに五十一人増員してきたところであり、今後も薬物依存離脱指導を始めとする改善指導の実施体制の強化及び充実を図るために、できる限り多くの施設に教育専門官・調査専門官の配置ができるよう、その人的体制の充実に努めてまいりたい。

六について

 刑事施設における薬物依存離脱指導については、薬物問題に取り組む民間自助グループ等の協力も得つつ実施しているところであるが、処遇プログラムの一層の充実を図るため、現在、海外における事例を参考にして、一部の刑事施設において認知行動療法を取り入れたプログラムを試行しているところである。今後は、この試行結果を踏まえ、より科学的・体系的な処遇プログラムの開発を行うとともに、同プログラムを使用した薬物依存離脱指導を重点的に実施する施設を指定することなどを含めて、指導体制の充実・強化策を検討してまいりたい。

七について

 三についてで述べた「覚せい剤事犯者処遇プログラム」は、各保護観察所において、保護観察官が担当し、実施しているところ、今後とも、保護観察官の専門的能力を更に高めることにより、「覚せい剤事犯者処遇プログラム」を適正に実施してまいりたい。

八について

 小学校、中学校及び高等学校においては、学習指導要領に基づき、すべての児童生徒に対し、体育又は保健体育の教科において、薬物乱用防止に関する指導を行うこととしている。
 また、大学や専門学校における具体的な教育内容については、各大学や専門学校においてそれぞれの教育理念等に応じて自主的・自律的に定めるべきものであり、文部科学省としては、各種会議等を通じて、各大学や専門学校における適切な取組を引き続き促してまいりたい。
 御指摘の「就職している青少年への啓発活動の強化策」については、警察において、青少年に対して、関係機関とも連携して、街頭キャンペーン等を行うとともに、厚生労働省において、青少年に対して、啓発読本の配布等を行い、薬物乱用防止に向けた啓発活動を引き続き推進していくこととしている。

九について

 政府においては、関係行政機関相互の緊密な連携を確保するとともに、総合的かつ積極的な施策を推進するため、「薬物乱用対策推進本部の設置について」(平成九年一月十七日閣議決定)に基づき、関係閣僚による薬物乱用対策推進本部を設置し、薬物乱用対策を推進しているところである。また、各都道府県職員及び国の出先機関の職員等を構成員とする薬物乱用対策推進地方本部が各都道府県ごとに置かれており、関係行政機関相互の緊密な連携が図られているところである。今後とも、引き続きこれらの関係行政機関において十分に連携を図りつつ、薬物乱用対策を推進してまいりたい。