質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第七〇号

内閣参質一七〇第七〇号
  平成二十年十月三十一日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員川田龍平君提出仙台市地下鉄東西線の建設への補助金支出に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出仙台市地下鉄東西線の建設への補助金支出に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「よりすぐれた計算方法」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、先の答弁書(平成二十年四月十八日内閣参質一六九第九六号)三についてで述べたとおり、平成十五年九月に国土交通大臣が、仙台市地下鉄東西線(以下「東西線」という。)について、鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)第三条第一項の規定に基づく鉄道事業の許可をした際の前提となっている需要予測の数値については、現時点においても予測の前提条件である社会経済情勢に大きな変化が生じていないことから、見直しを行う必要はなく、「不作為」との御指摘は当たらないものと考えている。

二について

 御指摘の「仙台市の費用便益比の計算」については、おおむね御指摘の「鉄道プロジェクトの費用対効果分析マニュアル99」(以下「マニュアル99」という。)に従って行われたものである。なお、マニュアル99は、鉄道事業の事業主体が費用便益分析を実施する上での手引きであるが、事業主体である仙台市が費用便益分析の一部分について合理的だと判断した方法に基づいて行う場合までこれに従って分析を行うことを求める趣旨のものではない。

三について

 費用便益比の算定に用いた資料及びデータの公開については、算定を行った仙台市において適切に実施されており、御指摘の「公共事業評価の基本的考え方」(以下「基本的考え方」という。)の趣旨には反しないものと認識している。

四について

 マニュアル99は、先の答弁書四についてで述べたとおり、鉄道事業の事業主体が費用対効果分析を実施する上での手引きであるが、事業主体が合理的だと判断した方法に基づいて費用対効果分析を行う場合には、必ずしもマニュアル99に従って分析を行うことを求める趣旨のものではない。

五について

 各事業主体がマニュアル99又は「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル2005」(以下「マニュアル2005」という。)に定められていない独自の方法を用いて行った費用便益分析の合理性については、それぞれの事例に即して判断されるものであり、一概にお答えすることは困難である。また、基本的考え方においては、事業評価に用いた資料及びデータの公開に関する記述はあるが、御指摘の「「合理的」と判断する根拠についても、文書化されていなければならない」という旨の記述はない。

六について

 お尋ねの「鉄道建設事業」の意味するところが必ずしも明らかではないが、マニュアル99が策定されてから現在に至るまでに事業採択された鉄道の新たな路線の建設に関する事業は、東西線の事業のほか、新幹線鉄道整備事業として北陸新幹線(上越・糸魚川間及び新黒部・富山間)、九州新幹線(博多・船小屋間)、北海道新幹線(新青森・新函館間)、北陸新幹線(富山・石動間及び金沢・金沢車両基地間)及び九州新幹線(武雄温泉・諫早間)の五事業、都市鉄道利便増進事業として相鉄・JR直通線速達性向上事業及び相鉄・東急直通線速達性向上事業の二事業、地下高速鉄道整備事業として川崎縦貫高速鉄道線、京都市東西線(二条・天神川間)、中之島新線、西大阪延伸線及び名古屋市六号線(野並・徳重間)の五事業、並びにニュータウン鉄道等整備事業として仙台空港線及び成田高速鉄道アクセス線の二事業の合計十四事業である。これらはすべて、御指摘の「マニュアル」に従って費用便益分析を行ったものである。

七及び八について

 御指摘の「公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針」(以下「技術指針」という。)は、東西線の鉄道事業の許可後に策定されたものであり、それ以前に行った費用便益比の算定において、事業主体である仙台市が合理的だと判断した御指摘の「賃金率算定法」を用いたことが不適切であるとは考えていない。
 また、財務省としては、技術指針の内容について、国土交通省より報告を受けている。

九及び十について

 政府としては、東西線の事業については、環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)に基づき、オオタカの繁殖に及ぼす影響を含めて環境影響評価が実施され、その評価書に基づき、事業者である仙台市において、環境の保全について適正に配慮して事業が実施されるものと認識しており、御指摘の「「生息地等保護区」の指定」等の措置をとることは考えていない。また、環境省としては、当該事業に対する補助金の支出について見解を述べる立場にない。
 なお、マニュアル2005は、東西線の事業の採択後に策定されたものであることから、本事業の新規事業採択時評価に際しては、御指摘の「動植物の希少種、生態系の保全」の考慮に関しては、評価の対象とされていなかったところである。

十一及び十二について
 平成二十四年度の段階で東西線の事業が継続している場合に実施されることとなる再評価については、その時点までの事業評価手法に関する検討の成果を踏まえ、適切な手法を用いて行うものである。

十三について

 お尋ねの「社会経済情勢の変化」に関する個々の指標の多くは、定量的に把握することが可能であるが、これらの指標がどの程度変化した場合に需要予測が明らかに合理性を欠くようになったと判断するのかについては、一概に数量的にお答えすることは困難である。