質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第九二号

内閣参質一七〇第九二号
  平成二十年十二月二日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員前川清成君提出裁判員制度の施行準備に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員前川清成君提出裁判員制度の施行準備に関する質問に対する答弁書

一について

 裁判員制度に関する法令の整備は終了しており、国民の参加意識も相当程度に達している上、環境の整備や迅速で分かりやすい裁判の実現に向けた運用上の工夫も進んでいることから、裁判員制度を円滑に実施できる状況は、整いつつあるものと考えている。
 しかしながら、世論調査の結果等によると、裁判員になることについて、重大な判断にかかわることへの不安、身の安全に対する不安及び経済的負担や社会生活への影響に対する不安を持つ国民がなお少なくないと認められる。
 世論調査の結果等によると、裁判員制度について多くの事項を知っている者ほど、裁判員になることへの不安が小さくなる傾向が認められるので、今後とも、広報活動を積極的に行って、このような国民の不安を解消してまいりたい。

二及び三について

 裁判員制度の下における公判審理に要する見込期間については、裁判所の訴訟運営に関わる事柄であるため、裁判員裁判対象事件の審理時間等を基にして最高裁判所が推計した結果によって、御指摘の記事を作成したものであるが、お尋ねの「ここに言う六日以上とは最長で何日程度か」については、個々の事案の内容によることから、推計し難いものであると承知している。

四から六までについて

 裁判員制度の下における公判審理に要する日数は、個々の事案ごとに異なると考えられるところであるが、同制度の対象事件については、必要的に公判前整理手続を行って、事件の争点及び証拠を十分に整理した上、できる限り連日開廷すること等により、迅速な裁判の実現を図ることとされている。自白の任意性の有無が争いになる事件についても、公判前整理手続を活用して具体的な争点を明確化し、その争点に関して取調官の証人尋問、被告人質問等を効果的に行うことにより、迅速な審理が可能になると考えている。
 加えて、検察当局においては、身柄拘束中の被疑者の取調べの過程・状況につき取調べの都度書面による記録を義務付ける制度を適正に運用することにより、取調べの客観的・外形的状況を明らかにすること等自白の任意性の立証に資する方策を採っているほか、裁判員が参加する刑事裁判における自白の任意性の立証方策を検討する一環として、立証責任を有する検察官の判断と責任において、任意性の効果的・効率的な立証のため必要性が認められる事件につき、取調べの機能を損なわない範囲内で、検察官による被疑者の取調べのうち相当と認められる部分の録音・録画を試行しているものと承知している。
 裁判員は、公判期日等に出頭しなければならないこととされているが、右のような制度の適切な運用等により、公判審理が不必要に長期間に及ぶことはないと考えられる上、裁判員に過度の負担を負わせることのないよう、その職務従事予定期間において裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年法律第六十三号)第十六条各号の事由があると認められる裁判員候補者については、その申立てにより、辞退が認められる。

七について

 裁判員制度は、国民の感覚を裁判の内容に反映させ、司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上を図るために創設されたものと認識している。