質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第七九号

内閣参質一七〇第七九号
  平成二十年十一月十一日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員谷岡郁子君提出民法第七六六条及び第八一九条、ならびに、非親権者と子の面接交流に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員谷岡郁子君提出民法第七六六条及び第八一九条、ならびに、非親権者と子の面接交流に関する質問に対する答弁書

一について

 離婚係争中の夫婦の対立を激化させたり、離婚後の親子の交流を難しくさせたりしている原因は、個別の事情によって異なるものと考えられるが、先の答弁書(平成二十年五月二十三日内閣参質一六九第一二五号)一についてでお答えしたとおり、いわゆる単独親権制度を採用することによって生じる問題であるとは必ずしも考えておらず、また、いわゆる共同親権制度の採用がこの問題の対策として効果が期待されるものであるとも考えていない。

二について

 法務省としては、家庭裁判所は、親権者の指定について、子の福祉の観点から、適切に判断をするために、当事者から提出された資料のほか、事案に応じて、子の監護状況や子の意向の調査の結果を判断資料とするなどしているものと承知している。
 平成十九年に高等裁判所が受理した、家庭裁判所の親権者の指定又は変更の審判に対する即時抗告の事件数は、九十八件であると承知している。

三について

 民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百六十六条第一項の「監護について必要な事項」には、父母が離婚した後の親と子との面接交渉に関する事項が含まれるものと解されている。したがって、裁判所は、父母が離婚した後の親と子との面接交渉について、当事者の申立てがある場合に、子の福祉の観点から必要であると認めるときは、面接交渉を認めることとなり、他方、面接交渉が子の福祉に反すると認めるときは、面接交渉を認めないこととなる。
 御指摘の「父母が離婚した後の親と子との面接交渉については、民法第七百六十六条第一項に規定する子の監護に必要な事項として、裁判所が定めることができると解され」るというのは、以上のような趣旨を述べたものである。

四について

 裁判所は、事案に応じて、子の健全な育成を確保し、子の幸福を実現するために、よりふさわしい者を親権者に指定しているものと承知している。

五について

 親権者である親に虐待された子に対する児童相談所の措置については、親権者でない親からの支援以外にも、里親委託や施設入所等の選択肢があり、各児童相談所において、個別・具体の事例に応じて適切に判断されるべきものであり、こうした判断の過程において、親権者ではない親に連絡を取る場合もあり得ると考えている。
 各児童相談所が、裁判所に対し、司法行政上の便宜供与として調停記録についての閲覧の要請を行うことは可能であるが、閲覧に供されるか否かは、裁判所において個々の事例に応じて個別具体的に判断されるものと承知している。